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思い出香るミルクティー

 友達と出かけた記憶は数えるほどしかないけど。


 祖母やいとこ、その母――よく一緒に買い物へ行って、日常だった。日曜日は特別な日。日常から非日常へ、現実から夢へ。


 学校へ通ってた頃は日々憂鬱で、暗雲としていて、霧が立ち込める森を彷徨うような。孤独とか絶望とか、生きている意味がわからなくなるような……小中時代。



 何が楽しくて生きていたのかなと思う。それでも生きていた、生きているのは、綴ることや祖母たちのおかげかもしれない。春に咲く泡沫の桜か青い初夏、書架の香りのような紅茶の秋、木漏れ陽のブランケット。


 そんな穏やかな時間だった。



 自動販売機で買った紅茶花伝の缶を帰りの車の中で飲む。



 何気ない雑談。甘い幸せ。日常に戻りたくないなあ、日常の一部ではあるんだけど。ふわふわ、ゆらゆら、揺蕩って、私はミルクティーに酔う。




 祖母はもういない。それでも気持ちは通じてると思っている。




 ミルクティー飲む度過るのはあの頃の……。

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