花嫁姿の真希ちゃん、本当に綺麗だったな。
今思い出してもため息が出てしまうくらい。
晴と素敵すぎるくらいにお似合いでさ。
……彼女には僕じゃ駄目だった。
真希ちゃんが幸せなら、それで良いはずなのに。
まだ素直に喜べない自分が居る。
気分転換するしかない。夜風にでもあたろう。
自宅のベランダで煙草を吸おうとしてライターを探そうとしたら、無い。
代わりに違うものが入ってた。
「え、何でこれが? 」
それは真希ちゃんの宝物である、シトリンタンブル。
いや、どう考えたって僕のところにあるのはおかしい。
返さなきゃと思い、真希ちゃんに連絡した。
すると返さなくて大丈夫と言ったんだ。
『私にとっては役目を終えたから消えちゃったのかも 今の優大君に必要だから来たんだよ だから持ってて』
いや、なんでお前は来たんだよってくらい急にやってきたシトリンタンブル。
レモン色でつやつやしている。
そういやシトリンの意味ってなんだっけ?
パワーストーンには意味や効果がある。
調べてみるか。スマホで『シトリン意味』を。
意味を知ったら、びっくりした。
シトリンには太陽のエネルギーがあるらしい。
ネガティブに陥ってる人には
ハートから明るく元気にしてくれるって。
そうか、僕に元気になってほしくてお前は来たんだね。
外は降りはじめた。
雨の匂いがすると、いつも悲しくなるはずなのに不思議とそうならなかった。
部屋に戻り、手のひらにシトリンを乗せる。じっ、と見つめると、あたたかい気持ちになる。
なんだか生き物みたいにみえて、不思議。
可愛くて笑ってしまった。
彼女に再び会える日まで、もう少し沈んだままで居たいんだ。
まだ友達としてじゃなく、大切な人であってほしい。
落ち込む理由は真希ちゃんへの思いが、優しいまま残ってるから。
そのうちシトリンの意味の通り、元気になれたらいいな。
fin