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「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
春瀬湖子
異世界恋愛ロマファン
2024年12月13日
公開日
2万字
完結済
十二歳の時からずっと片想いをしていた三歳年上の騎士コルンと念願の婚約を結んだアリーチェ。
しかし私たちの間には少々甘さが足りないのではないかしら!?

好きで好きで堪らないコルンともっとラブラブな時間を過ごしたいアリーチェは、友人のエリーから借りた小説を参考にハッピーエンドを目指す! ……つもりで「君を愛することはない」なんて言ってみたら、渡されたのはまさかの婚約破棄合意書だった!?

いや!! 婚約破棄なんてしたくなぁ~い!

もう一度コルンの婚約者に返り咲くため、その日から自分磨きを頑張ることにしたアリーチェだけど――


言葉足らずな寡黙な騎士×愛に突っ走り気味な令嬢のお話です。

第1話

 ――愛に違いはないけれど。


“割合的には絶対私の方が圧倒的に大きいわよね?”


 なんてつい考えてしまう私ことアリーチェ・ラヴェニーニが見つめる先は、愛しい愛しい婚約者であるコルン・ギズランディが所属している第四騎士団の演習場である。


「きゃー! 格好いいわ! 素敵よコルン! 好き!」


 訓練の迷惑にならないようにと休憩になるまで見つめるだけで我慢していた私は、彼らが休憩に入ったのを確認してそう叫ぶ。


 予定のない日は毎日通っているせいで他の騎士たちも慣れたものなのか、私の叫び声に反応したのはコルンただ一人で、汗を大判の布で拭いながら軽く右手を上げて応えてくれた。


“やだ素敵っ”


 寡黙な彼が、彼なりに応えてくれるその姿に痛いほど胸の奥がきゅんきゅんする。


「ほんっとにコルンってば格好いいわ!」


 黒髪を清潔な長さに整え、切れ長で緑色の瞳はまるでエメラルドのように輝いている。

 何時間でも、いや、何日でも見続けられると私は思わず感嘆の声をあげた。


「そろそろ飽きてくれないかしら、毎日毎日付き合わされる身にもなってほしいんだけど」

「いいじゃない、エリー。本ならどこででも読めるんだから」

「わざわざ演習場で読むものではないってことが言いたいのよ」


 はしゃぐ私の後ろではぁ、と大きなため息を吐くのはエウジェニア・フィオリ伯爵令嬢。

 塩対応がデフォの私の友人だ。


「婚約までかなり大変だったのよ? やっと婚約者の地位を手に入れたんだから堪能しなきゃ損でしょ!」

「かなり大変って……、第一騎士団団長の娘であるアンタの家にコルン卿もよく来てたんじゃないの?」


“それはそうだけど”


 この国には第一から第六まで騎士団があり、その数字が小さくなれば小さくなるほど地位が高い。

 そして最もエリートである第一騎士団の団長こそがラヴェニーニ侯爵、つまりは父だった。


 面倒見のいい父は私が幼い時からやる気のある騎士たちを集めラヴェニーニ侯爵家で個人的に訓練をつけており、そして今から六年前……私が十二歳、コルンが十五歳の時に私たちは初めて出会った。

 騎士見習いになったばかりの真面目なコルンは誰よりも熱心に通っており、どんな訓練にも真っすぐ取り組む姿に私が恋に落ちるのはある意味当然の流れだったのである。


 ――とは言っても、そんな子供の片想いが簡単に実るほど世間は甘くなく、また彼の実家が子爵家ということで身分差もあった。


 だが政略結婚より恋愛結婚という流れが出来始めていたお陰もあり、三ヶ月前にコルンと婚約するという悲願が叶ったのだが……。


「ねぇエリー。どうやったらもっとコルンとラブラブになれると思う?」


 趣味の読書に没頭しようとしていたエリーへと話しかけると、かなり呆れた視線が返ってくる。


“でも、そんなこと気にしてられないのよ……!”


 やっと婚約者になれたのだ。

 出来れば手を繋いでデートに行ってみたいし、スイーツの食べさせあいっこや口付けだってしたい。

 いつかはその先だって望んでいる。


 だがコルンはと言えば出掛けてもまるで私を護衛するかのように歩き、なんとか手を繋ごうとしても「いざという時困るから」と許可してくれない。


 いつかのその先どころか手すら繋いだことがないのだ。


「少しくらいラブラブになりたいのに」

「だったらほら、私の本を貸してあげるから参考にすれば?」


 はい、と渡してくれたのは三冊の恋愛小説。

 読みかけの本はエリーが相変わらず持っているので、彼女はいったい何冊の小説を持ち歩いているのだと少々呆れたが、藁にもすがりたい今はありがたく受け取った。


「ありがとう、読んでみる」

「ま、創作物は創作物よ。それでも気休めにはなるでしょ」


 さらりとそう告げる彼女に私も頷く。


“それでも何か突破口が見つかればいいな”


 なんて思いながら、私は借りた本へと視線を落としたのだった。

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