アレンは気を取り直して表情を真剣なものへと変えた。アレンは中々帰ってこないレオナルドのことを本気で心配していたのだ。レオナルドのことは信じているが、何か
「……レオナルド様、お変わりございませんか?」
言いながら注意深くレオナルドを見つめる。
『もし……、もしも戻ってきた俺が今までの俺じゃなかったら……、アレンから見てそう判断できるようだったら……、俺を殺してくれ』
他でもない、レオナルドにそう言われたからこそ、アレンは確認しなければならない。一点、明らかに別れる前のレオナルドと違うところがあるから余計にだ。
「ん?ああ、大丈夫。ほら、この通り。今までの俺と変わりないよ」
別れる前に自分で言った言葉を気にしてくれてのことだとすぐに思い
だが、どうしてかアレンはレオナルドの答えを聞いても
「……では、失礼ながら
「へ?臭い?………って、まさか俺
アレンは突然何を言い出すんだ、と思ったレオナルドだが、臭いという言葉から水路の臭いだということに結びつき、自分があの場所と同じ臭いを
「正直に申し上げるなら……、形容しがたい強烈な臭いが染みついていらっしゃるかと……」
アレンが言い
『あなたが臭かったから人間達が見てきたんですね』
そこに精霊が追い打ちをかけた。
「マジか……」
(そりゃじろじろ見てくるよなぁ……)
道中人々が嫌な視線を向けてきていたのも、レオナルドから漂う異臭のせいだったとわかり、レオナルドは落ち込むと同時に申し訳なく思った。あの臭いを自分は街中にまき散らしていたのか……。
「レオナルド様は本当にどちらに行かれていたのですか?」
「あ~、いや、ちょっとね、地下水路を探検しに……」
そんな臭いをさせていたら、言い訳のしようもない、とレオナルドは地下水路に行っていたことを正直に答える。
「なぜそのような場所へ……?」
地下水路など貴族が行くような場所ではない。なぜ行先も告げず、同行も許さず、一人でそんなところに行ったのか、アレンの頭の中は疑問でいっぱいだった。
「ちょっと
レオナルドは本当のことを言う訳にもいかず、笑って
「そうですか……。わかりました。何はともあれ、ご無事に戻ってきてくださってよかったです」
全然答えにはなっていないと思ったが、レオナルドがいつものレオナルドだと確信できたアレンはようやく心から
それからレオナルドは、誰にも会わないようにそそくさとお風呂に向かい、入念に体を洗った。
セレナリーゼにまで臭いと思われたらショックが大きすぎる。
全身を
だが、レオナルドは失念していた。自分が通ればそこに臭いが残ってしまうということを。屋敷内のお風呂への通り道には異臭が漂い、結果、レオナルドが原因だということが皆にバレてしまったのだ。
『……先ほどあなたが話していた人間に臭いを指摘されたのですから、気づくべきでしょうに』
やれやれとでも言いたげな精霊の言葉に、レオナルドはぐうの音も出なかったが、気づいていたならもっと早く言ってほしかった。
家族皆の前で、フォルステッドに何をしていたのかと
また、レオナルドの行動を許したアレンの責任も重い、と
当然レオナルドはフォルステッドからさらに叱られることになったが、弁明が
こうして精霊を
ちなみに、翌朝、洗濯担当のメイドが、レオナルドが着ていた服を洗う際、思いがけず鼻を突いた臭気に吐き気を