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26. 役に立ちたい!

26. 役に立ちたい!





 マールウッド家の事件から更に3日が経ちました。私の体力ももう元通りなのです!宿賃をミルディが造った素材を売ったり、ロゼッタ様がギルドでの依頼をこなしたりして何とか稼いでくれていたのです。凄く感謝なのです!


 あの時、私の身体から光が放たれたのは聖魔法だとロゼッタ様は言うのですけど、あれから何回試しても聖魔法は発動出来ないのです。本当にあの場だけの奇跡だったのですかね……。


 とりあえず次の目的はなんとなく船に乗って他の国に渡りたいのです。あの本の物語のようなドキドキワクワクを感じたい。だから今度は船賃を稼がないとなのです!そんなことを思っているとミルディが私に声をかける。


「アリーゼ。ちょっとあたしの買い物に付き合ってほしいんだけどいいかな?」


「いいですよ。ミルディとの買い物楽しみなのです!」


「あっいや……ちょっと素材屋に行くだけだよ?魔法錬金の素材を買いにね」


 まぁそれでも嬉しいものは嬉しいのです。ロゼッタ様はまだ寝ているので、どうせ起こしてもすぐには起きないので置き手紙をして、私はミルディと一緒に街に出て行く事になりました。


 この街に来てから最初の日以外はあまり外に出ていなかったので、なんだか新鮮な気分なのです。


 そして街の中を歩いていると大きな広場に出たのです。そこには沢山の露店が並んでいたのです。食べ物や雑貨品など色々な物が売られているのです。目的の素材屋さんはその広場の一角にあるみたいなのです。


 そのお店に入ると店内には所狭しと様々な鉱石や宝石などが置いてありました。これ全部買ったらいくらになるんでしょう……。


「えっと……あっ。あった。う~ん……」


「どうしたのですミルディ?」


「いやこの鉱石が欲しかったんだけど……ちょっと買えないなって思って……」


 そう言ってミルディに見せられたのは透明度が高い水晶の様な石なのです。でも透き通っている割には少し光っていて綺麗なのです。その時店主のおじさんが私とミルディに話しかけてくる。


「おう。お嬢ちゃんお目が高いね。その鉱石はなかなか手に入らないんだ。その分、値は張るがな?」


「そうだね。あたしじゃ買えなかった。あははっ」


 ミルディが苦笑いをしながら私にそう言ってくる。店主さんの話だと、何でもこれは珍しい鉱物らしくて、特殊な加工を施す事で魔力を込める事が出来るようになるらしいのです。


「ミルディ。この鉱石ほしいんですよね?」


「いやそうなんだけどさ、そんなに値段するなんて思ってなくて。実はマールウッド家の事件の時、あたしは何も出来なかったからさ……少しでも役に立ちたくて戦えるような魔法アイテムを錬金で造ろうとしたの。でも無理みたい。ゴメンねアリーゼ」


 そんなことないのです!ミルディは純銀を取り出してくれましたし、縄ばしごも作ってくれました。それに倒れた私の看病だってしてくれたじゃないですか!


 ……そう言いたかったけど、今のミルディの顔を見たら言えなかったのです。とても寂しい顔をしていたから。私が倒れてしまった時、自分の無力さを嘆いていたかもしれないのです。でも私はミルディのその気持ちが何より一番嬉しい。


 だからこそ、ミルディは今出来る事をしたいと思っているのです。それならなおさらこの鉱石が必要なのです!私はその鉱石を手にとる。


「おじさん。これくださいなのです」


「えっ!?アリーゼ何言ってるの!こんな高価なもの買えないよ!」


「私もお金を出すのです!私たちは仲間なのです!」


 そう言って私は財布の中身をカウンターの上にじゃらじゃらと出すことにする。……足りないのです。


「ぐすっ……ごめんなのです」


「いいよアリーゼ。ありがとう、もう少しお金をためてからまた買いにくるからさ」


 その時、私たちの後ろからひょこっと現れる小さな手がその鉱石を買える足りない分のお金を足してくれた。


 驚いて見ると、そこにはいつの間に起きたのか寝起きのロゼッタ様がいたのです。


「ロゼッタ様!なんでここにいるんです?」


「なんでとはなんじゃ。手紙を見たに決まっておるだろ。全く……お前らはいつも勝手に行動して困るのじゃ。ほれ、足りない分の代金じゃ」


「でも……それは悪いよロゼッタ様」


「なんの事じゃ?ワシはこの前の魔道具修繕の代金を払っているだけじゃ……」


 ロゼッタ様はそう言う。ああ確かにそんなこともありましたね。でも耳まで赤くして可愛いのです。ロゼッタ様は素直じゃないのです!


 ミルディはカウンターの上に置いたお金を店主に手渡す。それを確認してから、店主は袋に入れた鉱石を渡してくれる。


「あのアリーゼ、ロゼッタ様。本当にありがとう。あたし……2人と仲間になれて良かった」


「大袈裟なのじゃ。だからこの前の代金と言っておるじゃろう」


「そうなのですよ!私も倒れている間の私の宿賃なのです!」


 ミルディは笑顔になってくれたのです。やっぱりミルディは笑っている顔が一番いいのです。


 その後3人で広場にあるベンチに座って休憩する事にしたのです。今日はなんだか充実した1日だったのですごく楽しい気分なのです。


「すごく楽しいのです!やっぱり旅はこうでないとなのです!」


「お金また貯めないとだけどね。でも……そうだよね。うん、あたしも楽しかったよ!」


「ふむ。ワシは疲れたからの。ちょっと宿屋に戻って昼寝をするぞ。」


 3人の目的はバラバラですし、それぞれ思うことはあるけど、今はこうして一緒にいられる時間を大事にしていきたいと思うのです。


「ねぇアリーゼ。あたしこの鉱石で魔法アイテムを作るから。今度何かあっても、一緒に戦えるようにする。だからさ、あたしにも頼ってね?」


「もちろんです。楽しみなのです!」


 私はそう言ってミルディに微笑み返すのでした。

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