18. どこにフラグがあるのか
実技訓練まであと3日。パーティー登録のため、私は代表として職員室に足を運んでいた。メンバーは、私とオリビア、そしてフレデリカ姫様の3人。
「3人ですか。前衛はイデアでいいのかい?」
「あっ、はい」
私は少し緊張した面持ちで答えた。フレデリカ姫様は攻撃魔法がメインだし、オリビアは回復と補助魔法。必然的に私が前衛を務めるしかない。
「そうか……きっと、騎士のジークも……いや、お父様もお喜びになるだろう」
「あれ、先生。私のお父様をご存じなのですか?」
「ああ、昔、同じ騎士団にいたからね。よく君のお父様と共に、同じ先輩に稽古をつけてもらったものだよ。懐かしいなぁ。あの頃は、まだ若かったなぁ……」
先生は、遠い目をしながら過去を振り返っている。そして、何かを思い出したかのように、苦笑いを浮かべた。
「同じ先輩?」
「そう。あの人は強かった。名前はアベル=グラシアス。今は剣術の道場をやりながら、ギルド冒険者になっているかな」
私は、その名前を聞いて、一瞬目を丸くした。アベル=グラシアス。それは前世で幼少の頃、私に剣術を教えてくれた人の名前だった。その人の勧めで私はギルド冒険者になったのだ。
「ん?どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません」
私は慌てて首を横に振った。もし私が幼少の頃、魔法ではなく剣術を習いたいと言っていたら、必然的に前世と同じ道を歩んでいたことになる。お父様の師がアベル=グラシアスだったなんて……運命とは、本当に不思議なものだ。どこにフラグがあるのか、油断も隙もない。
その後、私は教室に戻り、実技訓練のダンジョン攻略について、オリビアとフレデリカ姫様と話し合うことになった。
「あの、イデアさん。本当に前衛でいいんですか?あまり剣は使いたくないんですよね?それに、その……魔法の方が得意なんじゃ?」
「えっと……そうね。でも、今回は実技訓練だし、前衛がいないと危険だから。この中なら、私が一応剣を扱えるし」
「そうですわね。せっかくだから、ステータスカードを見せ合いませんか?細かいことをお互いに知っておいた方がいいと思いますわ」
フレデリカ姫様が提案した。オリビアも賛成し、二人は机の上にステータスカードを並べた。そういえば、二人の能力についてはよく知らないかもしれない。せっかくだから見せてもらおう。
フレデリカ姫様は『赤』と『白』のカード、オリビアは『白』のカード。やはり、フレデリカ姫様の言う通りだ。私も、自分の『金』のステータスカードを見せた。そして2人のステータスカードを確認する。
【名前】フレデリカ=ローゼリア
【年齢】15
【種族】人間
【性別】女性
【属性】炎、光
【クラス】魔導皇女
【レベル】30
【スキル】『炎属性魔法LV.6』『光属性魔法LV.3』『回復魔法LV.3』『カリスマ』『全知の瞳』『天使の加護』『精霊の祝福』
ふむふむ。フレデリカ姫様は、やはり優秀なんだな。攻撃魔法の他にも、補助系スキルもあるみたいだ。しかも、レベル30になっている。えっと、オリビアは……
【名前】オリビア=リットレット
【年齢】15
【種族】人間
【性別】女性
【属性】光
【クラス】聖職者見習い
【レベル】25
【スキル】『光属性魔法LV.4』『回復魔法LV.5』『結界術』『索敵』『神の祈り』
回復系と補助系が多い。だけど、オリビアも凄いな。
「フレデリカ姫様のステータスカードは凄いですね」
「あら?ありがとう。あなたも、なかなかのものじゃないオリビア」
「いえいえ。まだまだですよ。私なんて……それより、イデアさんのステータスカードはどうなっているんですか?私、気になります!」
「あー、うん。まあ、こんな感じよ」
私は自分のステータスカードを2人に示した。フレデリカ姫様は驚いた顔をし、オリビアは目を輝かせている。
【名前】イデア=ライオット
【年齢】15
【種族】人間
【性別】女性
【属性】水
【クラス】転生勇者
【レベル】128
【スキル】『剣術LV.MAX』『水属性魔法LV.5』『魔法剣LV.3』『全属性耐性』『精霊の加護』『状態異常耐性』『気配察知』『威圧感』『統率力』『カリスマ』
ん?あれ?いつの間にか、レベルが128になっているし、『魔法剣』のスキルも習得している。なんで?使ったこともないのに?
「イデアさん!凄い!もう剣術のレベルが4まで上がってるんですか!?」
「しかも、魔法剣まで使えるようになっているわ……やはりあなたは将来、私の側近になってほしいですわ!有望だもの!」
フレデリカ姫様が、真剣な眼差しで私を見つめた。とりあえず、2人には剣術レベルは4で表示されているらしい。正直、何が表示されているのか分からないから、何も言えない……。唯一分かることは、この人生で習得した水属性魔法と、魔法剣は間違いなく同じ表示ということくらいだ。
「ついこの間、初めて剣を握ったのに……やはり、お父様の騎士の血筋なんですかね?それとも、隠れて特訓してるんですか?」
「えっと……特訓と呼べることは、特にしてないかな。あ、あはは……」
私は、とりあえず笑って誤魔化した。定期的に、ステータスカードを確認するべきだよね……後で、魔法剣の練習をしておこうっと。