78. 祝福 ~女神リディアside~
ここは、世界の理を管理する場所。そこは、時間の流れも、空間の広がりも、あらゆる法則が曖昧になる、白く静謐な空間だった。
まるで、この世の始まりでもあり、終わりでもあるかのようなそんな場所。その中心に、世界の管理者と呼ばれる一人の女神がいた。名前はリディア。彼女は、この世界のあらゆる出来事を、まるで古い書物を読むように静かに見守っていた。その瞳には、世界の始まりから終わりまで、全てが映し出されているかのように、深く、そして穏やかな光が宿っていた。
「やはり……因果には勝てませんでしたか。」
彼女は、その美しい顔に、ほんの少しだけ悲しそうな表情を浮かべながら、独り言のように呟いた。しかし、その瞳の奥には、悲しみとは裏腹に、穏やかな光が宿っていた。むしろ、喜びすら感じているようだった。
それは、まるで、長年の友人の旅立ちを見送るような、そんな複雑な感情だった。
それは、この『白い闇』が広がる空間に微かだが、確かに眩い彩りの輝きが残っているから。そして、その彩りは、消えゆくどころか、一層強く輝きを増していた。まるで、今まさに、新たな物語が始まったばかりであるかのように……
その輝きは、リディアにとって希望の光であり、未来への灯火だった。
「本当に、あなた達はお似合いですね。最後まで、お互いを信じ合って……」
彼女の目からはとめどなく涙が溢れ出していた。それは、悲しみの涙ではなく、安堵と祝福の涙だった。彼女は、二人の絆の強さに、心を打たれていた。
「あぁ……もっと早く、この気持ちに気付いていれば、こんなことにはならなかったのに……ごめんなさい……ごめんなさい……」
彼女がいくら後悔しても、もう遅い。それでも彼女は、まるで幼い子供のように、何度も何度も謝ることしかできなかった。自分の愚かさを、心の底から悔やみながら。その声は、この静謐な空間に悲しく響き渡った。
「決して交わることのない時間軸。二度と同じ時間軸は訪れない。でも……その時間軸は、決して一つだけではないことも、また事実。だから私は信じています。いつかまた、あなた達に会えることを。それまで、私はここで待っていますよ。」
そう言って、女神リディアは静かに微笑んだ。その微笑みはまるで、全てを受け入れるかのような、そんな優しさに満ちていた。そして、彼女は、その因果を受け入れることにした1人の女性の姿が映る水晶玉を、慈しむように優しく撫でた。その水晶玉はまるで、世界の記憶を閉じ込めたかのように、静かに輝いていた。
「今度こそ、あの『2人』に、本当の幸せが訪れますように……」
彼女は、心からの祈りを込めて、天に向かって手をかざした。すると、まるで彼女の祈りに応えるかのように、空から一筋の光が差し込んだ。それはまるで、二人の未来を祝福するかのように、優しく降り注いだ。
そして、水晶玉には、2人の女性の姿があった。
2人は寄り添い合いながら、互いの手を繋ぎ、幸せそうな笑みを浮かべている。先ほどの光が、2人を優しく照らしていた。きっと、これからもずっと一緒。
たとえ、この先にどんな未来が訪れようとも……
その光景は、リディアにとって、何よりも美しいそんな光景だった。