家宝よりも高そうな偽家宝。
ソフィアはまず、自分の父ジョージに手紙を出した。
ジョージにオークションの出品の申し込みを代行して貰い、ジョージの商会に所属する商人に運搬を手伝って貰う。
そして、一家で北部にあるオークション会場のフェルト伯爵領の領都シュペルリングまでやってきた。
オークション会場は普段、演劇などで使われる会場で、月に1回の頻度で開催される。
王都の方が高く売れるかもしれないが、両親は3歳のアーロンを気遣い、長旅を控えたので北部でよくオークションをしているシュペルリングにやってきた。
偽家宝はオークションの最後を飾る予定だ。
オークションで偽家宝を売却したら、お金はロベルトとソフィアが用意しておいたアーロンの口座に入る。
アーロンはお金を何に使うか今から構想を練るのに大忙しだが、傍から見るとぼーっとしているように見える。
ロベルトとソフィアは考えるときのアーロンがこうなるのを知っているので、考え込むアーロンを心配していた。
そんなこんなで迎えたオークション当日、アーロンは幼児なので、ソフィアとお留守番だ。
オークションの行方が気になりつつ、ソフィアの子守唄を聞いていたアーロンは、夢の世界へと旅立った。
翌朝、両親が深刻そうな顔をして話しているので、起きたばかりのアーロンは不安になった。
「父上、母上、おはようございます。オークションの結果はどうなりました?」
「ああ、おはよう。アーロン。オークションであの家宝は2つで3003億6千800万レツ、エレツ金貨30,036枚とエレツ小金貨8枚になったよ。全部アーロンの口座に入ってるからね」
途方もない金額だ。
小金貨1枚あれば、例えば家賃が銀貨1枚の普通の家庭なら5年は働かなくても暮らせる。
その小金貨の1つ上、金貨が3万枚もあるというのは、途方もなくて実感が湧かないくらいだった。
「今は、お父様……貴方のお祖父様が用意してくれた護衛の方がいらっしゃるから大丈夫だけれど……」
「じゃあ、お祖父様の商会とかいろんなお店でいっぱいお買い物すれば良いんじゃないかな」
「一気に買い物をすると、積み荷が狙われそうでなあ」
「牛と羊と鶏と馬は別々の商会で大量に購入しようよ。それぞれの商会に運搬も依頼すればリスクは分散できるよね」
「そうだな、そうしよう」
「あと、他にも買いたいものがあるんだ」
フェルト伯爵領で、主だった商会に前金を払って家畜の手配をし、アーロンが欲しがった物を色々購入する。それだけでも、1日掛かった。
次の日、一家はシュペルリングで最も大きい奴隷商に来ていた。
人材を確保するためだ。
普通に領民を募集したところで、極北に来るような者はいないからこその奴隷だ。
アーロンに鑑定スキルはないが、奥の手があった。
シークレットスキル、ガイドだ。
ガイドはこの世界の全ての情報を元に、スキル所持者を支援するスキルだ。
アーロンはガイドに、どの奴隷がおすすめか聞きながら、奴隷をどんどん購入していった。
大人の奴隷は25人、子供の奴隷は50人。(金貨300枚。大人25人250枚、子供50人50枚)
3分の1くらいは酪農に携わって貰おうとアーロンは予定を立てている。
とりあえずは先に家を立てる必要があるので、シュペルリングの大工職人や家具職人たちに声を掛けて引き受けてくれそうな大工職人と家具職人に前金(合わせて金貨10枚)を払って、同行してもらうことになった。
奴隷たちは奴隷商に追加でお支払い(金貨10枚)をし、ヴァルト領の準備が整ってから移動して貰うことになった。
建築資材も購入(金貨10枚)して、一家はジョージの護衛と冒険者に護衛して貰いつつ、大工職人と家具職人たちと共にヴァルトへと帰還した。