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第21話 選ばれるらしい

 そういえば今更だけど、俺たちが普段使っているスーツ、あれの正式名称は【シャトルクロス】というんだけど。スーツの方が言いやすいから、みんなスーツとしか言わないんだよね。


 それに、装着する際に使うブレス、あれも【FZコマンダー】って名前だけど、やっぱりいちいちそんな名前呼ぶのめんどくさいし、みんなブレスとしか呼ばないんだなあ。


 ……別にどうでもいいかそんなこと。


 あのスーツ、実はいろんな武器が搭載されていて、貫通力のある秒間三十発のニードルビームガン。放電機能のエレキショック。一瞬で物を凍らせるブリザードショットなどなど。


 でも一番のお気に入りはあれかな、金属細胞で作った剣を赤熱化させたヒートブレード。あれが一番見栄えがいいかな。


 まあ、そんなものわざわざ使うような相手に出会わないんだけどね。でもそれが一番か。

 後は、超重力をあれするそれや思念で動かすそれとか麻酔針とか。もういい? 

そう。


 つまるところ色々あるけれど、この広い宇宙何があるかわかったもんじゃないんだから、これだけやっても過剰ってわけじゃないんだよね。


 でも、地上の被害とかちゃんと気にして、あんまりマッハで飛ばないようにしているからねこれでも。

 これから先もそういう心がけでやっていきたいと思う。いやほんとにほんと。


 さあて、そろそろ朝かな? 今日もまたお目覚めの時間がやってきましたよ。


 …

 ………

 ……………


「ふぁあ~。……さてと今日も1日張り切っていこう、かな」


 ◇◇◇


 スーラ君の美味しい朝飯で腹を満たした俺は、只今船長室まで来ている。

 理由は、単純で今後の仕事にはどうしても俺一人じゃ厳しい。そいつについて前々から相談していたからだ。


 その際、当然俺のテレポートについて聞かれたので、船長ならと洗いざらい話した。結果はこの事、つまりあの泉については他に漏らすなとのお達しだ。

 理由は、面倒事に巻き込まれたくないからだと、そいつは俺も同意見。


 ま、そんなこんなで解決案が纏まったからとお呼び出しされたってわけ。


「現状どんな感じですかね? こっちに割り振れる人間ってのは。ドランみたいなのはさすがに勘弁願いたいですが」


「あいつは元々研究職だ、戦力にはならんだろ。調査の時だけ駆り出してやればいい。そんなことはどうでもいいんだ。とりあえずのリストは出来た、

後はそっちでやんな」


 船長は液晶紙だけ渡すと、もう終わったと言わんばかりにこっちに向かって腕を振った。冷てえなぁ。

 俺は船長に頭を下げ、部屋を出ていく。



 とりあえずリストを眺めていくと、半ば予想していた人物たちの名前が載っていた。

 いや、ひとつだけ意外だったのはアルフェンの名前があったことだ。

 あいつの仕事は船長の補佐。事務処理能力がえらく高いからだってさ。

 おかげで今や艦内の貧乏くじ係だ。主に引かせてんのは俺だが。


 ま、それは置いといて。そんなあいつがリスト入りとはねえ、船長の言う事だから渋々聞いたってところだろうな。

 俺も別にこいつと組たいわけじゃないので、よっぽどが無ければ無視でいいか。


 しかし、それ以外だと女の子が多いな。やっぱり野郎よりも麗しい女性がいいもんだ。

 そうだな、例えば……。


「モナーガ殿。前を見ずに歩くという行為は危険ですのでおやめになられた方がよろしいかと」


「ん? ああ、ザリカちゃんじゃないの。いや悪い、ちょっくら考え事をしててさ」


 液晶紙に目を落としながら廊下を歩いていると、女の声で話しかけられた。

 彼女は俺と目が合うと軽く会釈してくれた。


 そんな彼女の名前はザリカ。

 俺が以前に行ったファンタジー世界で手に入れたDNAから生まれた、女騎士のクローン。

 ちなみに見た目年齢は十七歳。身長は俺の胸元くらいまでだから、一七〇センチ後半くらいかな。ストロベリーブロンドの髪がチャーミングだ。


 常に凛としていて近寄り難い印象があるかもしれないが、そう悪い子じゃない。ちょっとツリ目で表情筋も固めなぐらいだ。少なくともタライヤのヤツみたいな鉄面皮じゃない。


 俺は適当に手を振ると、彼女も近寄って来る。


「それで何か悩み事でしょうか? 及ばずながら、こちらも知恵をお貸しできればと」


「いやいや、別に悩みってわけじゃないんだ。ただこのリストにさ、君の名前が載っていてね。そこでちょうど君に声を掛けられたってわけ」


 手に持っていたリストを彼女に見せる。 


「そういうことでしたか。そのリストに関しては私の方から船長閣下に志願しました。私はアルフェン殿のような器用者ではありません故、せめてもと。未熟者ですので、ご迷惑をお掛けになるかと存じますが」


「気にし過ぎじゃない? ほらほらスマイルスマイル、もっと気を楽にして笑っていこうぜ。俺は大歓迎よ、君みたいな子と一緒ならさ。何の不満があるものかい!」


「そういったお言葉を掛けて頂き恐縮です。笑顔の作り方はわかりませんが、必要以上に気を高ぶらせることなく、事に励みたいと思います」


 よしよし。これで大丈夫だろ。こんな時こそ持ち前のコミュニケーション能力の出番だってね。

 とはいえだ、もう一人協力者が欲しいのわけで。ザリカちゃんにリストを見せながらその事について相談してみた。


「でさ、こん中に載ってるお友達で、今日都合のいい子っている? 君の目から見て、こいつはやるぜってな子がいいんだけども」


「でしたら、彼女などどうでしょうか?」


 そう言って、ザリカちゃんがリストに載っていた名前の一つを指差した。

 どれどれ……。


「ロゼルーエ、彼女は臨機応変に対応出来る冷静さがあります。ですので、いざという時にも頼れるかと」


 ロゼルーエ、ロズの愛称でも呼ばれる少女だ。

 ザリカちゃんのオリジナルと同じ世界の魔法使いのクローン。

 確かに、オリジナルは魔法使いってだけあって頭もいいしパーティーのまとめ役をやっていた。

 なにより、ザリカちゃんが推してくれるってんだから、決まりでいいか。


「んじゃ、声を掛けに行こうぜ。呼び出すよりはこっちから行くべきだろう」


「では、お供致します」


 そうと決まれば、前は急げだ。さっそく行動開始と行きますか!

 俺はザリカちゃんを伴って、そのまま居住区へと向かった。

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