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 アーロンがヴァルト森とヴァルト山脈の魔物を狩っているのには理由がある。

 単純に肉が欲しいのと、森を開拓したいのと、ガイドに教えて貰ったヴァルト山脈にあるダンジョンまで道を作りたいからだ。


 狩りを開始してから一週間ほどで大体の魔物を狩ったアーロンの傍らには真っ白な幼い神狼の子供がいた。

 この神狼の子供は母を殺され、傷付いていたのをアーロンに助けられ、拾われた。

 因みに、この子供の神狼の母を殺したのは大熊の魔物だ。

 アーロンが大熊の魔物を倒しているので、この子供の神狼の命の恩人ということにもなる。

 子供の神狼は、命の恩人ということもあり、アーロンの従魔になっている。

 名前は、スノウ。

 雪みたいな見た目だからだ。


「スノウ、よく見て」


 アーロンは両手を掲げる。

 地面からアダマンタイトの長い塊が突如生えて、木々を弾き飛ばした。

 弾き飛ばしたアダマンタイトはその質量を減らし、あっという間に縮んだかと思うと、黒い道になった。

 アダマンタイトには、清潔と温度調整と魔物除けと結界と歩行支援の魔法陣が刻まれている。

 道を外れなければ、安全にダンジョンに辿り着く寸法だ。

 アダマンタイトの道幅は10mほど。

 馬車が二台通れるくらいのゆったりした道幅だ。


 スノウは驚いたようで、ぽかんと口が開いている。

 スキルで作った望遠鏡で道の先に洞窟らしきものを見つけたアーロンは望遠鏡をヴァルトバングルに仕舞った。


「父上と母上に報告しよっか」


 驚いたままのスノウを撫でつつ、アーロンは椅子を操作して屋敷に戻った。

 ダンジョンが見つかったという知らせを受けてロベルトとソフィアは村人たちに箝口令を敷いた。

 アーロンにも誰にも言わないように言い含めた。


 仮にダンジョンが見付かったと報告するならば、王都に行き、報告する必要がある。

 それから冒険者ギルドと役人の調査が入り、冒険者ギルドを設置することとなる。

 冒険者たちがやってくるようになれば、ヴァルト領の景気も良くなるだろう。

 しかし、ヴァルト領の異常さに気付く者も出てくる。

 そうなるとアーロンの身が危うくなると主にソフィアは考えたのだ。


 アーロンは景気が良くなれば、とダンジョンへの道を作ったのだが、自分を心配する親の為にも、言わないようにしようと決めた。

 因みにジョージたちは3日ほど滞在して、とある人物を置いて帰っていったのでいない。


「あ、ヒューバートさん」

「さんは、いりませんよアーロン様。またとんでもないことをされたんですね」


 ヒューバート。10歳。平民の剣士で、元々はジョージの私兵団にいた。今はヴァルト男爵家の私兵として雇われている。瞬速の剣という固有スキルを持っており、子供だが、ジョージとも良い勝負ができるくらいに強い。

 最初はアーロンに対してタメ口だったが、アーロンがアダマンタイトの巨剣で魔物を屠りまくるのを見て敬語になった。


「そう、かな?スキルのお陰だよ。ヒューバートは訓練してたの?」

「ロベルト様と手合わせしておりました。やはり、達人級になると苦戦しますね」

「そうなんだ……ぼくも剣の才っていうスキルがあるからもうちょっと成長したら、稽古を付けて欲しいかも」

「恐れ多いですが、アーロン様の為になるならば、心を鬼にして務めましょう」

「……いや、心を鬼にしなくても良いからね、ほどほどにね」


 数年後を不安に感じるアーロンであった。




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