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第3話 シャンプー&リンス事件

 私は4歳になり、母が弟を妊娠中の時の話である。――蛇足ではあるが、現在、弟とは絶縁状態にあるため、私は一人っ子として生きている。このエッセイを読んでいる人の中には、「お前、弟がおったんかい!」と驚愕している人もいるだろう。


 だが、私自身は「はえ? 弟? いないよぉ〜! 一人っ子だもん!」……という気持ちで生きているので、余計な追求や質問は控えて欲しい。大事なことなのでもう一度言わせてもらうが、現在の私は『一人っ子』なのである。


 さて、話に戻ろう。


 ある日のことだ。私と父は、母に呼びつけられ、バスルームに集まった。すると母が、般若のような形相で、「ママのシャンプーとリンス使ったん誰!?」と聞いてきた。もちろん、私に心当たりはない。そもそも、一人でお風呂に入っていない。私は正直に「知らんよ。つこうてない」と言った。


 しかし、そう言った後、私は父に「嘘つくな!」と言われ、頭をおもいっきり強く叩かれた。それは、パチパチと火花のようなものが見えるほどの強烈な平手打ちだった。私は目に涙を浮かべて、ひっくひっくと泣くのをなんとか我慢して(泣いたらまた叩かれるので)、父を見上げて「うち、ほんまにつこうてないもん」と言い返した。「じゃあ、誰がママのシャンプーとリンスをつこうたんよ!?」と、母は追求してくる。……私が使ったのでないのなら、犯人は一人しかいない。――そう。父である。


 だが、父は頑なに罪を認めず、私を叩いたり蹴ったり殴ったりしながら、「こいつがつこうたんじゃ! こいつは大嘘つきじゃけぇのぅ! 今も嘘ついとるんじゃ! のぅ、そうじゃろうが!?」と自白を強要したのだ。


 ……今だから思う。当時、たかがシャンプーとリンスごときで、何故あそこまでいたぶられなければならなかったのか。――おそらく、父は家に女を連れ込んでいたのだろう。それが発覚するのを恐れ、日頃から嘘つきだった私に罪をなすりつけたのである。結局、大嘘つきのクソガキだった私は、「うちがちゅかいまちた。ごえんなさい」と泣きながら謝る羽目になった。そしてこの事件から今現在まで、私は一度も嘘をついたことがない。


 おかげで今の私は、正直者で誠実な人間として認識されており、友人や身内の人間に信頼される存在となった。……これは、父に礼を言うべきなのか? 今でも悩むところである。


 皆さん、ここまでの話でおわかりだろう。私は家出をする十九歳まで、日常的に父から暴力や暴言を吐かれ――虐待されていたのだ。そして母から庇われたことは一度もなく、弟が生まれてからは放置されるようになる。


 次は、そこら辺の話を詳しく綴っていきたいと思う。

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