19. 港町クレスタ
常闇の森で伝説の魔女ロゼッタ=ロズウェル様を仲間にした私とミルディは当初の計画通り海鮮料理のために北の港町クレスタへ向かうことにするのです。
あの後、結局ロゼッタ様分の馬車代が足りなかったのでギルドでゴブリン退治の依頼を受けることになったのは内緒の話なのです。でもロゼッタ様の魔法で簡単にゴブリン退治が出来たので良かったのです。さすがは魔女様なのですね。
そして私たちは無事に今はクレスタ行きの馬車の中にいます。
「あっ。ロゼッタ様こぼれてるよ?拭いてあげるからじっとして?」
「!?子供扱いするなミルディ!自分で拭けるのじゃ!」
「いや。こぼすのがもう子供だよ?」
ミルディとロゼッタ様はもうあんなに打ち解けてます。凄い仲良しさんです。羨ましいですね。
窓の外から潮風の匂いがしてくる。私は窓の外を見ると視界の先には港町が見える。もうすぐクレスタに着きそうなのですね。港町クレスタは海に突き出た半島にある街で、この街には大きな港があるのです。そして海の幸も豊富なのです。
しばらく馬車を走らせ目的地の港町クレスタに着きました。私たちの目的である海鮮料理屋さんもこの近くにあるそうなので早速向かうことにします。街の大通りに面したところにそのお店がありました。
私はついに念願の海鮮料理が食べれるとワクワクしながらそのお店に入ろうとしたその時、ロゼッタ様が話しかけてくるのです。
「おい。ワシはお腹がすいておらんぞ?まずは観光じゃ!長い間森の中におったのでな!楽しみじゃ!」
「ええ!?私ずっと海鮮を楽しみにしていたのです!言ってたのです!ロゼッタ様聞いてなかったのです!?」
「知らん。さっき馬車でパンを食べてしまったのじゃ。それなら言っておくのじゃ!ワシのせいにするでない!」
「ぐすっ……海鮮食べれないのです……」
そんな私とロゼッタ様のやり取りを呆れながらミルディが見ている。ヒドイのです。やっぱりロゼッタ様は頑固でワガママなのです!
その後私たちは街中を見て回りました。やはり港町だけあって所々に魚類などをたくさん売ったりしているお店もありますね。しばらくすると美味しそうな串焼きを売っている露店が目に止まる。肉汁たっぷりのジューシーなお肉が食欲を刺激する。これは食べるしかないのです!
私が屋台のお兄さんに声をかけようとすると、ロゼッタ様に腕を引っ張られる。
「おいアリーゼ。海鮮はどうしたのじゃ?食べれなくなるぞ?」
「うぅ……お肉……海鮮……」
もうお腹がすいてるのです。我慢できないのです。でもここで食べたらダメな気がするのです。私の本能が警鐘を鳴らしているのです。
そんな私を見て意地悪な顔をしているロゼッタ様。ああ大聖女ディアナ様、私はどうしたら……そんな私の様子を見てミルディが救いの手を差し伸べてくれるのです。
「それならあたしと半分こしよう。そうすれば目的の海鮮も食べれるでしょ?あたし買ってくるから。お兄さん!その串焼き1つください!」
「ミルディ様~……神様~……」
「ちっつまらんのお……」
こらこら。舌打ちしないのです。この人は本当に困った人なのです。ミルディが戻って来るまで少し時間がかかるようなので私は近くのベンチに座って待つことにしたのです。
「ロゼッタ様。どうですか久しぶりの外の世界は?」
「まだそんなに時間たっておらんじゃろうに……まぁ悪くはない」
「もう素直じゃないのです」
そうロゼッタ様は私に返答するが、その顔は微笑んでいるように見えます。ロゼッタ様を常闇の森から連れ出して良かったのです。
しばらくしてミルディが戻ってくる。両手には串焼きを持ってるのです。片方はタレがかかったお肉、もう片方は何だろう?何か白いものがかかっています。あれはエビですかね?いい匂いです。
私は思わず唾を飲み込む。早く食べたいのです。
「美味しそうだから買っちゃった。アリーゼどうする?こっちも半分こにする?」
「するのです!エビも海鮮なのです!」
そうして私たちはそれぞれ半分こをして串焼きを食べることにするのです。私はまずはタレの方を一口かじる。ジュワッとした旨味が広がる。
続いてエビのほうの串焼きを一噛みする。プリッとして噛む度に魚介特有の風味が広がりとても美味しいのです。さらにそこに特製塩ダレの濃厚さが絡み合ってシンプルですけどそれが素材の良さを引き立てており美味しさ倍増なのです。
「美味しいのです。最高なのです!」
「ほんとだね。凄くおいしいよ。」
「……ワシも買うのじゃ!ずるいのじゃ!」
ロゼッタ様は顔を膨らませて串焼きを買いに行く。その後ろ姿は伝説の魔女とは程遠く可愛らしい少女の姿をしていました。その時ミルディが私に言います。
「……たまにはこうして外でご飯もいいかもしれないね?」
「そうなのです!次はどこの街に行って何を食べようかなのです!」
「今食べたばかりで次の食べ物の話なの?アリーゼは」
ミルディが呆れながらも笑顔で答えてくれる。そんな他愛もない会話をしながら、港町クレスタでの一日を終えるのでした。