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18. 秘密のお茶会

18. 秘密のお茶会




 あれから2日たったのです。私の体調も良くなりもう動き回っても大丈夫なのです。私は鏡の前でミルディたちが作ってくれた新しい純白のローブを着てその姿を確認する。


「着心地はバッチリなのです。それになんとなく温かいような気もするのです。本当にありがとうなのです。」


 これは魔法軽減の付与がされている私特注のローブ。あの出来事があってみんなで作ってくれたのです。私って愛されてます。少し涙ぐんでしまいました。


 さて、こうしてる場合じゃないのです。今日はなんとギルフォード様からお茶会のお誘いを受けているのです。なんでも私とお話をしたいとのことなのです。まさかマジカリア王国の賢者様から直々にお誘いされるなんて。これはもう名誉なことなのですね。


 そうこうしてたら約束の時間の10分前になってしまったのです。私は急いで部屋を出て、ギルフォード様が待っている部屋に向かう。


 コンッコンッ 私が扉をノックすると、中から返事が聞こえる。ガチャッ 私はそーっと扉を開けて中に入る。


「失礼しますなのです」


「すいません忙しいのに。さぁアリーゼ様こちらへ」


 ギルフォード様は部屋の窓際のテーブルでお茶を飲んでいた。私はギルフォード様に招かれるまま、対面に座る。


「アリーゼ様わざわざありがとうございます」


「いえ。お誘いいただき光栄なのです。なぜ私を?」


「実はロゼッタ様から、アリーゼ様は知識が豊富だと伺ったものですから。あとは紅茶に詳しいと。ぜひ飲んでいただきたい茶葉の種類がありまして」


 なるほど。そして私にも紅茶が出される。独特な香りがするのですね?これは何でしょうか?私は比較的、紅茶に詳しいはずなのですが……香りだけで分かるのです。この紅茶は初めてなのですよ。そのまま一口飲むと、鼻から独特な甘い香りが抜け、心地よい気分になる。うん……これ美味しいのです!


「どうですかアリーゼ様?」


「とても美味しいのです!私も初めて飲んだのです。これは何の茶葉を使われているのですか?」


「その茶葉は……『メイデン』清らかなる水と神聖な土が生み出した、聖なる茶葉と言われているものです」


「ほぇー凄いのです。この茶葉はこのマジカリア王国の名産なのですか?」


 私がそう聞くとギルフォード様は一呼吸おいて、微笑みながら話を続ける。


「いえ。……これは特別な客人にしか出さないようにと、昔からルナ様から言伝てされている幻の茶葉なんです」


「えぇ!?そんな貴重なものを!?」


「いいんです。私がアリーゼ様に飲んでいただきたかったのです。この紅茶の味を知っている人は……今では私とロゼッタ様くらいなものです」


「そうなのですか?」


「はい。それは……あの大聖女ディアナ様が作られた茶葉なんです」


 私はギルフォード様のその言葉に驚きを隠せず言葉を失う。あの大聖女ディアナ様が……?


「さて。アリーゼ様。あなたはロゼッタ様から過去のことを聞いておりますか?」


「いえ。ただ『世界大戦』でディアナ様と共に魔物を倒したということくらいしか聞いていないのです。本当は色々聞きたいのですけど、ロゼッタ様があまり話したくなさそうなので聞かないことにしているのです」


「そうですか……ではせっかくなので少しだけお話しましょう。これはロゼッタ様には内緒でお願いします」


 ギルフォード様は少しお茶目っぽく私に言う。私はもちろんなのですと頷く。


「私は賢者の血筋として、その当時は集落程度の大きさの魔法士がいる魔法都市を目指していました。そしてロゼッタ様に出会い、数えきれないくらいの苦楽を共にしました。まぁ……ロゼッタ様の一番弟子みたいなものです」


 だからギル坊って呼ばれているのですね……でもロゼッタ様は魔女なのですよね。魔女が賢者を弟子にしているなんて、まるで物語の世界みたいに不思議な関係性なのです。


「世界大戦……突如黒い柱が現れ魔物が各地に大量発生しました。私は何とかこの魔法都市を防衛していたのですが、ジリ貧で魔物の蹂躙を受けるのも時間の問題でした。そこでディアナ様が立ち上がり、ロゼッタ様も同行し魔物の驚異を葬りさったのです……しかし、この魔法都市に戻って来たのは魔力を失い小さくなったロゼッタ様だけでした」


「え……」


 ギルフォード様のその言葉に私は言葉を失う。ディアナ様は……世界大戦で亡くなっていたのですね……そしてギルフォード様は話を続ける。


「そしてロゼッタ様は、もう誰とも関わらずひっそりと暮らしながら魔力が戻るのを待つと言って、旅だたれたのです。なので驚きましたよ、アリーゼ様たちと共にこのマジカリア王国へ来たのが」


「そうだったのですね……でも私が常闇の森から無理に連れ出したようなものなのですよ?」


「だとしてもです。でも、昔から押しには弱いところがありましたからねロゼッタ様は。なんだかんだお優しい方です。昔から変わらない」


「確かにそうなのですね」


「……なのでアリーゼ様」


 ギルフォード様は私に真剣な眼差しを向ける。私はその目を見る。


「あなたは死なないでください。ロゼッタ様にはもう悲しい思いをしてほしくないのです」


「ギルフォード様……はいなのです!」


 それからギルフォード様とは、色々な話をしたのです。特にロゼッタ様のことはたくさん聞いたのです!でもこの話は内緒にしてほしいと頼まれたので秘密なのですよ。私も約束を守る女なのですから。

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