「快先輩、どう思います?真希ちゃん。優大と合いそうですか? 」
あ、康太が聞くんだ。
凄く可愛いと思う、だって実は結構タイプだし。
目が大きくて二重。とにかく目力の強い子だ。
海で出会った時。遠くを見てる眼差しに、心が揺れた。
でも何故か近くをはっきり捉えてるような。上手く言えないけどそんな感じがした。
「いいじゃん。でも、人一倍繊細そうだな」
快先輩、分かるんだ? 僕もそんな感じだなと思ったけどね。
「だから、大切にしてやれよ……ってまだ優大は彼氏じゃねえか」
そうなんだ。今はまだ違う。けど、これから彼氏になる。なってみせるから。
僕を知ってたし、それなら彼女に対してグイグイ行かなきゃだ。
真希ちゃんはバンドの大ファンだからね。
ああいうタイプは、知らない奴に積極的に来られても困るだろう。
だから真希ちゃんが僕を知らなかったら紳士的にするつもりだった。
考えてみたら真面目な人だし、直ぐには落ちてくれなさそう。でも、そこが燃える。
話が盛り上がった。康太は未だに特定の相手を作らないでいるらしい。
フラットで居られる関係が1番だよと言ってた。
あと飯はあまり食べてないって。
だからちゃんと食べろと怒っておいた。
あと、快先輩の娘さんの話。5歳になったばかり。
パパと結婚するって言ってくれたらしく、凄く嬉しかったみたい。
娘さんが描いた家族の似顔絵を、リビングの壁に飾ってるって。微笑ましい光景を簡単にイメージ出来た。
2人とも、あっくんの話はしなかった。
触れたくないのかもしれない。
僕も彼の話をしなかった。気まずくなったら嫌だったから。
気がつくと夜の7時になってた。メンバーが揃ったのは、約2時間くらい前。
快先輩は奥さんと娘さんが待ってるから早く帰るって言って、ついでに康太も帰って行った。
久しぶりに話し過ぎてちょっと疲れたけど、楽しかった。
今回は酒を飲まなかったな。
何故かって、先輩が早く帰ったからだ。
待ってる奥さんに怒られるから、飲まなかったのだろう。
康太は1人で絶対飲まないし。
まあ、またの機会に酒を飲もう。
「あっくん、どうだった?2人元気そうだったでしょう? 楽しかったよね」
そうあっくんに話しかけて、僕は煙草を吸い始めた。久しぶりに会ったんだから、嬉しかったはず。
懐かしいよな、メンバーが揃うなんてどれくらいぶりか。
『別になんとも、思わない。俺は真希さえ居れば、他はどうだって良い』
はあ? 何言ってんの。メンバーが大事じゃない訳?
2人はあっくんの葬式で号泣してたのに、それくらい大事に思ってるのに。
僕だって凄く悲しかった。メンバーを大切にしないの、何で?
おかしいよ。
耐えきれず口にした言葉にさえ、彼は気にしてない様子だった。ああ、イライラする。
自分で眉間にシワが寄ってるのが分かるくらい。
そんないけ好かない態度も、軽口叩けるのも今のうちだから。
真希ちゃんは、僕の彼女になる。
そうしたらあっくんだって弱気になるよね。
『早く真希の所に返してくれ。真希が心配するし、俺も不安になる』
「ふん、知らない。足が付いてれば自力で帰れたのに。幽霊には無いみたいだから、残念だね」
一生、元に帰してやりたくない。
あっくんなんて、真希ちゃんに忘れ去られてしまえば良いのに。
ほっとかれて存在ごとなくなってしまえ。
でも、次彼女に会う時に返さないといけない。
約束したんだ。
今日は日曜日。もうすでに楽しみだ。
ああ、早く会いたい。
そうだ。会えない間、何をするか決めた。
久しぶりに作詞作曲したくなった。
今なら、良いのが出来るかもしれない。せっかく作りたい気持ちになったんだから、やらなくちゃね。
やる気になるなんていつぶりだろう。
曲を作るなんて、あの時以来だからな。
目の前にないのにキーボードでメロディーを奏でる動きをした。
もう、ワクワクしてきちゃったよ。
活動していない間、僕は1度も歌を作らなかった。
意味がないからね。ボーカルが亡くなったんだし。
新しい曲を作ったら、真希ちゃん喜ぶかな。
愛しいって、なんだかくすぐったいね。
こんな感覚初めてだ。
真希ちゃんは、僕が今まで付き合ってきた女の子と違う気がする。
あまり派手じゃないし、どちらかといえば地味な方に入る。凄く可愛いけどね。
やばい、結構本気になっちゃう?
今回の恋愛は久々に楽しめそう。