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一体何がわかるの5

しばらくして話し終えたのか、田中さんはあたしたちの所に来た。


「中村君の絵、なかなかグレートですね。このなんとも悲しみに満ち溢れてる女の子がまるで、今の鈴宮さんみたいな顔でいいですね。素晴らしい」


「それ、褒めてんのか」


中村が困ったような表情を浮かべている。


あたしが悲しげな顔をしてるとか勝手なこと言わないでほしい。


確かに不機嫌な顔をしてるのは自分でも分かるけど。


「わたくしは人様の絵をけなしたりなんて致しませぬぞ」


「なら褒め言葉として受け取るけど」


田中さんは眼鏡を中指でくいっとあげながら、ニコニコ笑ってる。


楽しそうにしている感じが、妙にあたしをいらつかせる。


あたしと視線があって、彼女は更に笑顔になった。


「鈴宮さん、なんか創作に悩んでますな。中村君の絵みたいな顔になってる。どれどれ。うーん、赤だけなのに、色んな色に見えて面白いですが、何か足りないですな」


田中さんに何か足りないと言われた。


あたしの絵の何が分かるの?


「派手さというか、奇抜さに欠けますね。だから、もう少し大胆に行っちゃってもいいかもですよ」


「アドバイスありがとう。ねえ、田中さんって絵を描いてどれくらい?」


「うーん、BLに目覚めたのが中学1年の時なので、3年くらいですかね」


「じゃあ、まだまだ素人なんだ」


素人ごときにあたしの絵の良さとか、足りない所が分かるはずない。きっと思いつきで適当に言ったんだ。


あたしの絵を分かってくれるのは先生だけ。


先生を見ると、目を見開いて驚いた顔をしていた。


「絵音さんは素人とは思えませんね。僕も確かに鈴宮さんの絵は思い切りというか、大胆さに欠けるなと」


「細谷大先生もそう感じてましたか。わたくしと大先生は感覚が鋭いから、やっぱり分かりますよね」


得意げに田中さんがそう言ったのを、あたしは唇を噛み締めて聞いていた。悔しさが心ににじむ。


ーーあんな子になんか負けたくない。あたしの大好きな先生を取らないでーー


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