思えば、深海の傷の1年だった。母の不調、愛猫の死が、一番心に剣を振り翳した。彷徨って、漂って、椿の花が落花するように――わたしは、わたしじゃなかった。
ああすればよかった。
こうすればよかった。
いつだって最善は尽くしている。
でも最善じゃなかった、後悔するように人はできている。
物語を追い続けて、幾つの夜を越え夜明けを迎えたか。書き続けていれば青い鳥に追いつき、書架への鍵を手に入れられる気がした。
遠ざかりはしないけっして。
夢をみるために。
見続ける、ただそのために。
今年の自分に花束を。
来年の自分に地図のない地図を。