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65. 魔石

65. 魔石




 ここはローゼリア王城。王族が住まう場所であり、同時に王国最強の騎士団であるローゼリア騎士団の本拠地でもある。荘厳な石造りの建物は、朝日に照らされ、静かにその威容を誇っていた。長い歴史を誇るこの城は、数々の戦いと平和を見守ってきた。


「ふわあああ……」


私がフレデリカ姫様の姫騎士になってから、早2週間が経った。王城での生活は、未だに慣れないことばかりだ。特に城内はまるで迷路のようで、未だに全貌を把握できていない。しかし、自室のふかふかのベッドだけは、私を優しく包み込み、心地よい眠りを与えてくれる。


「まだ寝れるし二度寝でもするか……いやダメだ。明日起きれなくなる。」


私は、誘惑に負けそうになる意識を叱咤し、重い体を起こした。窓の外では、鳥たちのさえずりが聞こえる。着替えを済ませ、騎士団の詰め所へと向かう。今日は休日だが、特に予定もない。せっかくなので、騎士団の面々に顔を出しておこうと思ったのだ。


「あっおはようございます!イデアさん!」


「あらアリッサ。朝から元気ね」


「朝?もうお昼になるよお姉さん?あとさ……寝癖ついてるけど……。だらしないよね本当に」


「え?嘘!?」


「ところで今日はお休みなんですか?」


「ええ。だからたまには騎士団に顔を出そうかなって思って」


「休みなら休んだ方がいいんじゃないの?そんなことするくらいなら男くらい見つけたらお姉さん?」


エレンが、相変わらず可愛げのないことを言う。


「……余計なお世話よ」


私は、エレンの言葉を軽く受け流す。そんな時、アリッサが何か思い出したように言った。


「本当にエレンはイデアさんが好きだね?いつもお姉さんお姉さんってイデアさんのことばかり。この前も『騎士になれたのはお姉さんのおかげだから感謝しないと』って何回も言ってたし」


「はぁ!?そんなんじゃないし!一応お姉さんのおかげでボクたちは騎士になれたから、少しは感謝してるだけだよ!何回も言ってない!」


「ありがとう。でもねガルーダを倒せたのはあなたたちがいたからよ。アリッサは炎の魔法弓でガルーダの隙を作ってくれたし、エレンは道中のマンイーターから私を助けてくれたじゃない?だから誇りなさい。みんなで倒したんだから」


「イデアさん……」


「……確かにボクが助けなきゃお姉さん食べられてたもんね。本当に足を引っ張るんだから。もう少し緊張感を持ってよね」


……やっぱり可愛くないわ。私は心の中で呟いた。そんなやり取りを終え、私はあることを思い出したので、今度は城の東側にある施設へと向かった。


「へー。間近に見ると意外に小さい建物なのね」


私が向かった場所は、『魔導科学研究所』だ。城の中にこんな施設があるとは、今まで知らなかった。中に入ると、白衣を着た研究員たちが忙しそうに動き回っている。見たことのない魔道具や、積み上げられた本や書類が、異様な雰囲気を醸し出していた。


(なんか場違い感がすごいんだけどさ)


そんなことを考えていると、一人の男性に声をかけられた。


「あれ?あなたはイデア=ライオットさんじゃないですか?」


「え?あっあなたは……キールさんでしたっけ?」


「そうです。覚えていてくれたんですね。それよりすごく美人になって驚きましたよ。しかも今はフレデリカ姫様の姫騎士なんですよね。すごいな」


「そんなことないですよ。それより所長さんにお会いしたいんですけど、えっとルージュさん?でしたよね?」


「所長に……ですか。今はものすごく機嫌が悪いと思いますけど、とりあえず案内しますよ」


キールさんは、少し躊躇しながらも、私を案内してくれることになった。いや……機嫌悪いなら遠慮したいんだけどさ。


「所長。今お時間大丈夫でしょうか?」


「大丈夫じゃないに決まってるでしょ!」


「イデアさんが所長にお話があるそうです。じゃあ私は失礼します。どうぞごゆっくり」


キールさんはそう言い残し、足早に立ち去った。


(あの一人にしないで~!ルージュさん怖いんですけど!)


「久しぶりね。コーヒーでいいかしら?」


「あっはい」


「それで話って何かしら?」


私は、ポケットから取り出した石を机の上に置いた。


「実はこれを調べてほしくて……」


「……これをどこで?」


ルージュさんの声が、一段低くなった。彼女の表情は、いつになく険しい。


「騎士団の入団試験で討伐したガルーダから見つけたものです。そのガルーダは好戦的で凶暴化してました。もしかしたらこれが原因かと思って持って帰ってきたんです」


「その推測は正しいわ。これは『魔石』。魔族の力が込められた結晶体のようなものね」


「魔族……ですか」


やはり、そうだったのか。私は、ルージュさんの言葉に、眉をひそめる。


(ということは魔王軍の勢力はどんどん強くなっていて、魔族が動き出していると言うことよね。もし、残りの幹部3人の誰かなら結構厄介かもしれないわね)

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