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40. 苦味 ~女神リディアside~

40. 苦味 ~女神リディアside~




 どこまでも続く真っ白な空間。そこはまるで、天国のような場所だった。そんな場所に1人の女神。その女神は純白のドレスを身に纏い、背中からは翼が生えており銀色の長い髪を風に揺らしている。そして彼女は慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら水晶玉を見つめている。


「さぁイデア……あなたは大切な事を忘れているわ。その記憶は戻るのかしら?ここがおそらく、人生で初めての大きなターニングポイントになるわ。前世のあなたは、この時系列でギルド冒険者として何をしたのか。それを思い出せるかしらね?私はただ見守るだけよ」


 そう呟くと紅茶を一口飲む。しかしすぐに表情を曇らせながらティーカップに視線を落とす。


「少し苦味が出てきましたね……また淹れ直さないと……」


 そう言うと立ち上がり、目の前に広がる真っ白な空間を見て溜息をつく。


「この世界は本当に何もない。それこそ感情などと言うものは存在しないつまらない世界。だからこそあなたの黙示録に興味があるんです。いつか私にもこの世界を彩ることができるかしらね……」


 再び椅子に座って足を組み頬杖をつくと、憂いた顔をしながら呟く。


「……あなたはどの選択肢を選んでも因果には逆らえない。せめて後悔だけはしないでください。後悔してその輝きが失われることだけは、あまりに滑稽でつまらないのですから」


 そう言って、苦いと分かっているのに女神リディアはもう一度その苦味が増した紅茶を一口飲んだ。

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