28. 最高の弟子 ~ロゼッタ視点~
ワシたちはマジカリア王国を立つ資金稼ぎをしつつ色々な準備をしている。まったくアリーゼには困ったものじゃな。次の目的は『ダンジョン攻略』などと簡単に抜かしおって……ただの魔物討伐とは比べ物にならんくらい危険なのじゃ。
まぁ……そんなこと言ってもアリーゼには無駄じゃろうから、正直諦めておる。本当にあやつは頑固じゃからな。それに、ワシが反対してもどうせ『ロゼッタ様やフィオナ、あとはソフィアもいるのです!』とパッションゴリ押しの思考で押し通すつもりじゃろうからな。と、少しだけアリーゼのことを理解している自分が恥ずかしくなる。
そしてワシは今、ギル坊に最後の挨拶をしにマジカリア城に来ている。
「え?シェルタバード島ですか?その……よろしいのですかロゼッタ様?」
「アリーゼが『ダンジョン攻略』をすると言っておるからの。仕方あるまい」
シェルタバード島……『世界大戦』の始まり……そして終わりの地。ワシにとっては悪い思い出しかない。それでもワシはアリーゼたちを支えると決めておるからの。
でもきっと、それは建前じゃ……本当はあの時の罪滅ぼしなのかも知れぬ。『誰1人犠牲にしたくない』と強く願っていた者を犠牲にしてしまった……
そしてワシはきっと……アリーゼにヤツを重ねておるのじゃと思う。良く考えてみれば同じ銀髪で見た目はどことなく似ておるしな。中身は全然違うのじゃがな……
「そう言う面倒見の良いところは全然変わっておられませんね。ロゼッタ様は」
「本当に世話が焼けるのじゃ……」
「それより、どうですかソフィアは?私としても賢者の血筋に恥じないように成長してもらいたいんですが」
「うむ。かなり腕は良さそうじゃ、知識もある。あとは経験じゃろ。……どこかの賢者様よりは素質がありそうじゃな?」
「はっはっは。それなら安心ですね。ソフィアのことよろしくお願いしますロゼッタ様」
まったく……どいつもこいつも面倒事ばかりワシに押し付けおって。ワシは別に弟子などとりたくないのじゃ。まぁ……ソフィアの魔法はサポートに適しておるからな、ワシとしても助かるのじゃが……
「本当に今まで色々なことがありましたね……幸せだったのか分かりませんが……良い人生でした。ロゼッタ様と初めて出会った時のことを今でも思い出します……」
「ワシもじゃギル坊。これだけ長く生きていれば色んなことがあるが……お主と出会えたことが……ワシを1番変えたのかも知れぬからな」
「そう言って頂けるとありがたいです。本当にロゼッタ様には感謝してもしきれませんから……あなたの1番弟子になれて良かった。ロゼッタ様。今までありがとうございました」
そう言ってギル坊はワシに深々と頭を下げる。おそらく……もう今生でギル坊と会うことはない。これがきっと最後じゃ……ワシはギル坊に近付き、その頭を撫でる。そして優しく微笑む。
「先にいって待っておれ。きっとルナやメルティア、そして……ディアナもお主を待っておる」
「そうかもしれませんね。またあの時のように……みんなで集まりたいものですね」
「ワシは集まりたくなどないがの」
「はっはっは。ロゼッタ様は確かにそうかもしれませんね……」
魔女は気まぐれ……そんなワシの毎日が色付いた。それはきっと……ギル坊のおかげなのじゃからな。だから……お主には感謝しておる。ワシは最高の弟子を持って誇らしいぞい。本当にありがとうなのじゃ……ギル坊。