64. 5年間
私はガルーダから距離を取りながら考える。そもそもガルーダってこんなに凶暴だったかしら?これも魔王の力の影響なのかしら?
「お姉さん!どうするの!?」
やはり……一撃で倒すしか方法はなさそうね。
「アルフレッドとアリッサ、ガルーダの動きを止めて!」
「止めるってあたしの弓じゃ……」
「いやアリッサの嬢ちゃん。ガルーダの弱点は炎だ。炎の魔法弓を放てるか?それならオレがガルーダの動きを何とかできる」
「あっはい。やってみます!」
アリッサはそう言って弓に炎の魔力を込めていく。
「おいイデア。止められてもほんの一瞬だぞ?何とかしろよ!?」
「分かってるわよ」
「準備できました……いきます!炎の魔法弓『ボルカノンショット』!!」
そしてアリッサはガルーダ目掛けて炎の魔法弓を放つ。紅蓮の炎を纏った矢は一直線に飛んで行くが、ガルーダの素早い動きの前では捉えることができない。
「すいません!外しました!」
「いや上出来だぜ!スナイプアロー!」
そして一瞬でアルフレッドの放つナイフがつぶれていない方の目に突き刺さる。これで視界は完全に封じたわ!
「イデア急げ!モタモタしてるとガルーダは空に逃げるぞ!」
「どこに逃げようと私からは逃れられないわよ……『―――我が呼びかけに応え、顕現せよ。光の刃、聖天の輝き』!」
私は剣を構え魔力を解放する。すると剣に聖なる力が宿り輝き出す。
「穿て……『精霊の審判』!」
そのまま光が集まり強力な斬擊となってガルーダに向かっていく。視界を奪われたガルーダはなす術もなくその光速の斬擊で真っ二つになる。そしてその場に倒れこみ大きな音が辺りに響き渡る。
終わったわね。私は剣を鞘に収め、みんなに笑顔を向ける。
「任務完了よ!これで何も文句はないでしょレオニード?」
「ああ。本当にガルーダを討伐するなんて国王や団長も驚くだろうな」
「それじゃボクたちも騎士団に……」
「そうだよエレン!あたしたち騎士になれるんだよ!」
アリッサとエレンは喜んでいる。良かったちゃんと騎士にしてあげられて。
「アルフレッドとオリビアもありがとう。私のワガママに付き合ってもらってさ」
「だからそう言うのいらねぇって。ったく何回言えばいいんだよお前?」
「私たちは親友じゃないですか。いつでも頼ってください!」
本当に2人には感謝しかない。ふと真っ二つになったガルーダを見ると、そこには光る何かが落ちていた。私はそれに近づき拾い上げる。
これは……何かしら?しかもこの大きさ、純度……もしかしたらガルーダの凶暴化の原因だったりして。とりあえず回収しておきましょうか。
こうして私は騎士団の最終試験が終わり、無事にローゼリア騎士団に入団することになった。
ーーーそれから3日後。アリッサとエレンはそのまま騎士として働くことができている。本当に良かった。
私はというと、副団長のクリスティーナさんから直々に姫騎士の任を譲り受けることになった。
どうやら今は騎士団が忙しいらしく、騎士団の通常の任務と姫騎士の兼務が難しいようで、ガルーダ討伐の実績と経験者であることから私に白羽の矢がたったらしい。もちろん国王や団長のレイヴンさんも承認している。まぁ元々やるつもりだったから別に問題はないけどさ。そして今は部屋の前にいる。
「……5年か……。どうしよう緊張してきた。もしかしたらよそよそしくなってたり、私のこと忘れてたりして……」
そんなつまらないことを考えるが、意を決して扉をノックする。すると中から返事がかえってくる。私はゆっくり扉を開けて中にはいる。
「失礼しま……」
すると目の前にいきなり大きな炎の玉が現れて私に襲いかかってくる。また私は水属性魔法を使い咄嵯に防御壁を展開しなんとか防ぐ。
「危なっ!ちょっとなにすんの!?」
そこには薄紅色の美しい長い髪を靡かせ、豪華なドレスを身に纏ったフレデリカ姫様が凛と立っていた。あの時から5年。その姿は美しく可憐で気品が溢れており、大人っぽくなっていた。
「遅すぎですわ。あなた5年と言いましたわよね?3日すぎてますわ!」
「はぁ。それは入団式とか色々準備が……」
私が色々説明していると、突然フレデリカ姫様が私を抱き締めてくる。とてもいい匂いがする。それにとても心地よい温かさが伝わってくる。
「待ってましたわよイデア……」
「はい。約束通り強くなって帰ってきました。これからは私があなたをお守りしますから」
「ええ。そうだわ!イデアこれを。あなたのために新しい物を用意しましたのよ?」
フレデリカ姫様は私に新しい『深紅のマント』を差し出す。これは姫騎士のみが着用を許される。そして姫と共に戦うことを誓う、決して違えることのない信頼の証。
「ねぇイデア?」
「なんですか?」
「お帰りなさい」
「うん。ただいま」
こうして私は5年越しの約束を果たした。それと同時に、この人生で本当に守りたい人に再会することができたのだった。