14. 異変
魔法都市ルナノワールの西にあるアルスメルタの街に魔物の軍勢が現れたという情報を聞いて私たちは馬車で街に急ぐことにしたのです。こうも魔物討伐ばかりだと……心配になるのですね。でもロゼッタ様もフィオナも凄く強くなっているのです。それと今回は、あの聖エルンストの四聖女のリスティ様も一緒なので安心なのです。
アルスメルタの街へ向かう馬車の中でロゼッタ様が真面目な顔をして私に話しかけてくるのです。何かありましたかね?
「アリーゼ。一つ言っておくぞ」
「何ですかロゼッタ様?」
「あの四聖女リスティ=ローレンには気をつけるのじゃ。あやつはお前が「聖痕」が消え、聖魔法を使えないことを知っているかもしれん……そんな口振りじゃった」
私はその言葉を聞いた時少し動揺してしまいました。どうしてロゼッタ様はそんなことを言ったんでしょうか。リスティ様は聖女なのです……でもロゼッタ様は続けて言うのです。
「だから聖女であるからと言って信用するでないぞ。それに聖女の使命は世界の秩序を守るのものと言っておったが……それだって怪しいものじゃ。ワシはあやつら聖エルンスト……特に四聖女は信用できないと思っておる」
「師匠……」
私は聖女リスティ様にそこまで警戒する必要あるのかと思いました。でもあの時……ソルファス王国で処刑を止めて、アリア様を助けてくれたのは事実なのです。
それにロゼッタ様はあの大聖女ディアナ様の親友のはず……もしかして過去に何かあったのですかね?
「……もしかしたらワシと同じなのかも知れんの……」
「えっ同じなのです?」
「いやこっちの話じゃ。とりあえず警戒はしておくのじゃ」
そういうとロゼッタ様はそれ以上は何も言いませんでした。それからしばらくして私たちはアルスメルタの街に到着しました。
今は何とか騎士団やギルド冒険者、屈強な街の男性たちが魔物の軍勢を食い止めてくれておりまだ被害はそこまで出ていない様子なのです。でもすぐそこまで迫る魔物の恐怖に街の人々は慌てて逃げ惑っています。
「何とか間に合ったのじゃな。さて……どうするのじゃ?聖女リスティ?」
「そうですね……まずは街の住人の不安を取り除きましょう。それが先決ですね。それと、あなた様は魔女なのですよね?少しの間、前線に加勢して魔物をお願いできますか?」
「……分かったのじゃ。フィオナ、アリーゼを頼むのじゃ」
「うん。わかった師匠」
そう言ってロゼッタ様は前線に行く。そしてリスティ様はゆっくり歩きながら人々に近寄りました。人々は突然現れた四聖女の姿を見て驚きつつも助かったという思いが強く感謝の声を上げているみたいです。そして……聖女リスティ様の言葉を聞きました。
「恐れないでください!私は聖エルンストの四聖女リスティ=ローレン!私が皆様を必ず救います!どうか落ち着いてください!」
街の人々はそのリスティ様の言葉を聞いて、希望に満ちた表情になっていくのです。さすがは四聖女様なのですね!
その様子を見て、私は本当に大丈夫なんだと思いホッとした気持ちになったのです。リスティ様はそのまま街を囲うように聖魔法で強力な結界を張る。それはこの前のものとは違う結界なのです。
そして……私は聞こえたのです
リスティ様が小さく……一言だけ呟いたのが……
「さぁ……見せて……
すると……
ドクンッ!!と私の胸が熱くなるのです。熱い……身体中に激痛が走るのです。息ができないのです……目の前が見えなくなって……誰か……助けてください……
「うっ…ぅぅ…」
「アリーゼ様?……アリーゼ様!?」
バタッ! 私が倒れた音と同時にフィオナの声が聞こえたような気がしますが私の意識はそのまま遠退いて行きました。
目を覚ますと見覚えのない天井が見える。あれ?ここはどこでしょう?ベッドで寝てるみたいなのです。辺りを見回すとどうやら個室のようなのです。
一体ここは……確か……そうです。アルスメルタの街に着いてリスティ様が聖魔法の結界魔法を使った時に、突然心臓が激しく痛み出して苦しくて倒れてしまったのです……
まさか……病気になったとかじゃないのです!? 私が慌てるとガチャリという音がして1人の女性が入って来ました。聖女リスティ様なのです
「あら、聖女アリーゼ。目が覚めたんですね」
「あ、はいなのです。すいません迷惑をかけて……」
良かったのです……でも……リスティ様を見た瞬間、身体中を何かが駆け巡るのです。これは……恐怖?リスティ様を恐れている?なぜ?こんなに緊張するのは初めてなのです……
リスティ様は私を見るなり笑顔を浮かべる。でもその瞳はとても冷たく感じるのです。まるでそこに存在しないものを見るように見つめられてるような錯覚に陥りそうになる……まるで……私ではなく……私に何かを見るような……そんな時だったのです
ズキンッ!!!またあの時の発作が起きる。苦しいのです……何だかもう頭がぐちゃぐちゃになって来るのです。そして私は気を失ってしまう。
「やはり……私の考えは当たっていたようですね?あなたには
その声は私の耳には届かなかったのです。