26. 親友
私たちはセントリン王国とランバート王国の戦争を止めるために出来るだけの準備はしたのです。ミルディが作ってくれた通信魔法具で随時連絡をとりあい作戦を決行することになったのです。
「うむ。準備は出来たのかフィオナとソフィア。それと修道士ペア」
「ラピスだよ!」
「私はエルミン」
なんかロゼッタ様はお母さんみたいなのですね。微笑ましいです。この戦争を止めてまたみんなとこんな風に笑いあいたいのですね。だから、頑張りましょう!そう思いながら私はみんなに声をかけるのです。
「私のワガママに付き合ってもらって申し訳ないのです。必ず無事でいてください」
「かまわん。お主は旅の初めから頑固じゃからな。今さらじゃろ」
そう言ってロゼッタ様は笑うのです。そしてみんなも。この笑顔を守るためなら私なんでもするですよ!そんな話をしているうちに出発の時間になったようです。馬に乗っている人がこちらに来ていますね。
「それじゃマルセナをお願いなのです」
「うむ」
「任せてボクも頑張るから!」
「賢者の血縁者として私も頑張ります!」
本当にみんな頼もしいのです。まずは目的を戦争を止めることに集中しなければですね。するとロゼッタ様が私に話しかける。
「アリーゼ」
「なんです?」
「お主……また何かしておらんだろうな?その余裕が気になるのじゃが?」
「何もしていないのですよ?」
ロゼッタ様は鋭いのですね……確実ではないですけど、でもこれで準備は万全にしたつもりなのです。後は待つだけなのです。こうして王都でマルセナを救出するロゼッタ様たちは出発して行ったのです。
「さて……ミルディ私たちも行くのです」
「うん。アリーゼ、あたしはずっと一緒にいるからね。絶対だよ?約束」
ミルディは右手の小指を立てる。私も同じ様に小指を立てて絡ませる。それは約束を交わす時の行為。それを確認してから私たちは手を離す。
それから私たちはお互いに前を向きと歩き出す。目指す場所は一つしかない。私たちにはやらなければならないことがあるのです。そのために私たちは一歩ずつ歩いていく。
「ミルディって強いのですね」
「えっどこが?あたしは聖女でもないし、アリーゼみたいに強くないよ?ただの魔法鍛冶屋だし」
「いえ。私が言いたいのはそういうことではないのです。戦闘のことではなく心が強いと言うことなのです。だから……私はミルディと出会えて良かったのです」
私は思うのです。もしあの時、ミルディと出会わなければ今のこの旅はなかったと思いますし、私はどうなっていただろうかと。きっと何も出来なかっただろうと思うのです。「聖痕」が消え、カトリーナ教会を飛び出した。でも本当はただの強がりなのです。怖くて震えていたかもしれない。でも今は違う。みんなが居てくれるから私は聖女として居ることができるのです。それがとても嬉しいのです。
「あたしもだよ。アリーゼ」
ミルディは笑顔を向けてくれる。その笑顔を見ると私も自然と笑顔になるのです。私は本当に良いお友達ができたのです。そんなことを話しながら歩いていると私たちが乗る馬車が来るのです。
「いよいよなのです」
「うん。そうだね」
「必ず戦争を止めるのです」
そう言って馬車に乗り込む。向かう先はセントリン王国とランバート王国との国境にあるユトナ聖橋。
私は馬車の窓から外を見る。流れる景色を眺めながら改めて決意を固める。そのまま横にいるミルディに視線を向けると、彼女はただ黙って頷いてくれたのです。それだけで私に勇気が湧いてくるのです。ありがとうなのです、ミルディ
だからこそ、もう迷わない。どんな結果になろうとも後悔だけはしない。絶対に。私たちの手で必ず戦争を止め、人々を救うのです。私は聖女なのですから。