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第22話 加わるらしい

 そして現在、俺達はロズの部屋の前まで来ていた。

 扉の横に掛かっているネームプレートにだってそう書かれているのだ。だから間違いがないのだ。


 チャイムを鳴らすと。中からはーいと声が聞こえた。

 プシュッと音を立て、ドアが開いた。出てきたのはブラウンの髪をした、ザリカちゃんと同じくらいの身長の女の子だった。


「あれ、モナーガさんに、ザリカ? ……ああ、そういうことか。わかったよ、ちょうど暇してた所でね。ちょっと準備してくる」


 俺達の組み合わせで、察してくれたらしい。中々気が回るな。

 彼女はすぐに部屋へと戻り、数分後には準備を終えて戻ってきた。


「とはいえ、これが初の仕事だからね。アタシも張り切ってやらせてもらうよ」


「気合入ってんな。突然お仕掛けて来たのはこっちだぜ? 悪態ついたって文句はねえよ」


「いいんだよ。こういうのは気持ちの問題なんだ。期待に応えられるように全力でサポートさせてもらうよ。なあザリカ?」


「ああ、そうだな。だが私達の本分は戦う事ではない。気負い過ぎない事だな」


「お互い様だろ」


 ザリカちゃんが気合いを入れてくれている。これは心強い。

 なんていうか、充実感? 今までのむさ苦しい野郎共との組み合わせと比べて、今日は両手に花だ。まったく地獄から天国だぜ。


 アルフェンにしろドランにしろ、俺の言う事なんて聞いてくれないしな。

 この間なんて相当ひどい目にあったし。あのトラウマは消えそうにない。恰幅の良いおっさんに苦手意識が生まれてしまった。


 いや、そんなことはもうどうでもいいんだ。

 この充実感のまま、俺たちは早速出発することにした。しようとしていたんだ。



 だがその時である。


「あら~モナーガ様? 女の子を二人も侍らせるなんて、随分とお盛んですのねぇ」


 背筋のゾッとするような声が聞こえて、振り返ってみるとそこにいたのは、アクアマリンなポニーテールのクールビューティー。


 そばにいる二人と、オリジナルが同じ世界の僧侶のクローンで、名前はライフィード。愛称はライ。

 顔面に笑みを張り付かせながら、そんな言葉を吐いてきた。

 正直この子苦手なのよ。言葉のナイフが鋭いんだ。


 ロズが一歩前に出て、ライをたしなめるように言った。


「朝っぱらからつまらない嫌味はやめな、ライ」


「嫌味? はて、わたくしはそのような事をした覚えなどありせん。ただ、まかり間違って嫌味と受け取ってしまったのならば、それは謝りましょう。わたくしとしましては、コミュニケーションの一環としてからかってるつもりだったのですが」


 悪びれもせずに、つらつらとそのように応えあげるライ。


「なら尚更タチが悪いじゃないか」


「そうですか~? わたくしの感覚では、冗談は通じる相手に対して行うものですが」


「アンタのは通じないんだよ!」


「失礼ですねぇ。こんなにも愛想良くしているというのに」


「どこがだ!?」


 すっかりペースに乗せられてしまったロズを止めるべく、ザリカちゃんがその手を肩に置く。


「そのくらいにしておけ、ロズ。ライ、お前もいい加減にしろ。一体何の用だ?」


「まあ。わたくしとしたことが用件を伝えていませんでした。いえいえ、あんまりあなた達が仲睦まじくしていたものでつい。これからどこかに行かれるのかと聞こうと思いまして。ええ、他意などございません」


「そういうところがいちいち嫌味なんだよ。……俺達はこれからお仕事なのよ。ここまで言えばわかるでしょ? お前もリストの中に入っていたんだから」


「ああ、リスト。そう、そういえばそのような申し出を受けた記憶があります。であれば、丁度よろしい。――早速向かいましょうか」


「へ? うお!」


 どういう理屈でか、いつの間にか俺の隣に移動していたライ。

 呆れかえる他二人を余所に、その笑顔を崩さない。

 こいつ、出待ちしていたな。


「わざわざ迎えに来てくれた事に感謝していますが、その時間を無駄にロスしてしまうわけには参りません。さあ、どうぞ」


(俺がいつ迎えに来たんだよ……)


 俺の背中に手を当てるライに、冷えたものを感じたが、そこを掘り下げていってもいいことはないだろうし、俺はザリカちゃんとロズの肩に手を当てるとテレポートを開始した。

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