34. 予行練習
とりあえず私はフレデリカ姫様と共に用意された紅茶を楽しむことにした。久しぶりに会ったので話題には事欠かない。
「オリビアは元気かしら?」
「ええ元気よ。でも将来の進路で悩んでるみたい。教会魔法士になるか、それともこの国で宮廷魔法士を目指すか、あとは……賢者になるか……」
「あら、そうなの?イデアはなんかオリビアが賢者になるのは反対みたいなこと言ってた気がしたけど?」
確かに最初は反対した。だってオリビアが賢者になればフラグが立ってしまうから。でも……最近考える。私の人生はそりゃやり直しをしているけど、他人の人生まで強制することはできないんじゃないかなって。オリビアはオリビアの人生を歩めばいいと思うし、私はそれを親友として応援したいし、万が一のフラグは私が自分の意思でへし折れば済む話だしね。
「うーん……まあ色々あってね。今はそんなことないわ」
「ふふふ。あなたも変わったようね。それで?結局どうするつもりなのかしら?」
「まだ決めてなさそうだから、ゆっくり考えなさいって言ってある」
「それがいいと思いますわ。オリビアは優秀ですからどれを選んでも成功するでしょう。ただ、本人が納得しない道を選ぶのは不幸だもの」
フレデリカ姫様は優しい笑顔を浮かべて言った。それからしばらくはお互いの近況報告などをしていた。そして本題にはいる。
「さてイデア。まずあなたには姫騎士が何なのかの説明をするわね」
姫騎士。それは姫を護る騎士であり、姫と肩を並べて戦えるほどの実力を持つ者だけが名乗ることを許される称号である。姫騎士の装備は白銀の鎧に赤いマント。
姫騎士は主に護衛の仕事を請け負い、時には魔物退治や他国との戦争に駆り出されることもあるという。基本的には姫に付き従うお付きの侍女のような形で、影からサポートすることが多いらしい。
「とこんなものかしらね」
「つまり、私はフレデリカ姫様と四六時中一緒にいればいいわけ?」
「そういうことになるわね。でも勘違いして欲しくはないのだけれど、別にいつも一緒じゃなくても構わないわ。あくまで護衛がメインの仕事ですから。でもできる限りは側にいてちょうだい」
「わかった」
なるほどね。ということはカトラス王国の謁見の間は常にフレデリカ姫様と一緒にいることになるんだね。どうしよう怒らせてファイアボールとかぶっぱなされたら……
「イデア聞いてるの?」
「え?ああごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「もうしっかりしてくださいまし。国王に楯突いてまであなたを推薦したんですから」
「えええええ!ちょ、なんで!?」
私がそう言うとフレデリカ姫様は呆れたようにため息をついて話し始める。
「あなた。約束を忘れましたの?私は自分のことは自分で決めて、自由に生きたい。だから私は私のやり方で、私の意思を貫くために強くなりたいと。」
あー。そんなこと言ってたっけ。すっかり忘れてた。
「いやまあ覚えてるけど……」
「ならよろしい。それなら私を助けてくださいな。これは将来への予行練習ですわ」
「はぁ……わかりましたよ」
「ふふふ。ありがとう。期待していますわよイデア」
フレデリカ姫様は満面の笑みで言う。その顔を見ると断れないよね。そしてここまで期待を寄せてくれている。やっぱり私はフレデリカ姫様のためにその期待に応えたいし、頑張りたいのかもしれない。