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『……名倉くん』
誰かが呼ぶ声がする。
その声は僕が知ってる、あの泉で願った――――。
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「うっ……」
「光……っ!!」
目を開けると、真っ先に入ってきたのは涙を浮かべた姉さんの姿だった。
「ほた、る……ねえ……さん……?」
「良かった……本当に良かった……っ!」
姉さんはずっと、僕の手を握っていてくれたのだろう。
震える姉さんの手に、僕はもう片方の手を重ねる。
「心配かけてごめん、姉さん……」
そう言って、安心させるように姉さんの手を握る。
「ところで、ここは……?」
「病院よ。覚えてる? アナタ山の中で倒れてたのよ」
「山……」
そうだ。僕は
「山田くんって分かる? その子がたまたま見つけてくれて、私に教えてくれたのよ」
「山田が……」
――――そういえばあの時、僕を見つけてくれたのは……。
確かに、あの独特の
「それで、姉さん……山田は?」
「『門限があるから』って、私が来たらすぐに帰っちゃったわ。光によろしくっていって」
「そっ、か……」
――――今度、お礼言わなきゃな……。
「それじゃあ光、私は先生に光の目が覚めたこと伝えてくるから。少し待っててね」
「うん、わかった」
そう言って姉さんは、病室をあとにする。
「……でも、どうしてあそこに山田が居たんだろ?」
疑問に思いながらも、どうお礼をするか悩む。
僕は昔から、人と会話をするのが苦手だった。
それにここ数年は、
そうこう考えているうちに、先生が来た。
幸いにも僕の怪我はたいしたものではなく、その日のうちに家に帰ることが出来た。
「アイツなら、どうするかな……」
僕はそうポツリと呟いて、寝返りをうつ。
腕や足には、滑り落ちた時に軽い打撲や擦り傷ができており、ところどころに包帯が巻かれている。
――――あの泉の伝承……本当なのかな……?
本当にもう一度だけ、死者に会えるのだろうか?
「本当、なら……あの、と、き……の……」
今日一日の疲れもあってか、僕はそのまま深い眠りについた。