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30. 魔法船

30. 魔法船




 港町クレスタに来てもう2週間がたつのです。私たちは次の目的地を隣国のソルファス王国に決め、船賃が貯まったので明日船に乗って出発するのです。なぜその国に決めたかというと、ソルファス王国には大きな古代遺跡があるのです。


 世界中でも注目されていて観光目的で各国からも色々な人がやって来てるらしいのです。特にその古代遺跡の中にある「キルシュ古城」は人気のスポットなのです。長々説明したのですが簡単にいうと「観光」なのです。


「はぁ……楽しみなのです!」


「そうだね。古代遺跡かぁ……未知の鉱石とか見つかったりして」


「それもいいのですね!そしたら……アリーゼ鉱石と名付けるのです!」


「何でアリーゼ鉱石なの……?そこはミルディ鉱石じゃないの?あたし鍛冶屋だよ?」


「のんきじゃのお主らは。言っておくが、ソルファス王国は国土の7割以上砂漠地帯の灼熱の国なのじゃ。ワシは暑いのは嫌なのじゃがな……」


 灼熱の国なのですね。ロゼッタ様はずいぶん詳しいのです。もしかしたら行ったことがあるのかも知れないのですね。


「ロゼッタ様、ソルファス王国に行ったことあるのですか?」


「まぁ……大昔にな。まだあの頃はあそこまで砂漠地帯ではなかった、緑豊かないい国じゃった。キルシュ古城の最上階の屋上から見る景色が綺麗でよく告白スポットじゃったの。ワシもよくそこら辺の男たちに告白されたもんじゃ。懐かしいの」


「へぇそうなんだ。というかロゼッタ様、詳しすぎじゃない?住んでた?」


「ふむ。まぁそんなところじゃな」


 そう言えば魔女や賢者は魔力を高める旅に出ると本に書いてあったのです。ロゼッタ様はこの世界を色々旅しているのかも知れませんね。


 そして明日の出発に備えて私たちは早めに寝ることにするのです。いつもお昼寝をしているロゼッタ様が一番最初に寝てしまいましたね。寝る子は育つのです!子供じゃないですけど。


 翌日になり今日は朝早く起きてご飯を食べてから船に乗ることにしたのです。港に着くとたくさんの船が停泊していてとても賑わっているのです。


 この世界では魔道具の発達により船は動力ではなく魔法を使って動くものが多いのです。風の力で進むものや水の力を使うものなどたくさん種類があって楽しいのです!これも本に書いてあったのです。


 私たちが乗る船も「魔法石」と呼ばれる特別な石を燃料にして動いています。これを使えば今のロゼッタ様と同じ第1等級魔法が使える一般的な魔法士でも動かすことが出来るのです。


 まぁ。聖魔法が使えない私とか生活魔法しか使えないミルディは動かせないのですけど。その船を見てミルディが言ったのです。


「これが噂の魔法船かぁ。話には聞いてたけど実際に見ると迫力が違うね……あたしもこれを動かせるくらいの魔道具を造れるようになりたいよ」


「ミルディなら問題ないのです!いつも何でも作ってくれるのです!」


「それにしてもすごい人だよね。こんなにいっぱい乗れるかな?」


「問題なかろう。早く荷物を預けて乗り込むのじゃ」


 そう言ってさっさと船の中に入って行くロゼッタ様に慌ててついて行きます。チケットを見せて船内に入ります。


 するとそこには多くの人がいるのです。どうやらもうすぐ出航するようでみんな忙しく準備をしていました。私たちは邪魔にならないように隅の方に行き待つことにするのです。


 しかし、いつになっても船は出航する気配がないのです。


「おかしいのう……何かトラブルがあったようじゃ。ちょっと見てくるからのう。二人はここで待っておれ」


 そう言い残してロゼッタ様は行ってしまいました。私は心配になって周りを見渡してみると、他の乗客たちも不安げにしていました。しばらくして甲板に船員さんが出てくる。


「お客様方、大変申し訳ありません!現在原因不明のトラブルが発生しておりまして……復旧まで少し時間がかかる見込みとなっております……一度下船していただいてお待ちください。」


 船員さんが謝りながら説明してすぐそのトラブルを解決するため中に戻る。トラブルなら仕方ないのです。すると乗客の皆さんは下船し始めるのです。そして最後に私たちが下船しようとした時ミルディが私を呼ぶ。


「ちょっと待ってアリーゼ!ロゼッタ様がいないんだけど?まだ戻ってこないみたい」


「そう言えば遅いのです。どうしたのでしょう?」


 私が首を傾げた時でした。突然魔法船が動き出す。その勢いで振り落とされそうになるのです!?でもミルディが間一髪私の腕を掴み引っ張り上げてくれたのです。危ないのです。


「大丈夫アリーゼ!?」


「ありがとうなのです。助かったのです」


「なんでいきなり魔法船が動いたのトラブルが解決した?」


 ミルディは混乱しながら船のあちこちを確認しているのです。でも状況的にそのようには見えないのです。本の物語ではこういう時は大体「悪いこと」しか書かれていないのですけどね……

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