ステラから身体強化の合格が
それと、身体強化を習得する上で、一つ判明した事実がある。それは、室内で特訓していたからこそわかったこと。身体強化をしたレオナルドはふと何の気なしに
「え……?何これ……?」
鏡に映る自分の髪や
「ステラ、なんでこんな変化が起こったかわかる?」
『恐らくですが、白刀化と同じ現象でしょう。霊力に反応して起きたのだと思われます』
「そうなんだ……。問題は…ない、のかな?」
『身体強化を解けば戻ったのですから問題ないと思いますが』
「そっか。そうだよな……」
結局、何か問題がある訳でもなさそうなため、事実は事実として、以降レオナルドは特に気にしないことにした。
毎日が充実していると月日が経つのを早く感じるというが、今のレオナルドはまさにそんな感じだ。特訓での苦労も充実感の方が勝っていて、ここまで本当にあっという間だった。
そんな中で唯一不満というか残念に思うことがあるとすれば、
室内でできたのは、
しかも、白刀で斬ったときは何の抵抗もなく、すっぱりと石を真っ二つにすることができてよかったのだが、殴ったときは石が粉々になってしまって、夜中に一人で
どちらのときも
そうして次はいよいよ精霊術の特訓、というところでレオナルドは一度ステラと話し合った。
『簡単なものから入ってもいいのですが、それよりもまずは一つ、具体的にどんな精霊術が使えるようになりたいか決めてください。その方が習得が早いでしょうから』
「俺が決めていいの?」
『それはそうでしょう。あなたが使うんです。それにあなたが望むものである方が完成形を想像しやすいでしょうし、精霊術に必要な意思がより明確になります』
「なるほど……」
精霊術は外部への事象改変。ステラ曰く、
火や氷を出せるようになるのもいいし、室内では無理かもしれないが雷を出してみたいなんて思いもある。あるいは前世の世界の創作物によくあったように、実体のない光の玉を遠隔操作して攻撃する、なんてことも――――。
あれこれと考えるレオナルドにステラは、
『今のあなたがしたいこと、それに役立つものにしたらいいのではないですか?』
そう助言した。
「今の俺がしたいこと……」
そこでレオナルドが考えたのは、もうずっとしていない森での実戦のことだった。魔物といえど、生物を殺すことに
だが、アレンと一緒に行く訳にはいかない。
そうすると必然、レオナルドだけで行動したいのだが、自分一人で堂々と屋敷を出て森に行くなんて誰も許してはくれないだろう。
『それならば、誰にも見つからずにここから出られるよう、空を飛べるようにでもなりますか?』
「え?……ああ、そうか」
レオナルドが考えているところにステラからそんな提案があった。どうやらレオナルドが考えていたことはすべてステラに伝わっていたようだ。それをレオナルド自身すぐに理解した。
「飛べるように、か……」
ステラに言われて、自分が空を飛べるようになった姿を想像するレオナルド。確かに自由度は格段に上がる。皆に内緒で屋敷を抜け出すことに後ろめたさは感じるが、精霊や霊力のことなどすべてを説明できないし、今後のことを考えると、どこへでも向かえる移動手段を手に入れるというのは非常に魅力的だった。
心の
「できれば飛べるようになりたい。たださ、一つ問題、っていうほどでもないんだけど、俺達だけで魔物を倒しにいったとして、魔核なんかはやっぱり持って帰りたいんだ。今後のことを考えるとお金もあるだけあった方がいいから。でもさ、冒険者ギルドには何度もアレンと行ってるからもう俺の顔とたぶん身分なんかもバレてると思うんだ。そうするとなんで一人で来てるんだってことになって、そこから俺が一人で行動してるって父上達にバレたりしないかなぁ?」
自分でも、なんて細かいことを気にしてるんだ、とでも思っているのかレオナルドは申し訳なさそうにステラに相談する。ただ実際、貴族の情報
『……ならば変装でもすればいいのでは?身体強化で白髪になるだけで別人みたいだと自分で言っていたではありませんか』
「うっ……、そうだね、変装はいい考えだと思う。だけど身体強化するところをもし見られたら即バレする訳で……」
ステラの言い方から呆れのようなものを感じてレオナルドはたじろぐが、それでもなお、気になることを言った。
『はぁ……。ならば私が好きな色に変化させますよ。それならいいのでしょう?』
ステラは
「っ、そんなことできるの!?」
ステラのため息にレオナルドは肩をビクッとさせるが、続く言葉へすぐに反応した。
『あなたの霊力を使えばそれくらいの改変
「ありがとう、ステラ!」
『…………で、では、何色がいいのですか?』
どういう訳かステラが少し
「そうだな……。あ、じゃあさ、俺はこれからゲーム通りに進まないようシナリオを
『真逆の色?』
「うん。ゲームの俺は悪役令息。だからその真逆で主人公の髪色はどうかなって。この国では主人公の髪色は
『まあ、そうでしょうね。で?その色というのは?』
「黒髪。この屋敷にもいないだろ?どうかな?」
『……問題ありません。では、出かけるときは黒髪に変装するということで、最初に習得するのは飛行の精霊術でよろしいですか?』
「ああ。それでお願いします!よろしくステラ!」
こうしてレオナルドが特訓する最初の精霊術は飛行の精霊術に決まった。