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79. 未来

79. 未来




 あの後、私はフレデリカ姫様に全てを打ち明けた。元は男性だったことも、オリビアたちとは魔王討伐のためのパーティーを組んでいたことなど色々。フレデリカ姫様は驚きながらも真摯に話を聞いてくれた。彼女の瞳は、私の言葉を一つ一つ確かめるように、真剣な光を湛えていた。


「うぅん……」


 私は目覚める。すると背中に違和感があった。なんか柔らかくていい匂いがするんだけど……それに温かいし……


「すー」


「えっ!?」


 後ろを振り返るとそこには私の背中に抱きつきながら寝ている裸のフレデリカ姫様がいた。しかも全裸だ!ど、どうしてこんなことに?確か昨日はフレデリカ姫様が私の部屋にやってきて……。


 私が混乱しているとフレデリカ姫様も目を覚ます。


「ふぁ~おはようイデア」


「おはようございます……って違いますよ!なんでここで一緒に寝てるんですか!?」


「なんでって……あなたが色々私に話をしていたんじゃない。それで夜遅くまで話し込んでいたから疲れちゃったわ。だからそのまま一緒に寝ただけよ」


「じゃあなんで裸なの!?」


「私は寝るときは裸なの。悪い?」


「そっそうですか。でもせめて服を着てください。目のやり場に困ります!」


 私は顔を背けながらお願いした。フレデリカ姫様は胸はそんなに大きくないけど、腰はくびれていてお尻も程よくてすごく綺麗だし、顔立ちは可愛い系なのに身体はセクシーなんだよね。そんな人が目の前にいるなんて……恥ずかしくて直視できないよ。


 フレデリカ姫様は裸のままベッドを降りて着替える。そしてフレデリカ姫様からいきなり思い付いたかのように提案される。


「ねぇイデア。着替えたらお父様のところに行くわよ」


「へ?国王様のところに?」


「そうよ。この城から離れて、勇者になって魔王を倒すんだもの。言わないと」


 はぁ!?なんでいきなり急すぎるんだけど!?こうして私とフレデリカ姫様は、王様に会うために王の間へと向かった。




 ◇◇◇




 そして、私たちはこのローゼリア王国の城の最上階にある謁見の間にいた。この謁見の間は天井が高く作られていて、壁には神話に出てくるような神々しい絵が描かれている。その前には赤い絨毯が敷かれており、奥の壁際には2人の近衛兵が槍を持って立っている。さらに部屋の両脇には騎士たちが等間隔で並んでいて、正面の階段の上を見上げると玉座がある。


 その玉座の手前まで進むと、フレデリカ姫様は歩みを止め膝をつく。私もそれに倣って片膝をついた。


「お父様。お話がありますわ」


「どうしたフレデリカ?わざわざここにくるとは珍しいな」


「私は勇者になりますわ」


 えぇーいきなり!?まだ心の準備ができてなかったんだけど!突然の宣言に内心ビクビクしていた。当然なんだけど、王様も周りにいた兵士も驚いている様子だ。


「お前は何を言っている?それは許可できぬぞ!」


「なぜですの?」


「危険だからだ。勇者になるということは命をかけて戦うということだ。そのような危険なことをさせるわけにはいかん!」


「ではこの国にずっといれば安全だと?魔王軍の勢力は日々拡大している、そして勇者ルイスは魔王に敗れた。まさか新たな勇者が出てくるまでこのまま待つつもりですの?」


 フレデリカ姫様が鋭い視線を王様に向ける。その気迫に気圧されたのか、王様もフレデリカ姫様の言葉に言葉を詰まらせる。


 でもフレデリカ姫様の言うことはもっともだ。このまま何もしなければ魔王軍に世界中が滅ぼされてしまうかもしれない。なら一刻も早く新しい勇者が現れた方がいいはず。


 しばらく沈黙が続いたあと、王様が再び口を開く。


「……確かにフレデリカの言う通りだ。だがな、それでも娘を戦いの場に送り出す親はいない」


「私はもう子供ではありませんわ!」


「ああそうだな。だが、それでもワシにとっては大切な一人娘なのだ。勇者になる許可は出来ん!」


「お父様……」


 そんな様子を見て、私は居ても立ってもいられなくなり思わず声を上げる。


「あ、あの!国王様。私がフレデリカ姫様を必ず守ります!だから……認めてあげてください!」


 私はフレデリカ姫様の隣に立ち、そう叫んだ。


「イデア……」


「ただの姫騎士ごときが調子に乗るでない!貴様に何ができるのだ!?」


 怖っ……!? この国の一番偉い国王から怒鳴られたんだけど……でもここは引けない。そんな時、謁見の間の扉が開き誰かがやってくる。


「国王。お言葉ですが、そこの姫騎士イデア=ライオットは、大量発生した魔物の軍勢を前線に出て止めました。そして……現ローゼリア王国最強の騎士は……彼女に他ならない。それは私が証明します」


「それと魔王の軍勢を殲滅できる勇者と同じ能力があるのも彼女です。彼女は幾度となく『ゲート』を壊してきた……。そしてフレデリカ姫様のような優秀な魔法能力を持っている者も今はいない。勇者になれそうな人物は他にはいません」


 そこには副騎士団長のクリスティーナさん、魔導科学研究所の所長のルージュさんが立っていた。まさか直談判してくれるなんて……そして遅れて騎士団団長のレイヴンさんがやってくる。


「この国の未来はフレデリカ姫様とイデアにかかっています。もう迷っている時間はありません。どうかご決断を」


「うむ……」


 しばらく沈黙が流れる。しかし国王様も観念したのか、それとも私とフレデリカ姫様に最後の希望を見いだしたのか、話し始める。


「……そなたたちがそこまで言うのなら何も言えんな。分かった。フレデリカ。お前に勇者になることを託そう」


「お父様……ありがとうございます!」


「ただし、条件がある。絶対に生きて帰ってくること。危なくなったらすぐに戻ってくることだ。いいか?これは絶対守るのだぞ」


「はい!約束致しますわお父様」


「イデア。フレデリカを頼む」


「はい。この『深紅のマント』にかけて、姫騎士として命懸けでフレデリカ姫様をお守りします!」


 こうしてフレデリカ姫様が勇者になるため、魔王を倒すため、世界を救うためにフレデリカ姫様と共に旅に出ることになったのだった。

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