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3. 聖女。投げる

3. 聖女。投げる




 私はルベルタの街に向かう途中の森の街道で倒れていた鍛冶屋さんの女性を助けたのです。やはり聖女というものは困っている人を救う存在なのです。


「もう大丈夫なのですね。良かったのです」


「あの……ありがとう。あたしはミルディ。この先のルベルタで魔法鍛冶屋をやってるの。あなたは?」


「私はアリーゼなのです。ただの聖女なのです」


「えっ聖女様?」


 ん?明らかにこのミルディは驚いている様子なのですが……なぜでしょう?私はよくわかりませんって表情をしながらキョトンとした雰囲気を出してみる。


 それよりも今は聞きたいことがあるのです。それは『ご飯』の話についてなんです。まず最初にミルディに聞いておく事があるのです。


「あの私はお腹がすいているのです。何か持ってませんか?もう動けないのです」


「ああ……ごめん。あたし食糧は持ってないんだ」


 ガーンッ……なのです。はぁ……なんて無慈悲な……大聖女ディアナ様……私を見捨てるのですか。


 そんな時、私とミルディの頭上の上空に一匹の大きな鳥のモンスターが現れる。


「ありゃスカイバードじゃん。でもかなり上の方に飛んでいるから襲われる心配は無さそうだけど……」


「……スカイバード?ミルディ。あの鳥って食べれるのです?」


「え?うん。普通に狩った、スカイバードは食用として市場でも出回ってるけど……」


 なるほど。それなら我慢の限界なのです。あの鳥をお昼御飯にするのです!ここはミルディにも手伝ってもらいましょう!先ほど助けたので、せめてものお礼も兼ねてもらうべきなのです。


「ミルディ。手伝ってくださいなのです。あのスカイバードを倒すのです」


「いいけど、あたしはこの金槌しか持ってないよ?しかもあんな高いところにいるし」


「えっと……ありました。このくらいの石を集めてください」


「はい?もしかして……投石で落とすつもり!?」


「とどめはその金槌でお願いなのです!」


 ミルディは怪訝そうな顔をしていましたが私がお願いした石を探してくれる。


 集めた石の中から、多分これだろうという大きさのものを手に取る。ふむふむ。悪くないのです。その石を手に持ち、昔読んだ本だと……この角度でこの向きで……力一杯投げるのです!!!


 「行くのです!」


 ザクッ──私の投げた石はスカイバードの右翼に見事命中する。そのまま落下して羽ばたくこともできなくなり地面へと衝突し、そのまま息絶えてしまったのです。


「ふふん。どんなもんなのです!金槌の出番はありませんでしたね!」


「ははっ……」


「さていただくのです!ナイフで捌かないと。あっミルディ手伝ってください。スカイバードの羽根を綺麗に傷つけないようにむしっておいてください。それと嘴は金槌で叩いて綺麗に削り粉末状にしておいてなのです」


「あっうん。わかった」


 私はナイフで綺麗にスカイバードを捌く。ミルディは私に頼まれたように事を進めている。


 そしてその下準備が整ったところで火を起こすことにする。薪を集めてきて枝葉を積み、それに私が拾ってきた木材を組み立てる。あとは火起こしなのです。植物を結んで紐を作り、木をこうしてあの本の通りに。


「うりゃああああぁぁぁぁなのです!」


 摩擦により煙が上がる。そして豪快に火がつく。やはり本の知識は優秀なのです!


 そして串に刺した肉を焼いていく。ジューッジューッといい音と香ばしい匂いが漂ってくる。もうお腹がペコペコなのですよ。そして焼けたことを確認してから食べることにするのです。


 う~ん!美味しいのです。調味料がないのが少し残念なのですが、それは無粋というものでしょう。私が笑顔でお肉を頬張っているとミルディが私に質問をしてくる。


「あのさ。アリーゼって何者?」


「えっ?」


 私は自分の姿を見る。白いローブ、鉄のロッド、あとは……聖女のオーラ(?)どこからどう見ても教会の人間にしか見えないはず……


「ただの聖女なのですよ?もしかして……私、何かおかしいのですか?」


 だからそう答えたのです。だってそれが事実なのですから。普通と違うところがあるのなら改善しないといけないですからね!


「いやいやおかしいでしょ!どう見ても熟練冒険者じゃん。あたしを咄嗟に作った解毒剤で助けてくれたあの方法や、投石技術、この獲物を軽く捌く技術や火起こしもだけど。それにこの羽根や嘴は何に使うのよ!?」


 ミルディの圧がすごいのです……なぜこんな勢いで確認されているのかは意味がわからないのですが、教えてほしいと言うことなら教えてあげるのです!


「以前、本で読んだことを今日初めて実践したのです。成功して良かったのです!あとお願いしたものは換金所に持っていくのです。スカイバードの羽根は染め物に使えるのです、嘴は神経毒に効果があるのですよ?本に書いてあったのです」


「だからそれが熟練冒険者だと言ってんのよ……しかも本の知識って……」


 ミルディは額に手を押さえて何故か困っていますが、とりあえずミルディを助けることができましたし、お腹もいっぱいになって良かったのです!


 やっぱり本の知識は優秀なのですね!

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