24. 乙女の悩み ~フィオナ視点~
マジカリア鉱山でソフィアさんの土属性魔法で探知し『ミスリル』を発掘したボクたちは、ミルディさんが魔法錬金で作ってくれるミスリル製の武器を楽しみにしているの。やっぱり時間はかかるみたいだけど、今のミルディさんなら作れるはず。だってあんなに頑張ってたから。
ボクは今マジカリア城の中庭の大噴水の前で座っている。今朝凄くショックなことがあったから……それはね……体重が増えてたの……ボク……女の子なのに……
「はぁ……もっと運動しないとダメなのかなぁ。甘い物を控えるべきかなぁ……」
最近、師匠の影響なのか魔物討伐の休憩の時にお菓子を食べる機会が多いような気がするし……別に師匠のせいにしているわけじゃないけど。でも師匠はボクよりたくさんお菓子や甘いものを食べているのに全然太らないのが羨ましい。やっぱり少し減らそうか悩む……そんなことを思っているとそこにアリーゼ様がやってくる。
「フィオナ?どうしたのです?こんなところで。日向ぼっこなのですか?」
「えっ!?あっ!あ、ああ!ア、アリーゼ様!?いいい一体なぜここに?」
いきなり話しかけられたから慌てて変な返事しちゃったよ……恥ずかしい……
「?それは私の質問なのです」
「そっそうだよね……」
「どうかしたのですか?」
……言えないよぉ。体重が増えてショックだったなんて絶対に言えないもん。だから誤魔化さないと。
「そ、それより!ミルディさんの魔法錬金どんな感じかな?ミスリルの武器楽しみだよね!」
「そうですね。私もまだ見てないのです。でもミルディは『絶対完成させます』と言ってたので大丈夫なのです!」
無理やり話題を変えてみたけど……うまくごまかせたか不安だ。するとアリーゼ様は何とも思ってないようで普通に話してくれる。良かった誤魔化せたみたい。
ボクはふとアリーゼ様を見る。一番目がいく大きな胸、スラッとした体型に長く伸びた美しい銀髪、そして可愛らしい笑顔……って!何考えてるのボクは!恥ずかしくてつい目をそらしてしまう。
その時突然アリーゼ様に顔を向けられてしまった!わぁ!ど、どうしよう!!思わず顔が真っ赤になってると……
「あれ?あまり気にしていなかったのですが、フィオナ……少し身体付きが良くなったのです?」
「えぇー!!」
まさかバレてるの!?いやそれよりもそんなことは無いよね?……そこまでじゃないと思うんだけどなぁ…… ボクは動揺を隠すために必死に取り繕うとする。
「ち、違うんだよアリーゼ様!これはその……あの……なんと言うか、ほら!ここのところ色々あったからストレス溜まってたのかなって!そう言うことなんだよ!ホントだよ!?」
「落ち着くのです。フィオナは成長期なのです。太ったとかそういうのではなくて、魔物討伐とかで重い剣を振り続けて筋肉がついたのではないかということなのです」
ああ……そういう事ね……そう言われてみたらそうなのかもしれない。そっか……別に太ったわけじゃないんだ。ボクがホッと胸を撫で下ろしているとアリーゼ様がクスリと笑う。あ、笑われた。
「笑わないでよアリーゼ様……」
「ごめんなのです。可愛いのですフィオナは。でも女の子だから気になりますよね?」
「うん。ボク、身長も低いし、胸も小さいし……せめてそこくらいはもう少し大きくなりたいかなって思ってるんだよね……アリーゼ様みたいに」
「そんなに大きくはないのですけど……?それに大きくてもいいことありませんよ?肩とか凝りますし、読書の邪魔なのです」
アリーゼ様は自分の胸に手を当てている。それはボクからしたら贅沢な悩みなんだよね。あぁ……大きいと気にしない事まで気にしたりする事もあるんだろうなぁ。ボクはその様子を見ていてちょっとだけ羨ましく思う。ボクもそれなりとは言わなくてもそこそこには欲しいと思ってしまう。
「大丈夫なのです。フィオナはまだまだ大きくなるのです!まだ若いのです!」
「うん。筋肉が増えてるから体重が増えたんだよね……これ以上筋肉がつくのもなぁ……」
「それならロゼッタ様みたいに攻撃魔法も使えるようになったらいいのではないですか?」
「アリーゼ様。確かにそれはいい考えかも。それなら師匠に相談しよう!ボクも魔法剣じゃなくて攻撃魔法使いたい!」
「なら早速ロゼッタ様のところへ行くのです!」
ということで師匠のところにボクとアリーゼ様は向かう。そして師匠に攻撃魔法を教えてもらうようにお願いする。
「攻撃魔法……?フィオナお主には無理じゃ」
「えっ!?そんなぁ……」
「ダメなのです?ロゼッタ様?」
「ふむ。理由はある。フィオナは魔法を具現化することに向いておらん。詠唱した魔力を体内に留めておくことはできておるようじゃが、放出することはまだ出来ておらんのじゃ」
そうなんだ。魔力はあるし、魔法をちゃんと発動できるし……剣に魔法を宿す魔法剣を使うこと出来るんだけどなぁ……攻撃魔法ってすごく難しいんだ……
「なんで今さら攻撃魔法を覚えたいのじゃ?お主には魔法剣があるじゃろ?」
「ダメダメ!ボクはこれ以上筋肉をつけたくないの!」
ボクの言葉を聞いた途端呆れたような顔になる師匠。だって女の子なのに太い腕なんて可愛くない!ボクはまだ可愛い方が好きだし!
「バカ者!お主は強くなりたいんじゃろ!せっかく最近強くなってきたと思っておったのに……そんなつまらんことを考えおって」
師匠がガックリとうなだれてしまう……あ、なんか悪いこと言ったかな?うぅ……ご、ごめんなさい…… ボクが下を向いて俯いているとアリーゼ様が話す
「フィオナ。全然気にしなくていいのですよ。私たちはフィオナの魔法剣に助けられているのです。もし体重が気になるなら私もダイエットにお付き合いするのです!」
「ダイエット?フィオナお主はもっと筋力をつけんと強くなれん。それに勘違いしとるが攻撃魔法は魔力だけで発動出来るもんじゃないんじゃぞ?体力、その発動の威力に耐えられる筋力も必要。だから魔法剣も攻撃魔法も変わらん」
そっか。そういうものなんだ……勘違いしてた。それならボク、強くなるために頑張るよ!でも……もしもの時はダイエット手伝ってねアリーゼ様!ボクは笑顔で答えるのでした。