27. アリーゼ ~ソフィア視点~
私は宮廷魔法士のソフィア=エルヴァンド=マジカリアと言います。一応マジカリア王国の賢者、賢王と呼ばれているギルフォード=エルヴァンド=マジカリアの血縁です。正確に言えば孫の孫の孫の孫?くらいの血縁なんです。
私はあの大魔女ロゼッタ=ロズウェル様に魔法を学ぶため聖女アリーゼ様の旅についていくことになったわ。もちろんギルフォード様に言われたからでもあるけど、こんな機会、この先の人生で訪れることなんてないから。
それにしてもあの大魔女ロゼッタ様が一緒に旅をしているので、どのくらいの凄い人なのかと思えば、話を聞くと驚いたのだけど、聖女の証である「聖痕」が消えて聖魔法も使えないみたい。そんなアリーゼ様ってどんな人なのかしら?私は確認することにしました。
「信用してない訳じゃないけど……これから一緒に旅をするし、心配ですからね。まずは様子を遠目から見ておきましょうか」
こうして私はアリーゼ様を見張ることにしました。今日は買い物かしら?最初は普通に本屋に入り買い物をしていたけれど、次も本屋、また本屋で本を買っているみたい。
「そういえばアリーゼ様は本を読むのが好きと言ってましたっけ。でもあんなに読みきれるのかしら?」
するとアリーゼ様は広場のベンチに腰掛け買った本を読み始める。そして黙々とそのまま本を読み続けて夕方になり辺りが暗くなってきてもまだ読んでいます……信じられません……まさか一日中読むつもりなんでしょうか?そんな私の予感は的中し、その日は一日中読書をしていました。
そして次の日もまた本屋に……そしてまた広場に腰掛け買った本を読み始める。さすがに今日は……と思ったら、昨日の本より分厚い本を3冊購入しています!?︎一体いつまで持つんでしょうこの方は……と思いながら見守ることにします。
……しかし結局3日ほど経ってもその生活スタイルは全く変わりませんでした。これはさすがにおかしいわよね?もしかしたら私が見張っていることに気づいているのでは?だからわざと本だけを読み続けているのかしら?
さすがの私もしびれを切らし今日はアリーゼ様に話しかけることにする。広場にいるアリーゼ様に近づき声をかける。
「こんにちはアリーゼ様。読書ですか?」
「あっソフィア。そうなのです。いつもの日課なのです!」
私がふとアリーゼ様の横をみると、今日も大量の本を……本当に何度見てもびっくりする量ね。これだけ本を読んでいたら頭が痛くなりそう……
「私に何か用なのですか?」
「あっいや出発は明後日でしたよね?一応確認を……」
「はいなのです!今みんなが魔法船に乗船する資金を集めてくれているのです!」
それはありがたいですね。やはり旅にはお金がかかるものですから。それなのにこんな本ばっかり買って……やっぱりアリーゼ様って凄い人なのよね。みんなが各々仕事やら魔物討伐をして資金を稼いでいるのに、何もせずに1人本を読んでいるんだもの……
こうなったら他の皆さんに聞くべきですよね!私はそのまま皆さんに話を聞きに行くことにしました。まずはミルディさん。確か一番アリーゼ様と付き合いが長かったわよね。マジカリア城の工房にいるミルディさんに声をかける。
「こんにちはミルディさん。作業中すいません」
「ん?あっソフィア。どうしたのあたしに何か用事?」
「あの……アリーゼ様ってどんな方なんですか?」
「えっ?アリーゼ?う~ん……あのままだと思うけど……?本が好きくらい?あとは何故か強い。そして頑固かな。よく分からないけど」
えっとつまりわからないという事かしら?とりあえず次はロゼッタ様とフィオナさんにもう少し詳しく聞いてみようと思います。
「えっアリーゼ様?そうだなぁ可愛いお姉さんみたいな存在かな!」
「アリーゼはアリーゼじゃろ」
2人ともよくわかりません……本当に謎な人だわ。私は結局何もわからず城の大噴水の前に座ることにする。本当に旅についていって大丈夫なのかしら……
「はぁ……」
「大きなため息なのです。どうかしたのです?」
「えっ!?アリーゼ様!?……えっと貴女は何者なんですか!?」
私は勢いで聞いてしまった。アリーゼ様は目を丸くしてキョトンとしている。そりゃそうよね……しかもいきなり失礼なことを聞いてしまったわ。どうしようかしら……するとアリーゼ様が口を開く。
「私はただの聖女なのです」
へっ……それだけ……?ますます不思議なお人ね……
「もしかしてソフィアは私がいつも本を読んでばかりいることを不思議に思っているのですね?」
「知ってたんですか!?あっ……」
「ずっと気づいていたのです。私の事見てたのです」
やっぱりバレていたんだ……なら仕方ないわね。正直に話すしかないわ。それにしても……聖女か。一体どういう人物なのかしら。
「あの私はアリーゼ様のことが知りたいんです」
「私のことが知りたいのです?それなら、今までのことを話すのです!」
そしてアリーゼ様は話し始める、「聖痕」が消えてからこれまでの旅のことを。
私はアリーゼ様の話を聞き、みんながなぜアリーゼ様と一緒にいるのか分かるような気がしたわ。色々苦労しているみたいだけど、その事を話すアリーゼ様は凄く楽しそうだった。だから少しだけ……今まで一緒じゃなくて寂しい気もしたけど同時にこれから私も一緒に旅が出来ると思うと嬉しくもなりました。
正直アリーゼ様は不思議な人。それしか分かりませんでした。でも信じていいのはわかったわ。これから楽しくなりそうな予感だわ。私も早くみんなと仲良くなりたい。そう思ったのでした。