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16. らしく

16. らしく





 そして次の日。目が覚めると既に太陽は高く昇っていたのです。私が起きると同時にノックが響き扉が開く。そこにはフィオナが食事を持って来てくれたのです。


 昨日の事件の後なのによく寝ていたので起こさないように気を使ってくれたみたいです。私はそんなフィオナに感謝をしながら食事を済ませると外に出て、魔法都市ルナノワールに戻るための馬車を探すのです。


「確かこの街の入り口に待機しているはずなのです」


「えーと……あっあそこだね!」


 入り口付近には馬車が止まっており、近くまで行くと御者の男性が声をかけて来る。


「おや?あんた達は聖女様たちと一緒にいた?そっちの子は身体はもう大丈夫なのかい?」


「はい。ご迷惑をおかけしましたのです」


 私が頭を下げると御者さんはとても優しげに笑う。どうやらもう大丈夫だと察してくれたみたいなのです。良かったのです。


「なら良いんだ。さぁ乗ってきな!出発するぞ!!」


 そう言われ馬車に乗ると動き出す。窓から外を見ると街の人達が集まって見送ってくれていたのです。本当にいい街なのです……聖女リスティ様が救ったのですね……


 しばらくすると都市の入り口の大きな門を抜けていくのです。そしてようやくルナノワールに帰ってきたのです。馬車はそのままマジカリア城に向かい止まる。そして馬車から降りるとミルディがそこにはいたのです。


「アリーゼ!?無事なの!?倒れたって聞いてあたし心配で……」


「心配しないで大丈夫なのです。もう元気なのです!」


「本当?でも一応診てもらったほうがいいよ!ほら行こうアリーゼ!」


「あの……ミルディ痛いのです……」


 そう言って私の腕を掴みミルディは城の中に入っていく。そのあとお城の救護兵によって私は治療を受けるのでした。







 そして私が起きてから1週間。私はベッドの上にいたのです……まぁ当然と言えば当然なのですが……私は安静のため治療のあとマジカリア城に滞在することになったのです。私は昔「聖痕」があった右の胸の辺りを触る。今は何もないのです。ただの古傷になっているのです……


 それでも今でもたまに痛みを感じるような感覚に陥る事があるのです。だから今回みたいになったときはやっぱり不安になるのです。今回のことは正直私も予想していなかったのです。


「こんなんじゃ……もう……みんなと旅をするのは難しいのですかね……」


 私が呟いていると扉がノックされ、ミルディが中に入ってくる。こうやってミルディは鍛冶屋の修行の合間に私の部屋に来て話相手になってくれる。だからこそ、心配かけないようにしないとなのですね。


「具合どうかな?」


「大丈夫なのですよ。もう痛みはないのです!」


「そっか。よかった~」


 そう言って彼女は椅子を近くに持ってきて座る。そしてミルディは急に真面目な顔で話始めるのです。


「ねぇアリーゼ……ごめん。あたしさアリーゼの嘘すぐにわかっちゃうんだ」


「え……」


 私は驚いていると、ミルディはクスッと笑い話し始める。


「あれ?忘れちゃった?あたし、魔法使えるんだよ。……いつもアリーゼの笑顔見てたらわかるよ。なんか無理して笑ってるような気がして……」


 そうでした。ミルディは魔法が使えるんでしたね……きっと彼女には敵わないのです。それこそ一生かもしれないのです。だからミルディと共に旅ができて良かったのです。


 私は思っていることをミルディに話す。こういう悩みも話せるのはきっとミルディが私のことを信じてくれてるから……もちろん私も信じているのですけどね


「正直……怖いのです。また同じことが起きたらと思うと……聖女失格なのかもしれないのですね……」


「そんなことない。少なくともあたしとロゼッタ様、フィオナはアリーゼが聖女だって思ってる。誰よりもね?」


「ミルディ……」


「それにね……あたし思うんだけど、アリーゼはアリーゼらしく生きてほしいんだ。だから……無理しないでいいから。たまにはあたしにも頼ってよ?」


 そう言うと私の隣に座って肩に頭をコツンと当ててくるのです。ミルディの言葉を聞いて、今まで心の中で引っかかっていた物がスゥーっと抜けていくような感じがしたのです。ミルディありがとうなのです。

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