19. お父様
今日の授業が終わり、学園から帰っている途中、私は1人で王都の街を歩いていた。
「ふぅ……」
なんだかどっと疲れた気がする。今日はいろいろあったなぁ。
まずは、教室でオリビアにステータスカードを見られてからずっと質問攻めだった。なぜ剣術がいきなり上がっているのかとか、魔法剣を見せてほしいだの。そしてお昼休みはフレデリカ姫様がどうしてそんなに強いのか聞いてきたり……。
「剣術レベルは元からMAXで、強いのはレベルが128だからだよ!……とか言えたら楽なのに。」
実際そうなのだ。でも本当のことを言えるわけがない。私が前世から能力を受け継いで、実は人生2度目なんだよね?なんて言ったら、それこそ頭がおかしい子だと噂されてしまう。だから結局、誤魔化すしかない。
そんなことを考えていると武器屋の前にきていた。そういえば、次の実技訓練は武器を用意しないといけないんだっけ。お父様にお願いすれば、剣の一本や二本貸してくれると思うけど、せっかくだから見ていこうかな。この人生では初めての武器屋だし!
そう思いながら、店に入ると店内は広く、様々な種類の武器が置かれていた。
へぇ~いろんな武器があるなぁ。これは……短刀?いやナイフか。こっちは槍、斧もある。それに弓とボウガンみたいなものもある。それにしても、どれも綺麗な細工が施されているな。
前世の時もそうだったけど、こうやって色んな武器を見ているとワクワクしてくる。私は武器が好きだった。小さい頃からいろいろな武器に興味があり、よく木の棒を振り回していたっけ。まぁ女の子には分からないかもしれないけど……今は私も女の子なんだけどね。
「おう嬢ちゃん!何か探し物かい?」
しばらく眺めていると、奥の部屋から大柄のおじさんが出てきた。きっと店主だろう。
「こんにちは。ちょっと見てみようと思って」
「その制服、王立学園の生徒さんか。実技訓練かい?それとも競技大会かい?」
「実技訓練です。あの……他の生徒も買いに来るんですか?」
「ああ。安くていいものがあれば、うちのような庶民向けの店で買っていくよ。貴族様は自分の屋敷に専属の職人がいるらしいがな。それで?どんな武器をお求めだい?」
んーそうだなぁ。やっぱり剣だよね。できれば細身の片手剣が欲しいかも。両手剣も悪くはないけど、重さ的に振り回すのは難しい。そうなると片手剣がベストだと思う。
うーん。だけど私の体格で扱えそうな剣ってあるのだろうか? 身長も平均的だし、筋肉もあんまりついてないから重いものは持てなさそう……。
「えっと……できれば軽いもので、なるべく丈夫なものが良いんですがありますか?長さは1メートルくらいのもので、あとは一撃が威力のあるものより、手数が多く出せるものが理想なんですけど……」
私がそう言うと店主のおじさんは一瞬黙り込む。そして真剣な眼差しでゆっくり口を開く。
「ほう……。なかなか注文が多いな。こりゃ驚いた。初めて武器を選んでいる割に、まるで手練れの冒険者のように自分のことが分かっているようだな。」
そりゃ元冒険者だし、勇者だしね。でも、ちょっとやりすぎたかも……。私が少し戸惑っていると店の入り口が開き誰かが入ってくる。
「邪魔するぞ」
「おう!ジークのダンナ。いらっしゃい」
この声……ジークのダンナ?私は錆びた機械のようにぎこちなく振り向く。するとそこにはお父様が立っていた。よりによってなんでこんなところに来るのよ~!?どどどどうしよう……。