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2. わからない

2. わからない




 ソルファス王国にたどり着き宿屋『月光の止まり木亭』に宿泊した次の日。目的地を王都に決めた私たちはいつも通り各自で資金を集めるために行動をすることにするのです。


 昨日の夜に簡単な計算をしたら王都までの資金を集めるのに1週間ほどかかりそうなので、昨日のうちに宿屋の女将さんにその旨を伝え宿泊日数を伸ばしてもらったのです。


「あっアリーゼ、そこの網をとって」


「わかりましたなのです!」


「そしたら私が取り出した糸をこれに巻いて欲しいんだけど。おねがいできる?」


 私は何をしているかと言うとミルディの魔法錬金のお手伝いをしているのです。ミルディは錬金釜で魔法の糸を作っているのです。これは魔法士のローブなんかの素材に使われるのです!


 しかもミルディが作っているものは普通の糸より魔力の通りが良いらしく、魔法使いには重宝されるらしいのです。普通はそんなに多く作れないようなのですよ? ミルディは凄いのです……でもミルディが自分で言ってるだけなので真偽は分からないのですけどね。まぁ自信があることは良いことなのです!


 そしてロゼッタ様とフィオナはもちろんギルドの依頼を受けているのです。うーん……そう考えると私はいつも何もしてないのです。


 少し情けない気分になるのです……でも今は私にしか出来ないことを頑張らないといけないから気合いを入れるのです!誰よりも速くミルディの錬金した魔法の糸を巻けるようにするのです!


 それからお昼を挟んで夕方までひたすら作業を続けた結果、かなりの数の魔法の糸が完成したのです。完成した魔法の糸は品質が良く出来ており高く売れそうなものばかりだったので良かったのです!


「ふう。とりあえずこんなものでいいよね?」


「お疲れ様なのですミルディ」


「アリーゼありがとうね。そういえばそろそろロゼッタ様とフィオナが帰ってくる頃じゃない?暑さで熱中症とかになってないといいけど……」


「それは大丈夫なのです。2人には行く前にこれを飲んでもらったのです」


 そういうと私は鞄の中から灰色の液体を取り出す。


「うわ……何それ?飲んで大丈夫なの?」


「失礼なのです。大丈夫なのですよ!」


 私がムッとして答えるとごめんと言いながらミルディは苦笑いを浮かべている。まあ気持ちはわかるのです。この飲み物見た目はとても悪いし飲んだあとも味が悪いのです。


「これはアサアの果実の皮をすりつぶして炭を混ぜたお手製耐熱ドリンクなのです。朝起きて作ったのです。本に書いてあったのです!」


「へぇ。そんなので耐熱ドリンク作れるんだ」


「はい。それにポイズンビートルの毒で倒れていたミルディに即席の解毒ドリンクを作ったのは私なのです。忘れたのです?」


「それ言わないで……恥ずかしいから」


 そう言うと顔を赤くしながら俯くミルディ。


 ふふん!あの時のミルディの姿は面白かったのです!今思い出しても笑えるのです! そんな感じで話していたら扉が開きロゼッタ様とフィオナが帰ってきたのです。


 ん?でも何やら様子がおかしいのです。いつもの2人の仲が良い感じには見えないのです。何かあったのです?


 ロゼッタ様はため息をつくとソファーに座って目を瞑り腕を組んでいる。


 一方のフィオナは顔色が良くないように見えます。あれ?もしかして具合が悪いのですか!?︎どうしようなのです……そんな心配をしているとロゼッタ様が口を開く。


「フィオナ。明日からお主は魔物討伐に来なくて良い」


「え………」


「え。どうしたのロゼッタ様?なんかあったの?」


 その場の空気、そしてロゼッタ様の声のトーンから何かあったのは間違いないのです。ミルディが心配そうな顔でロゼッタ様に聞いている。その言葉を受けたフィオナは俯き黙ったままなのです。ロゼッタ様は話を続けていく。


「フィオナ。お主は魔法騎士じゃな?なのに今日のは何なのじゃ?本来前衛であるお主はワシの後ろに隠れ、しかも魔物と戦いもしない。それならまだワシ1人や魔法が使えないアリーゼと魔物討伐したほうがマシじゃ。」


「……すみません」


「あのロゼッタ様。フィオナはまだ魔物と戦ったことないし……そんなに言わなくても……」


「だからなんじゃ?自分の力で認めてもらいたくてアリーゼの弟子になったのじゃろ?」


 厳しいことを言っているけど、ロゼッタ様の言うことは正しい。フィオナの気持ちもわかるのです。でもここで甘やかしてはいけないのです。これからフィオナが強くなるためには。私はフィオナに話す。


「……ロゼッタ様の言う通りなのですよフィオナ。今のあなたからは憲兵に捕まらないように私についてきたようにしか見えないのです。あの時の言葉は嘘なのですか?」


「ちょっとアリーゼまで……」


 すると今までうつむいて黙っていたフィオナが口を開く。それは悲痛の叫びにも聞こえました。


「分からないよ……無能扱いで家族からも追放されて……そんなにも強いアリーゼ様や師匠にはボクの気持ちなんて分からないよ!!」


 その言葉を聞いてロゼッタ様がフィオナの言葉を一蹴する。


「強い?お主本気で言っておるのか?ワシはお主と同じ第1等級魔法しか使えんぞ!言い訳をするでない!お主の魔法能力は今のワシと同じじゃ!お主はただ逃げているだけじゃ!とにかく明日からしばらく宿で大人しくしておれ。わかったな?」


「……っ」


 そう言い残して部屋を出ていくロゼッタ様。私はミルディにフィオナをお願いしてロゼッタ様を慌てて追いかける。


「ロゼッタ様、待ってくださいなのです!」


 私はロゼッタ様を追いかけると階段のところで追いつくことが出来た。


「……なんの用じゃアリーゼ」


 こちらを見ずに返事をするロゼッタ様。怒ってる……です。


「お腹すきました。夕飯付き合ってなのです!」


「……お主のおごりな。それなら行こうかの」


「え。……わかったのです……」


 予想外の出費なのです。本が買えなくなったのです……。こうして私はロゼッタ様を連れて夕飯を食べることにしたのです。


 フィオナは自分の力で認めてもらいたくて旅についてきた。それなら自分で何とかしないといけないのです。まぁミルディなら何とかしてくれると思っているのです。フィオナの事お願いするのです。

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