俺達は帰って来た。
精神的にボッロボロになりながらも、帰ってくる事が出来たんだ。こんなに嬉しい事はない!
俺達三人は、それぞれの居場所へと戻っていく。
いまでも脳裏に焼き付く。
あの、全身ムッキムキで毛むくじゃらの男達が、不自然に膨らんだ腹の上に、化け物達が乗っかって、そして……。
もういやだ、俺が一体何をしたというのか!?
今は何も考えたくない。ドリンクを飲む気力すらない 。
ちなみにマキナは、俺たち二人に挨拶をすると、そのまま自分の部屋まで帰っていったような気がする。
だってよく覚えていないんだもの。それを考える余裕すら今の俺達にはないのだ。
俺達はそれぞれの自分のあるべき場所へ戻っていった、それはもうゾンビのようにのろのろと。そして、部屋までたどり着く。
「おかえりなさい。ってどうしたんですか、そんなに死にそうな顔をして!?」
そうやって優しく声をかけてくれたスーラ君。
もう限界だった。胸の内から溢れてくるこの苦しみは、ぶちまけなければもう気がすまなかったんだ。
たまらず、勝手ながらその胸を借りることにした。
◇◇◇
ドランは、生気の吸い取られたような顔で自室までたどり着き、そのドアを開いた。
中から一人の、褐色ほ肌に藍色の長い髪を持つ金眼の女が、エプロンを纏って出迎える。
彼女の名は、キリエラ。ドランのハニーのクローン魔族であり、最近人間に化ける術を身に着けた。
「あら?おかえりなさい、ダーリン。でも一体どこに行っていたの? 職場の方から連絡が来ていたわよ」
「ハニー!!!」
「あらあら、今日は随分と甘えん坊さんね。わかったわもう何も聞かない。さあ、気が済むまでお泣きなさいな」
「ハニー…ぅ、ぅ! 私はもうダメだぁ、しばらく立ち直れそうにないよぅ……。
うぅ」
「よしよし」
ドランは、もう立っているのもやっとだった愛しのハニーの元へと帰ってこれたことで、その涙腺を崩壊させ、抱きついては泣いた。
「ハニー、私達はこれからもずっと一緒だと言ってくれぇ。あああ!」
キリエラはその言葉を聞いて、ドランをただじっと、その身を預かるよう優しく抱きしめる。
その光景はまるで償いを求める罪人を抱く聖母のようであった。
そしてここにも。
「大丈夫ですよ、モナーガさん。どんなに辛いことがあっても、僕はここにいますから」
「うっぐ、ありがとう。でも、ごめん、もう少しだけこのままに……」
「勿論ですよ。好きなだけ泣いてください。いえ、いいんですよ。何があったかは聞きません。僕で良ければいつでも頼ってくれて構いませんから」
男達はそれぞれのパートナーの胸中で、まるで世の不条理に初めて触れた少年のようにただ、涙を流す。
『を゛お゛お゛お゛ん゛! を゛お゛お゛お゛ん゛! を゛お゛お゛お゛ん゛!』
奇しくもそれは、洞窟の奥で屈強な男達が化け物共にあげさせられていた声に似ていたという。