45. 完璧
私はリアンさんに城内を色々と教えてもらうことになった。
「まずはどこから案内しましょうか。と言ってもローゼリアの王城よりは小さいですし、ほとんど変わらないので見飽きてますよね」
「いや、実は私、臨時の姫騎士なんです。だからお城とか緊張するんですよ。だからこうして案内してくれると助かります」
「そうだったんですね。でもどうしてわざわざ姫騎士に?」
「私はフレデリカ姫様と同じ王立学園に通っていて、それで姫様に護衛として雇われたんです。まぁその……友達として」
「へぇ……すごいですね。それじゃあ、あのフレデリカ姫様が選ぶ人物ともなれば相当強いんですね……」
まぁレベルが148あるし、王国最強の女騎士のクリスティーナさんと互角(?)の戦いをしたくらいだから、それなりには戦えると思う。しかしそれより気になったことがある。
「リアンさん。『あのフレデリカ姫様が選ぶ』ってどういうことでしょうか?」
「はは。またまたご冗談を。フレデリカ姫様は『爆炎の魔導姫』と呼ばれているほどのすごい魔法能力がある方ではありませんか。できればジギル王子も見初められると良いのですが。バイデル国王もそれを望んでおられる」
あのファイアボールぶちかまし姫様がそんなに優秀だなんて知らなかった……。まぁ確かに言われてみると納得だけどね。
あとそっちのほうはどうなんだろう?フレデリカ姫様の好きな人とかタイプとかそう言う話は今までしたことないしなぁ。
そのあとはカトラス王国の歴史や、この国の王族について、さらには騎士団のことまで詳しく教わりながら、色々なところを周った。一応警戒はしていたけど、おかしなところは特に見つからなかった。
「そろそろ戻りましょうか。楽しかったです。本当にありがとうございました」
「いえいえ。こちらこそ。イデアさんのことが知れて良かったです」
「そ、そうですか?」
「はい。イデアさんはとても真面目な方なんですね。それに優しいし、思いやりもある」
「い、いや……別に普通だと思いますけど……」
「それに……あなたの瞳は綺麗ですね。まるで宝石みたいに輝いている……ずっと見ていたいくらいに」
えぇ……どうしよう……。この人、ナチュラルに口説いてるんじゃ……。
でも、私の心の中には何故かドキドキしている自分がいた。もしかしたらこれが恋というものかもしれない。前世では恋愛なんてしたことがなかったからよく分からないけれど。
中庭に戻ると、フレデリカ姫様は私とリアンさんのことを冷やかすように言ってきた。どうも私たちが仲良く見えたらしい。
そして夜になり、私たちは宿屋に戻る。
「今日はお疲れ様。イデアも楽しめたようで良かったわ」
「どこがですか……フレデリカ姫様のせいで余計に疲れた気がするのですが」
「そう?リアンといい感じに見えたけど?なかなか良い雰囲気だったじゃない?」
「はぁ?あの人、絶対女たらしですって。何が"あなたの瞳は綺麗ですね"だよ。キザすぎでしょ」
そう言いながらも内心では満更でもないと思っている自分がいる。それが何だか悔しい。
「そういうフレデリカ姫様はどうなんですか?」
「別に。ジギル王子はタイプではありませんもの」
「じゃあ好きな人とかいるんですか?」
「え?……そうね……うーん……あなたかしら」
はい?なんて言ったのこのお姫様?
「……私は女だよ?」
「知ってますわよ。あなたが男なら完璧だと思ってますの。どんな時でもあなたなら助けてくれる……そう信じてますから」
そう優しい微笑みをくれるフレデリカ姫様。リアンさんの時とは違うドキドキがしてくる。なんか複雑な気持ちになる。いやいや何考えてるんだ私は。
そして夜も更け、フレデリカ姫様が就寝したあと物音を立てぬようにゆっくり起き上がり準備をする。
「フレデリカ姫様。少し出かけてきますね」
こうして私は、一人、夜の街へと繰り出していく。目的は一つ。このカトラス王国の現状を調べるためだ。魔王軍の幹部がいる可能性がある以上、放っておくわけにもいかないから。