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第58話 これじゃ埒があかない!

 毒弾は寧人が消え去った辺りを通り過ぎ、十メートル程後方で砂地に当たって炸裂。

 半径十メートル程に、毒液をシャワーのように撒き散らす。


 初弾を回避されたアーティラリースコーピオンは、すぐに尾の先端を逃げた寧人に向け、二発目の毒弾を放つ。


(すぐに次のが撃てるのか! 結構厄介だな)


 再び飛来する毒弾を、今度は右斜め前に跳んで、寧人は回避。

 そして、そのまま一気に加速し、アーティラリースコーピオンの背後に回り込もうとする。


 だが、アーティラリースコーピオンの反応は速く、素早く向きを変えて、寧人の動きに対応する。

 普通の地面であれば、寧人は背後を取れたのだろうが、輕身功の速度は足場が悪い砂地のせいで、多少は落ちてしまうので、背後を取れなかったのだ。


 本来であれば、輕身功を使った寧人の方が速い。

 だが、砂漠においては、同等の速さになってしまっていた。


 つまり、逃げるのも難しいことに、寧人は気付く。


(砂漠はサソリの方有利か!)


 寧人は心の中で舌打ちをしつつ、飛来する毒弾を回避する。


(どうする?)


 自問しながらも、寧人は意識して足を止めず、砂漠の上を逃げ回る。

 意識しないと、つい動きが鈍りそうになるので、鈍らないように意識しつつ、その上で策を練る。


(氣砲の氣彈でなら倒せるか?)


 寧人は抱球の構えをとり、西瓜程の大きさの、白く光り輝く氣彈を作り出す。

 そして、アーティラリースコーピオンに向けて、寧人は氣彈を放つ。


 氣彈はアーティラリースコーピオンに向かって、唸りを上げて飛んでいく。

 だが、動きの速いアーティラリースコーピオンは、素早く右に回避し直撃を避ける。


 そのまま、寧人は氣彈を、アーティラリースコーピオンは毒弾を放って互いを狙うが、どちらも回避する状況が続く。

 どちらも飛び道具を放つのだが、相手に当てられないのだ。


 本来なら、寧人の方がアーティラリースコーピオンよりも、スピードは勝っているのだが、砂漠の砂の上では劣っている。

 故に、的が小さい分、撃ち合いは寧人が有利な筈なのに、五分の戦況が続いている。


(これじゃ埒があかない!)


 状況を打開すべく、様々な策を検討し、寧人は一つの策を選択する。

 寧人は右掌に氣を集め、氣彈ではなく氣風を放つ、しかもアーティラリースコーピオンではなく、その手前辺りを狙って。


 すると、氣風に吹き飛ばされ、大量の砂が舞い上がる。

 舞い上がった砂は煙幕のように、アーティラリースコーピオンの視界を遮る。


 アーティラリースコーピオンは砂の煙幕から逃れる為、すぐさま場所を移動するが、寧人を見失ってしまう。

 周囲を見回すが、アーティラリースコーピオンは寧人を、見付けることができない。


 見付からないのは当然、寧人はアーティラリースコーピオンの周囲にはいなかったのだから。

 寧人はアーティラリースコーピオンの、三十メートル程上にいたのである。


 砂の煙幕を利用し、アーティラリースコーピオンの視界から隠れた寧人は、即座に砂を蹴って跳躍。

 アーティラリースコーピオンの遥か上まで、舞い上がっていたのだ。


 宙に舞い上がったまま、寧人は氣を集めた両掌で、抱球の構えを取り、西瓜程の大きさがある氣弾を作り出していた。

 そして、寧人を見失ったアーティラリースコーピオンに向けて、不安定な空中で狙いを定め、落下しながら氣彈の氣砲を放つ。


 高威力の氣彈を打つには、まだ未熟な寧人の場合、地上で両足を開いて、身体を安定させる必要がある。

 だが、地上で放てば躱されてしまうので、狙い難いのが分かった上で、あえて不安定な空中で氣砲を放ったのだ。


 氣砲を放った反動で、寧人は再び宙に舞い上がってしまい、空中姿勢を崩しそうになる。

 だが、氣砲で放たれた白く光り輝く氣弾は、高速で空中からアーティラリースコーピオンに襲い掛かり、その背中といえる辺りを直撃する。


 死角である上方から放たれた氣弾を、アーティラリースコーピオンは躱せない。

 シンプルで基本的な氣砲の氣弾なのだが、浅い階層のガーディアンを仕留めるには、十分過ぎるだけの威力があった。


 外殻は一撃で砕け散り、アーティラリースコーピオンの巨体には、大穴が開くことになった。

 当たったのが肢や尾であれば、まだ戦い続けられただろうが、当たったのは身体の中心といえる胴体部分。


 胴体に大穴を開けただけでなく、体内で炸裂した氣彈が撒き散らした寧人の氣は、アーティラリースコーピオンの身体を、内部から崩壊させていく。

 結果、アーティラリースコーピオンは弱点である心臓を含め、体内器官の大部分を破壊し尽くされてしまう。


 その結果、アーティラリースコーピオンの巨体は、砂漠に倒れ込むと、そのまま崩れ落ちつつ、大量の黒い煙を周囲にまき散らしながら消滅する。


「……やった……よな?」

 何とか空中姿勢を立て直し、砂地に着地した寧人は、アーティラリースコーピオンの巨体が消え去った辺りに目をやる。

 煙を出して姿を消したのだから、倒せたとは思うのだが、アガルタイズが見当たらないので、確信が持てないのだ。


 警戒を解かずに、寧人はアーティラリースコーピオンが消え去った辺りに近付き、アガルタイズを探す。

 すると、豆粒程の大きさの、黒い魔石タイプのアガルタイズを、寧人は砂上に見付けだす。




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