54.　孤児

「さてと。あなたも仲間がやられて黙っちゃいないわよね？」

『グルルル』

　すると突然、ブラックファングは私に飛びかかってくる。速いけど見えている。私は剣を縦に振り下ろす。しかし素早くかわされてしまい、逆に爪による攻撃を受ける。

「くっ！！！」

　なんとか腕でガードしたが、あまりの威力に吹っ飛ばされてしまう。さらに追い討ちをかけるように、また飛びかかろうとする。

「調子に乗るんじゃ……ないわよ！」

　私は立ち上がり、剣を構えて魔力を流し込む。すると剣がバチバチと音を立てて光り輝く。そして剣を振りかざし、ブラックファングに向かって飛ぶ。

「はぁああああ！！！雷の魔法剣『ライトニングブレード』！！」

　私の放った一撃は見事に命中する。ブラックファングの身体は大きく切り裂かれ、血を吹き出し地面に倒れる。そしてそのまま動かなくなった。

「ふぅ。何とか倒せたわね。それより、あの子たち間に合ったかしらね？」

　レベル80を越えていても、私はレベル175あるからね。というか、なんでこんな強い魔物がいるのよ？これも魔王の影響かしらね……。私はその場に座り込み、大きく息を吐きながら空を見上げる。

「本当に……空は青くて綺麗ね。もしかしたらあの女神もあそこから見てたりしてね」

　なんて柄にもないことを考える。すると遠くからアリッサたちが走って戻ってくるのが見える。どうやら証明部位は届けた無みたい。

「イデアさん！無事ですか！？」

「アリッサ。私は無事よ」

　私は笑顔を浮かべて手を振るとアリッサが泣きそうな顔をしながら、私に抱きついてきた。アリッサは私にしがみついて泣いている。私は優しく頭を撫でてあげる。

「良かった……あたし心配で……」

「心配かけたわね」

「ふん。……ステータスカードは本物だったんだね。」

　するとエレンが近寄ってきて、私の顔をじっと見つめる。私はエレンの頭もポンポンと叩く。

「はぁ！？なに！？」

「いやエレンも心配してくれたのかなって」

「そっそんなんじゃないし！」

　するとエレンは驚いたような表情をして、プイッとそっぽを向いてしまう。あら残念。でも、ちょっとだけ頬っぺたが赤くなってる気がする。こういうところは可愛いわね。

「そう言えば、次の試験内容は何かしら？」

「あのイデアさん。今日の試験は終わりらしいです。明日も同じ時間に集合だって言ってました」

「そう。なら家に帰りましょうかね。2人共送っていくわよ？」

　私がそう言うとアリッサは表情を曇らせる。しかしすぐにエレンが話してくれた。

「……ボクたちに家はないよ。今は宿屋に泊まってる」

「えっ？」

「孤児院にはもう入れない年齢なので……あ。あたしたち実は孤児なんです。言ってませんでしたよね。すいません」

　そう少し寂しそうな顔をして話すアリッサ。おそらく王立学園では学生寮にいたんだろうな……。孤児か……。なんか放っておけない気持ちになるわね。

「謝らないでいいわ。それなら今日は私の家に来ない？こうやって出会えたんだし、何かの縁だと思うの」

「いえ！そんなご迷惑はかけられませんし……」

「ボクは賛成だよ。騎士団に入団するまでは生活資金もギリギリだし、せっかくお姉さんがこう言ってくれてるんだし、ありがたく甘えるべきだと思うけど？ほら不本意だけどお姉さんとは最後まで一緒なんだしさ。ボクたちが泊まってる宿屋はご飯もあまり美味しくないし、ベッドも固いし。ちょうどいいじゃん」

　なんか言い方が気に入らないけど、エレンも私のこと少しは信頼してくれてるのかもね。