42. 違和感
そして次の日。いよいよカトラス王国の謁見の日を迎える。私は姫騎士という立場なのでフレデリカ姫様と共に同じ馬車で出発する。
「緊張する……」
「なんでイデアが緊張しますの?」
「私はただの王立学園の学生で平民だからですよ!そもそも王族だってフレデリカ姫様くらいしか、まともに話したことないし。」
「大丈夫ですわよ。あなたは私の護衛が仕事なのですから、堂々と構えていればいいのですわ」
そう言いながらウィンクしてくるフレデリカ姫様。なんだかとても嬉しくて、少しだけ不安な気持ちが和らいできた。
「さぁ見えてきましたわよ」
フレデリカ姫様の言葉に外を見ると、そこには立派な城とその周りを囲む城壁が見えてきた。
「あれがカトラス王国の王都ですか?」
「えぇ。ここからだとよく見えるでしょう?この国で一番栄えている街ですわ」
それは一目瞭然だった。街の中央には巨大な噴水があり、そこから放射状に道が伸びており、その先に様々な店が並んでいる。その様子はとても賑やかに見えた。それと同時に何か不思議な感覚を覚える……。
「イデア?どうかしまして?」
「あ。なんでもない」
「では行きましょう」
「はい」
私たちは城門の前で馬を止めると、衛兵が近寄ってくる。
「これはこれはフレデリカ姫殿下。ようこそおいで下さいました。どうぞこちらへ」
「ご苦労さま。通らせてもらうわよ?」
「はっ!」
フレデリカ姫様は衛兵に挨拶をすると、そのまま中へと入っていく。私もそれに続いて中へ入って行くと、そこはまさに別世界。多くの人で賑わい、色んなお店がある。
「すごい……」
「ふふん驚きまして?ここがカトラス王国最大の街ですわ。まぁローゼリアの王都とさほど変わりないと思いますけど。まずは宿へ向かいますわよ」
そう言って手綱を引くと、私たちを乗せた馬車はゆっくりと動き出した。カトラス王国に初めて来たけどこんな活気がある場所だったんだ。
「フレデリカ姫様って結構顔パスみたいな感じですね」
「はい?あのイデア。私を誰だと思ってますの?隣国の姫であり、次期女王ですのよ。」
「あ、そっかごめんごめん」
なんか違和感なんだよね……一応フレデリカ姫様は王族なんだけどさ、やっぱり学園にいるときのほうが長いし、友達感覚なんだよね。
そんな話をしているうちに、大きな宿屋の前に到着していた。フレデリカ姫様はそのまま宿屋の中に入ると、受付へ向かう。
「ごきげんよう。部屋は空いてるかしら?」
「これはこれはフレデリカ姫様。いつもありがとうございます。お部屋の用意は出来ておりますので、すぐに案内致します」
そう言うと、店員は鍵を持ってきて客室まで案内してくれる。そして2階の部屋の前に着くと、フレデリカ姫様が扉を開ける。
「おおー広い!」
「当然ですわ。ここは王家御用達の高級ホテルですもの」
フレデリカ姫様曰く、ここは王族でも特別な人が泊まる場所らしい。確かに広くて綺麗だし、豪華な作りをしている。
「そうだ。イデアこれを身に付けてくださいまし」
そう言って私に渡すのは深紅のマント。これは姫騎士の証のようなもので、これを羽織っていると姫騎士であると証明されるのだ。私はそのマントを身に纏うと、なんだか少しだけ誇らしく思える。
「どう?似合う?」
「ええとても似合っていますわ。これであなたも立派な姫騎士ね」
「そっか……立派に務めを果たさないとね。頑張るよ」
「期待してますわよ」
フレデリカ姫様はそういうと、荷物を置いてベッドに腰掛ける。そして私を見つめると笑顔で話しかけてくる。
「それじゃあ早速、街に繰り出しますわよ!」
「ええ!?」
「なんですの?謁見の予定は明日でしょ?それまで時間もあるのですから、楽しまないと損ですわ!」
「まぁいいけど……」
「なら決まりですわね!」
まさか……観光目的じゃないよね?謁見が目的なんだよね?こうして私たちは街へと繰り出すことになった。