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転生軍師鳳雛 ~龐統に転生した青年は仲間たちを助けながら平和を望む~
アレセイア
歴史・時代三国
2024年12月11日
公開日
8万字
連載中
龐統は転生者である。
前世は平成の世を生きたサラリーマンだったが、事故死して龐統に転生してしまったのである。
前世で学んだ知識を活かし、戦乱を避けながら一人の少女と悠々自適な生活を送る日々。
だが、そこへ訪ねてきたのは友人である諸葛亮孔明。
救いを求める彼の求めに答え、彼は野から降り立ち、策を披露していく。
これは龐統が平和を求めながらも、仲間たちを助けていく、新しい三国志物語。

序章 長坂の戦い

 後漢末期。長く続いた漢王朝は終焉の時を迎えようとしていた。

 宦官や外戚が牛耳る、腐敗した政治。そして勃発した黄巾の乱を始めとする反乱。

 それらは民を苦しめ、大いに中原を乱した。その混乱に乗じ、各地では群雄たちが勢力を拡大。漢王朝を凌ぐ勢力へと急成長しつつあった。

 天下に群雄が割拠し、相争う時代――乱世へと突入していったのである。


 その乱世でのし上がってきた男の一人が、曹操だ。

 乱世の奸雄と評された彼はその才覚を活かして勢力を拡大、また敵対勢力を退けていく。そして朝廷までも掌中に収め、巨大な権力を恣にした。

 中原を制覇した彼は天下を統べるべく、南へと狙いを定める。

 そこで曹操に抗し得る勢力は荊州に駐屯する劉備、江東に基盤を持つ孫権のみ。


 その一人である劉備玄徳は黄巾の乱から乱世を渡り歩く、歴戦の武人である。

 だが、その戦いは敗北続き。仮に基盤となる土地を手にしたとしても、すぐに呂布や曹操に奪われ、各地を転々とするしかなかった。

 現在、彼は荊州を支配する州牧、劉表を頼り、客将として荊州に滞在していた

 与えられた新野城で兵力を養い、まためぼしい人材を集める日々。そんな中で幕下に加わった徐庶元直の助言を得て、劉備は三顧の礼を以て諸葛亮孔明を迎える。

 徐庶、諸葛亮の二人の献策を得て、劉備は着々と力を増してきた。

 だが、それは唐突に終わりを告げる。


 曹操軍の南進。ついに天下を統一するべく、曹操が動き始めたのだ。

 その直前に病死した劉表の跡を継いだ劉琮は、曹操に恐れを為して降伏を決断。一方で降伏を肯んじない劉備は配下を連れて、南へと逃れる。

 だが、曹操は逃すまいと、曹純率いる軽騎兵部隊を差し向ける。

 必死に逃れる劉備軍だったが、荊州の南郡当陽県――長坂付近で追いつかれてしまう。曹操軍の精鋭部隊を前に、劉備の配下たちは敵を食い止めるべく必死に奮戦を始めていた。

 当時、劉備の配下であった、徐庶もまたその一人である。


   ◇


(く――っ、曹操軍の動きがここまで早いとは……!)

 徐庶は焦りを滲ませながら、騎兵を率いて戦場を馬で駆け抜けていた。

 辺りに響き渡るのは悲鳴と怒号。木々に囲まれた山道にいる民たちを、曹操軍の軽騎兵が蹴散らしているのだ。

「退け、退けぇ!」

 曹操の軽騎兵隊の一人が声を荒げながら槍を振るう。その穂先が逃げ惑う一人の民に当たり、血飛沫が散る。響き渡る悲鳴に、徐庶の頭へ血が上った。

「この――ッ!」

 憤りのまま、徐庶は馬の腹を蹴って駆ける。軽騎兵は突っ込んでくる徐庶に気づき、槍を構え直して突っ込んでくる。

 馳せ違う瞬間、突き出された槍を徐庶は身を低くして回避。同時に手にした剣を振り抜いた。ずっしりとした手応えと共に交錯する。

 どさり、と背後で崩れ落ちる音を聞きながら、徐庶は視線を巡らせる。

 徐庶と共に駆けてきた劉備軍の騎兵たちが次々と曹操軍の騎兵とぶつかり、注意が民たちから逸れていた――好機だ。

「皆の者、急げ! 橋を渡れば助かるぞ!」

 徐庶の声に民たちは慌てて坂を駆け、この先にある橋を目指していく。それを見渡しながら、徐庶は歯噛みする。

(曹操は早い、民は遅い――誤算だらけだ……!)

 今回の行軍を計画したのは、徐庶だった。

 曹操軍の南進をいち早く察知し、劉備軍を移動させたまでは良かった。目的地としていたのは江陵――荊州の軍事拠点であり、そこには充分な兵糧と武器があるのだ。

 そこまで無傷で兵を向かわせ、江陵を拠点に曹操軍と戦う――それが徐庶の計画だった。

 だが、計算違いだったのは、行軍を始めた劉備たちに民がついてきたこと。

 劉備を慕ってついてきた彼らを放っておくことはできず、行軍速度は致命的に遅くなった。そこへ曹操が電撃戦を仕掛けてきたのである。

 二重の誤算が、彼の計画を大幅に狂わせていた。

「徐庶殿……!」

 不意に戦場に響き渡った声に振り返る。その視線の先には二人の武将が騎兵を率いて駆けてくるのが目に入った。その頼もしい姿に徐庶は安堵する。

「張飛殿、趙雲殿……!」

「すまない、騎兵を立て直すのに時間がかかった……!」

 張飛の大声に徐庶は頷きながら、指を曹操軍の方に向ける。

「いえ、まだ手は打てます! 我々で曹操軍の足止めを行えば……!」

「分かった。だが、足止めをしてどうするのだ、徐庶殿」

「予定通り、江陵に向かうのか?」

 趙雲は背後の部下に手で指示を出し、張飛は蛇矛を敵の方へ構えながら唸る。

 二人の言葉に徐庶は首を振り、無念さを滲ませながら告げる。

「いえ、この段階で追いつかれたということは、江陵はもう手遅れです」

 恐らくすでに江陵に曹操軍が向かっていると考えた方がいい。江陵を抑えることは実質、不可能になってしまった。

 そうなれば選択肢は一つ。徐庶は二人を真っ直ぐに見つめて告げる。

「目的地を江夏に変更します。あそこなら劉琦殿がいる」

 劉琦は劉表の遺児だ。あっさりと降伏した弟の劉琮と違い、江夏を拠点に軍を構えている。彼の協力を得れば、体勢を立て直すことができるはずだ。

「本陣の孔明には、その計画で動いてもらっています。我々は殿が死地を脱するまでの時間稼ぎになります。よろしいですね」

「なるほど、分かった――張飛、橋の抑えがいる」

「仕方ねえな、俺が引き受けた。趙雲はここを頼む。部下は使って構わない」

「私はここで趙雲殿と敵を防ぎます。張飛殿の部下をお借りします」

 意図を察した二人の武将は役割を分担し、素早く動き出す。さすがに歴戦の武将だけあって、頼もしいことこの上ない。

 張飛は素早く馬を返して単騎で橋へと向かい、趙雲と徐庶は配下に指示を出して陣形を整える。視線を坂の方へ向ければ、奥から土埃が近づいてきていた。

 曹操軍の軽騎兵隊が、本格的にこちらに向かってきている。

(――自分と趙雲殿だけで、どこまで時間が稼げるか……)

 一抹の不安を覚えながら呼吸を整えていると、不意に脇の茂みから人影が飛び出した。素早く槍を構える趙雲を、徐庶は手で制して視線を向ける。

 黒装束に身を包んだ人影は息を切らしながら、徐庶の元へ駆けてくる。

「徐庶殿の配下か?」

「正確には、孔明の配下です。密偵で情報収集をさせています」

 徐庶の友人である諸葛亮孔明は、徐庶よりも頭脳明晰である天才肌の青年だ。徐庶の推挙を受け、劉備は三顧の礼を以て登用し、今は劉備の傍で全体の指揮を執っている。

 諸葛亮が劉備の幕下に加わり、最初に着手したのが密偵の組織作りだった。

 彼は情報を重要視し、それを集められる人材を集めていた。今回の行軍では彼らが充分に実力を発揮している。

(――ここに来るということは、緊急の情報か……)

 徐庶が表情を引き締めると、密偵が徐庶の前まで駆けつけて跪く。拝礼もそこそこに声を張り上げた。

「殿の奥方様たちが行方不明! 未だ到着せず!」

「――ッ!」

 その言葉に趙雲と徐庶は息を呑んだ。

 劉備はすでに橋を渡り、安全域に達している。だからてっきり奥方たちも避難できていたと考えていたが――。

(まさか、途中ではぐれていたのか……!)

 徐庶は視線を趙雲に向ける。趙雲は素早く頷くと、矢継ぎ早に配下に指示を出した。

「陳到、ここは任せる! 敵が来たら防げ! 第一隊は私に続け!」

 趙雲が素早く馬腹を蹴り、わずかな供回りと共に坂の方向へ馬を掛けさせる。徐庶も続いて馬腹を蹴り、趙雲の後に続いて駆ける。

 向かいから駆けてくるのは曹操軍の騎兵隊――民を蹴散らしながら向かってくる。それに真正面から趙雲は駆け、槍を構えて吼える。

「おおおおおおおおおおおおおおお!」

 趙雲と敵騎兵が交錯した瞬間、弾かれたように騎兵が吹き飛んだ。次々と曹操軍の騎兵が突き倒され、無人の荒野を駆けるように趙雲が疾駆する。

 その後を徐庶は駆けながら、逃げ惑う民たちに視線を走らせていく。

(どこだ、どこにいらっしゃる……!)

 主君の妻子を失ったとあれば、劉備に合わす顔がない。趙雲もそう思っているのか、鬼気迫る勢いで曹操軍の騎兵たちを討ち倒し、道を切り拓いて猛進する。

 必死に馬を駆けさせ、視線を巡らせる。だが、視界に入るのは逃げ惑う民ばかりだ。さらに入り乱れる騎兵によって土埃が舞い、視界が悪い。

 この民の中から奥方を探し出すのは困難だ。徐庶は目を凝らしながら辺りを見渡し――。


「元直、ここよ、元直……!」


 不意に聞こえた声に徐庶は弾かれたように振り返る。

 聞き馴染みのある声。その声の方向に目を凝らし、息を呑んだ。

 視界に飛び込んできたのは、一角で騎兵に追い込まれている兵士たちだった。その中心には見える民に入り交じって、劉備の妻たちの姿が見える。

 徐庶の身体がかっと熱くなり、馬腹を蹴る。趙雲もすぐに気づいて駆けた。

 雄叫びと共に騎兵たちに突っ込み、剣を突き出す。敵の身体に刃が沈み込み、掌に重たい手応えが迸る。それを引き抜き、別の敵に剣を叩きつける。

 その間に趙雲は数人の敵を叩き落とし、騎兵の包囲を完全に崩していた。

「奥方様……! 遅参お詫び申し上げる……!」

「いえ、趙雲、徐庶、よくぞ来てくれました」

 劉備の妻――甘夫人と麋夫人が安堵の吐息をこぼす。徐庶はその傍で馬から降りると、民の中から一人の老いた女性が歩み出る。

「元直、気づいてくれてよかった」

「母上が叫んでいただいたおかげです」

 先ほどの声は彼女――徐庶の母親の物だった。土埃に汚れているものの、背筋をしゃんと伸ばして槍を手にしている。兵に交じって戦っていたらしい。

「とはいえ、時間が惜しいわ。元直、奥方様をお連れなさい」

「ええ、それに――」

 母上も、と言いかけた瞬間、馬蹄の音が入り交じる。徐庶と趙雲は同時に振り返り、舌打ちをこぼす。新手の騎兵たちがこちらめがけて駆けて来ている。

(どうする――)

 趙雲に奥方を任せてこの場を食い止めるべきか。徐庶が逡巡した瞬間、母親が袖を捲し上げ、槍を構えながらずんずんと前に出る。

「ここは私に任せて、元直、貴方たちは奥方様をお連れなさい」

「は、母上、無茶です……!」

 思わず声を上げるが、母親は振り返ると力強い笑みを見せた。

「大丈夫。時間を稼いだら降伏するわ。曹操軍も無闇に殺しはしないでしょう――貴方は、貴方の務めをしなさい」

「――っ」

 その言葉に振り返る。視線を向ければ、甘夫人と麋夫人がよろよろと馬に跨るところだった。趙雲はひらりと馬に跨りながら徐庶を振り返る。

「徐庶殿、早く! 敵中を突破するには私たちだけでは厳しい……!」

「く……っ」

 確かにここは敵に囲まれた死地。例え一騎当千の趙雲といえど、突破は難しい。徐庶は未練を振り切ると、自分の馬に飛び乗って手綱を握る。

「母上、ご無理はなさらぬように……!」

 叫び声を残し、徐庶はその場を駆け去るしかなかった。


   ◇


 長坂橋を越えた先では、傷ついた兵士たちが息を整えていた。

 曹操軍が迫っているものの、逃げてきた兵も民も消耗し切っている。幸い橋は張飛が抑えており、敵を完全に防いでいる。味方を収容し、休む時間はできていた。

(――何とか三百人ばかり兵が戻りましたか)

 その兵たちの間を見下ろす坂の上で一人の青年が目を細める。

 彼の名は諸葛亮。頭脳明晰であり、人物鑑定に秀でた龐徳公から臥龍という異名を授かった青年である。今は劉備に仕え、その智謀を巡らせている。

 今も尚、曹操軍から逃れるためにいくつかの手を打っていた。

(密偵を使って江陵方面に殿の目撃情報を流している――これに引っ掛かってくれれば良いのですが)

 諸葛亮が組織した密偵集団は各地に潜入して情報収集するだけでなく、偽装情報を流すことができる。もちろん、曹操も諜報組織を持っているので、普通ならこの程度の偽装には引っ掛からないだろう。

 だが、目前に迫っているのはあくまで先行している曹純の騎馬隊だけ。曹操軍の本体ははるか遠くである今なら、充分に騙せるはずである。

(あとは殿を江夏まで逃がすだけ――)

 そのためには充分な護衛が必要だが、頼りとする趙雲と徐庶がまだ戻らない。

 関羽は水軍で別行動しており、張飛は殿軍を引き受けている今、頼りになる護衛は彼らなのだが。諸葛亮はため息をこぼしていると、馬蹄の音が聞こえてきた。

 視線をそちらに向けると、数騎の兵士たちが戻ってきたところだった。

 その先頭にいるのは趙雲と徐庶だ。諸葛亮は安堵の息をつき、そちらに足を向ける。

「無事でしたか。二人とも」

「うむ、遅くなってすまない、諸葛亮殿。奥方を助けるために探し回っていてな」

 馬の脚を止めた趙雲はそう答えて背後を示す。そこでは二人の女性が兵士に介助されながら馬から降りるところだった。

 甘夫人と麋夫人だ。泥まみれだが、怪我はなさそうだ。

「よくぞ助け出しました、趙雲殿、元直も――元直?」

 労いの声を掛けていると、ふと友人の顔色が暗いことに気づく。改めて名を呼べば、我に返って徐庶は苦笑をこぼした。

「あ、ああ、すまない。孔明」

「いえ、あの乱戦です。お疲れなのも無理はないでしょう。ただ、お二人には申し訳ないのですが、すぐに殿の護衛についていただきたいのです」

「分かった。すぐに行こう」

 徐庶はあっさりと頷き、すぐに馬を駆けさせて劉備の元へ向かう。

 いつもと違う徐庶の様子に眉を寄せていると、趙雲が馬を寄せながら声を低くする。

「諸葛亮殿、実は徐庶殿の母上がまだ敵地にいてな」

「……なんですと?」

 思わず目を細めながら聞き返す。趙雲は頷いて言葉を続ける。

「我々が駆けつけるまで奥方様を守っていらしたのだ。それから我々が逃げる時間稼ぎをしていた――恐らくもう死んでいるか、あるいは……」

「曹操軍の手に落ちたか、ですね」

 諸葛亮は言葉を引き継ぎながら、思考を巡らせる。

 それから一つ頷いて言葉を続けた。

「――分かりました。密偵たちに行方を探させます。この件は元直には内密に」

「うむ、承知した」

「それと――自分はこれから別行動をしたいと思います」

「……む、別行動だと?」

 趙雲は訝しそうに眉を寄せる。諸葛亮は頷いて、力強く趙雲を見つめ返す。

「はい、少し行かねばならないところがあります。殿にはご心配なくとお伝えください。それと元直にはしばらくの間、頼むと」

 その言葉に趙雲はしばらく考え込んでいたが、やがて一つ頷いてくれる。

「ふむ――諸葛亮殿にも考えがあるのだろう。分かった。留守は任されよう」

 趙雲は馬上で一礼すると、馬を歩かせて徐庶の後を追う。それを見届けながら諸葛亮は思わずため息をついた。

(――厄介なことになりましたね)

 徐庶の母親が死んでいるとは思えない。曹操軍は無闇な虐殺はしていなかった。

 つまり、可能性としては曹操の手に落ち、人質になっている可能性が高い。そうなれば曹操が目論むのは恐らく、彼女を人質にすることで徐庶を劉備から引き離すこと。

 徐庶は孝行息子だ。親を人質に取られれば逆らえない。

 このままだと、徐庶が劉備から引き離されるのは時間の問題だった。

(かといって、救出するのは難しい――少なくとも、私には策が思いつきません)

 頭を回転させながら、諸葛亮は己の無才を恨む。

 人一人救出できずして、どうして劉備を支えて漢王朝の復興が為せるものか。思わず諸葛亮はため息をこぼしながら空を見上げる。

 木々の合間から空を羽ばたく鳥が目に入る。その姿が友人の顔を思い出させる。

 鳳の雛と呼ばれたあの友人なら、どのような解決策を導き出すだろうか。

(――きっと思いもよらない策を捻り出すのでしょうね。何せ、臥龍と言われた私と並び、鳳雛と呼ばれた男なのですから)

 そして、その彼の助言があったからこそ今、手足となって動いてくれる密偵たちがいる。彼の言葉がなければ、密偵たちを使うことなど考えもしなかっただろう。

 その力を今、存分に使うべきだ。

 諸葛亮は思考を切り替えると、手を挙げて合図を送る。それに応じて物陰から人影が現れた。諸葛亮の配下である密偵だ。

「今から行きたい場所があります。曹操軍に見つからないように、かつ迅速に動く必要があります――案内を、お願いできますか」

「無論。山道に精通しておりますれば、不可能ではありますまい。こちらに」

 密偵は低い声で応じると、素早く茂みに入る。諸葛亮もその後に続き、道なき道を早足で進み始める。密偵は足音を立てず歩きながら、低い声で訊ねる。

「それで――どちらまでご案内しますか」

「ええ――」

 諸葛亮は己に比類する智謀を持つ友人を思い描き、その名を告げる。


「龐士元の家です――よろしくお願い致します」


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