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5. 魔法鍛冶屋の夢

5. 魔法鍛冶屋の夢




 しばらく森の街道を歩いていくと目的のルベルタにたどり着く。ルベルタは魔法工房が軒を連ねる魔法街で、ミルディの家は魔法鍛冶屋さんと言っていたので、あの煙が出ている赤い屋根のお店ですかね?私はそのままミルディに連れられてそのお店に入ることにする。


 以前読んだ本によると、魔法鍛冶屋さんは剣や槍などの武器、杖など魔法を使うための道具を製造しているお店なのです。


 中に入ると店内には色々な武器や防具が飾られている。どれも迫力があってカッコイイのです。すると奥の部屋へと案内される。そこには机に向かって作業をしている、職人さんがいた。


「ただいま!」


「おう!ミルディか。遅かったな心配したぞ」


「親方。いや実はさ……」


 ミルディは森であった事を親方さんに話している、親方さんってことはミルディのお父様ですよね。私はそれを後ろの方から見ていたのですけど、ふとあることに気づく。


 それは作業場にある剣の柄の部分だけ白い。不思議に思いながら見ているとその視線を感じたのか、1人の青年が私のことを見て驚いた顔をして近寄ってくる。


「あれ?あなたはカトリーナ教会の聖女アリーゼ様!?」


「はい。私をご存じなのですか?」


「以前アリーゼ様には母の病気を治していただいたんですよ。その節は本当にありがとうございました」


 そうだったのですね。定期巡礼の時に救った方でしたか。でも、こうやって感謝されるのは凄く嬉しいのです。それにしてもここに置いてある剣の柄は全部白かったのです。なぜなのでしょう?そんなことを考えていると、 カランコロン とドアに付いてる鈴が鳴る。


 入って来た人は女性。それもすごい美人さんなのです! 腰まで伸びた綺麗な金髪に青い瞳。目鼻立ちが整っていてまるでお人形のようなのです。


「依頼してる騎士団への奉納の剣はいかがですの?」


「型は出来上がっているので、あとは鋼細工の部分だけなんですが……少し時間がかかりそうです」


「納期に間に合うんですの!?困りますわ!」


 親方さんがその女性に現状を説明をしている。私はミルディに尋ねてみる。


「ミルディあの方は?」


「シュルツ公爵令嬢のマリー様よ。騎士団に奉納する剣の依頼をうちの魔法鍛冶屋が受けてるの」


「納期が遅れているのですか?」


「うん。このままならね……どうしても剣の柄に入れる鋼細工がうまくいかないの。堅すぎてうまく描けなかったり、柔らかすぎて思ったように描けなかったりね」


 だから作業場にある剣の柄の部分だけ白いのですね……


 鋼細工ですか……


「とりあえず納期はあと3日後ですわよ!お願いしますわね!」


 そういうとマリー令嬢はお店を出ていきました。長い沈黙……気まずいのです。でもその空気を破ったのはミルディでした。


「はいはい!仕事に戻った戻った!ねぇアリーゼ。せっかくだし倉庫の武器庫を見てみない?」


「武器庫?いいのですか?是非見せてほしいのです!」


「それじゃこっちに来て」


 私はミルディについて行くと工房の奥の倉庫に連れて行ってもらう。そこにはたくさんの種類の武器があるのです。私が使えそうなロッドもあるのですかね?


 ふと倉庫を見渡すとそこには一本の歪な形の武器と呼ぶにはほど遠い1本の剣が立て掛けてある。


「ミルディ。この剣は……?」


「ああ……恥ずかしいんだけどさ、それはあたしが幼い頃に初めて造った剣なんだ」


「初めて造った……」


 私はその剣を見て、まるでミルディの想いが分かるような、何か惹かれるものを感じたのです。


「アリーゼ。あたしね夢があるんだ。この世界のどこかにある『賢者の石』を見つけて、あたしだけの最強の魔法武器を造るの!本当は父さんの夢だったんだけど、母さんが亡くなってからこの魔法鍛冶屋に落ち着いちゃったから」


「素敵です。ミルディなら必ず叶えられます!頑張ってくださいなのです」


「ふふっありがとう。」


 立派な夢なのです。とてもやる気に満ちた素晴らしい笑顔。夢を叶えたいというミルディの気持ちは伝わってくるのです。


 その時、ミルディの肩越しに棚の上に置いてある小さな箱を見つける。その中に入っているのはお守りでしょうか?そのお守りはペンダントになっているようで、チェーンの先には指輪が付いている。私は何故かそれがとても大切な物のように思えたのです。


「あっ。こんなところにあったんだ。これね母さんの形見なんだ。あたしが魔法鍛冶として一人前になったらくれるって約束してくれてたの」


 そう言ってミルディはそのお守りを手に取る。


「だからまずは、『賢者の石』もそうだけど一人前になるためにまずは鋼細工の仕事を成功させないとね!」


 そうミルディは笑顔で私に伝える。大切な夢に向かって輝いているミルディを見て私も嬉しくなったのでした。

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