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第11話『人生は上手くいかないことばかり』


 相田さんから「飯倉、こっち」と誘導され、相田さんの隣のイスに腰掛けた。


「全員揃ったんで、なんで俺達が呼ばれたのか話してもらってもいいですか」


 先生にそう声を発したのは矢野だった。

 「全員」これで……全員。

 矢野の言葉に咳払いをし、気持ちを落ち着けてから先生は口を開いた。


「えー、改めて、ここにいる全員に言っておく。ここにいる者は沢辺と小谷を除いて、今のパートナーに不満がある者や元からパートナーがいないけれど、国にも結婚相手を決められたくない奴らだ」


 パートナーに不満って……矢野と柊さんが?

 え……二人は真っ先にカップルになったんじゃないのか!?

 空いた口が塞がらなくて、矢野と柊さんに視線が向いてしまう。


「まず初めに言っておくと、ここにいる誰か一人だけカップルが成立しない。まあ、それは必然的に男子になるな、飯倉か矢野か小谷か橋本だな」


 ――僕か矢野か小谷か橋本くん……

 そこで先生は腕を組んでなにやら悩み始めた。


「……小谷だな。小谷はここから外れてもらう」


 ――え……!?

 な、なんで……


 固まって動けない小谷の代わりに僕が口を開いた。

 クラスメイト皆大事だって言ってたのに……小谷の言い分も聞かないで勝手にきめつけて。こんなのはあんまりだ!


「先生、まってください! なんで小谷が……」


「沢辺と柊に昨日の放課後何があったのか一部始終聞いたからな。それにオレ自身も、反論してきた小谷を見ていたわけだし、沢辺と柊の言っていることは嘘ではないと感じたから、仕方なくだ」


 仕方なく……


 僕も昨日小谷と飯に行かなかったら、小谷を助けたいなんて思わなかったはずだ。


 小谷に沢辺さんとの仲を取り持つって約束したのに。

 仲を……そうだ、小谷はまだ沢辺さんに謝れていないのかもしれない。無理に許してもらおうとしなくていい。せめて、小谷を謝らせてあげたい。


「一分でいいのでちょっと……まってください。少し小谷と話がしたいです……」


 頼み込み、小谷を無理やり教室から連れ出す。廊下に出てドアを閉めると小谷は膝から崩れ落ち、地べたにペタンと座った。


 いくら廊下といえど、あまり大声は出せない。

 時間もないので単刀直入に話す。


「小谷……沢辺さんに謝れてないのか!?」


「謝るもなにも……目さえ合わせてくれないし」


「それでも謝って、自分の気持ちを伝えたほうがいいと思う。じゃなきゃ、このままお国が決めた見ず知らずの誰かと過ごすことになるぞ!?」


「……いいよもう、俺が無理だったよ。国が決めた相手でいいよ、俺……」


「な、なに言ってんだよバカ!」


「お前を下に見てた報いだよ。もうめんどいしいいわ」


「……沢辺さんとはもうやり直したくない? だって、話し合いで……小谷の意志で沢辺さんって決めたんだろ?」


 慰めるように問いかけると、小谷は「……そう」と消えそうな声で答えた。


「じゃ、じゃあ謝ろう! 僕も一緒に謝るから!」


「いや、飯倉は謝らなくていい。全部俺が招いたことだから、俺が謝る」


「うん、謝って沢辺さんに反省していることを伝えよう」


 ――小谷がちゃんと謝れば沢辺さんは許してくれるはず。


 小谷と一緒に教室に入ると、


「沢辺ごめん!! 柊さんも、相田もごめん、俺最低なこと言って皆に迷惑かけた! 沢辺……俺のパートナーに戻ってほしい……」


 涙を流しながら沢辺さんに謝る小谷。

 けれど、沢辺さんは首を縦に振らない。

 そんな状況の中、「あのさ」と、相田さんが口を開いた。


「小谷に謝れって言ったのはどうせ飯倉だろ。おまえ、小谷が昨日、沢辺に言った言葉忘れたわけじゃないよな?」


 相田さんが戦闘モードむき出しで僕に問う。


「……忘れてない。けど、小谷も最低なこと言ったって反省してる」


「沢辺はもう無理って思ったから担任に相談して今ここにいるんだろ。沢辺も含めてここにいる柊も、あたしも、こんなヤツとパートナーなんて組みたくないし。将来一緒の墓に入るだなんて、死んでもごめんなんだけど」


 相田さんは沢辺さんと柊さんに「そうだよな?」と確認を取った。


 二人とも即答で首を縦に振る。すると、小谷はハハッと乾いた笑いと同時に


「もういいです、俺、国が決めた相手でいい」


 そう呟いて教室から出て行ってしまった。


 ……小谷は誰かと恋愛をすることを諦めてしまった。




 言葉は時に凶器にもなる。口から出た発言は取り消すことはできない。


「……ごめん、小谷の『女と遊ぶ』発言はいくら謝られたって許せないよな」


 教室にいる皆に再度「ごめん」と謝る。

 皆に小谷が反省していることを分かってほしかっただけだったんだ。ぎゅうっと力強く掌を握り、悔しさを拳に込める。


 僕より反対側にいた橋本くんが「飯倉くん、顔上げてよ」と、僕に顔を上げるように諭した。

 僕が顔を上げると橋本くんはそのまま言葉を続けた。


「正直俺も今の今まで女の子と遊んでたし、小谷くんのことあーだこーだ言える立場でもないけど、だからって援護しようとは思ってない。俺も今の現状を変えたくて、話が聞こえたから無理やり参加させてもらったわけだし」


 煮え切らないことを言う橋本くん。いったい何が言いたいのだろう。


「飯倉くんさ、人の心配している場合じゃないでしょ。自分の将来かかってんだよ? 今回はたまたま小谷くんが抜ける感じになったけどさ、場合にとっては飯倉くんが抜けなきゃいけない可能性もあったんだよ?」


 橋本くんに指摘され図星を突かれた。

 確かに……僕も人の心配をしている場合じゃない。


 正論を言う橋本くんに対して、相田さんは口を開いた。


「飯倉は抜けさせない。抜けるならアンタだろ、橋本。同じクラスでもねぇのに、人の島に土足で入り込んでんじゃねぇぞ」


 相田さんが僕のことで橋本くんに喧嘩腰になってしまった。

 なんでいつもいつもこうなるんだよ。



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