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22. 実技訓練

22. 実技訓練




 慎重に慎重に。それが今の私の合言葉だ。途中でスライムやゴブリンなどの魔物が何体か現れたけれど、オリビアの光魔法で動きを封じ、フレデリカ姫様が炎で焼き払ってくれた。連携もだいぶ板についてきた気がする。


 そうして、私たちはついに4階層へと足を踏み入れた。ここまで来るのに、本当に時間がかかった。このダンジョン、まるで迷路だ。階段を見つけるだけでも一苦労よね。


「ふぅ……ようやく次の階に行けるね」


「そうですわね。ところでイデア」


「ん?」


「あなたさっきから何をやってますの?」


「え?何って、マッピングだけど?」


 私は手に持った紙とペンを掲げてみせる。このダンジョン、地下5階層の先生の元に辿り着けば終わり、じゃない。無事に地上に戻るまでが実技訓練なのだ。だから、ちゃんと地図を作っておく必要がある。


「マッピング?なんですのそれは?」


「あーっと、簡単に言えば迷わないための案内図みたいなものかな。ほら、地上に戻らないといけないし、このダンジョン、意外に入り組んでいるしさ」


「そうなんですか!?凄いですねイデアさん!そんなことも出来るなんて!」


 オリビアが目をキラキラと輝かせて私を見つめてくる。うっ……そんな尊敬の眼差しで見られると、さすがに照れる。


「ま、まぁこれくらい普通だよ」


「どこが普通なんですの?ステータスカードにはそんなスキルありませんでしたわよ?あなた……ギルド冒険者とかに向いてるんじゃありません?」


 フレデリカ姫様の言葉に、私は全力で首を全力でブンブンと横に振る。


「絶対ならないよ!あり得ない!変なこと言わないでよフレデリカ姫様!」


「そんな必死になって否定しなくてもいいではありませんの……」


 フレデリカ姫様が少し呆れたように呟く。そりゃ必死にもなる。この人生は、それを避けるためにあるのだから。フレデリカ姫様は、ちょいちょいバッドエンドへのフラグを立ててくるから油断できない。前世では、会話すらしたことなかったのに。


 そんなこんなで、私たちは階段を下りる。ここが最下層だ。周りは壁に囲まれていて、その中央に先生らしき人が立っている。


「皆さんお疲れ様です。最下層までよく頑張りましたね。さて、本当の実技訓練はここからです」


「へ?」


「どういう意味ですの?」


「1つ前の階層に戻って『青い宝箱』を探してください。それが今回のダンジョン訓練の内容です」


 なるほど。そもそも、ここまで辿り着けないなら訓練をするには危険という判断なのか。私たちはとりあえず4階層に戻ることにする。それにしても、青い宝箱……ね。今まで歩いてきた道には、それらしきものは見かけなかったけど、どこかにあるのだろうか?


 私はマップを見ながら、来た道を戻っていく。そして、30分ほど歩き回ると、やっとそれらしいものを見つけた。


「あっ、見つけました!」


「あら?本当ですの?」


「はい。これですよね?」


 オリビアはそう言って、瓦礫に隠れていたそれを指差した。確かにそこには、青く輝く宝石のようなものが埋め込まれた小さな箱があった。フレデリカ姫様とオリビアがその宝箱に近づくと、突然何かが襲いかかった。


「!?……動けませんわ!?」


「わっ、私もです!」


「スキル『影縫い』。これでお前たちは身動きが取れなくなった。悪いな、その宝箱はオレのもんだ!」


「そうはいかないわよ!」


 私は間一髪、『影縫い』を避けていたので、そのまま剣を振り抜く。すると、黒いローブを着た男は、手に持っていた短剣で私の剣を受け止めた。


「へぇ、やるじゃねえか?まさかオレの『影縫い』を避けるとはな?」


「そりゃどうも」


 こいつ、忍者やアサシンのスキルを持ってるのか。普通なら、下位互換の盗賊とかのスキルしか持ってないものなのに。かなりの能力があると見て間違いないわね。


「フレデリカ姫様!オリビア!すぐに助けるからもう少しだけ我慢して!」


「ええ!」


「はい!」


 よし!まずはこの男を倒す。そして、2人を助ける!


「私はイデア。あなたは?同じ新入生なら、ローブくらいとりなさいよ」


「ああ?ちっ!めんどくせえな!」


 そう言うと、男はフードを取り顔を露にした。そして、そこには私の知った顔があった。


「へ?」


「オレの名前はアルフレッド。王国最強のアサシンになる男だ!」


 嘘でしょ……こんなところで会うとかありえない。アサシンのアルフレッド。前世で、私とオリビアと同じパーティーとして魔王に挑んだ仲間。なんでこんなところにいるのよ!

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