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14. 退屈 ~女神リディアside~

14. 退屈 ~女神リディアside~




 真っ白な空間。そこは、どこまでも続く白い世界。まるで時間が止まったかのように、静寂が支配していた。その中心に、1人の少女の姿があった。彼女は天界に住む女神の一柱。名はリディア。その姿は、幼くも神々しい美しさを放っていた。


 女神リディアは退屈していた。それはもう物凄く退屈だった。何億年も生きている彼女にとって、退屈ほどつまらないものはない。毎日同じことを繰り返すだけの日々。変化のない、永遠に続くかのような時間に、彼女は飽き飽きしていた。


 でも最近楽しみが出来た。それは1人の人間の第2の人生を観察すること。その人間とは、イデア。前世で勇者として魔王を討伐しようとした少女だ。


「ふふっ私のプレゼントにやっと気づいてくれましたか。そうですイデア。あなたは前世の能力を受け継いでこの第2の人生を歩んでいます」


 人間とは欲深い生き物。能力が今いる世界の誰よりも高いと分かれば、もう一度『魔王討伐』をするかもしれない。それをイデアはどうするのか観察しているのだ。彼女は、まるで人形劇の観客のように、イデアの行動を興味深く見守っていた。


「今回の人生ではあなたが前世の今の時系列では出会わない人と出会いましたね。将来の婚約者、ローゼリア王国第一皇女フレデリカ=ローゼリア。のちに魔王討伐のため一緒に旅立つパーティーの仲間となる、賢者オリビア。そして勇者の試練を邪魔するマークス=ロックレード。」


 女神リディアはイデアがこれからどのような選択をし、どのように行動していくのかに注目していた。それはとても興味深いからだ。彼女にとって、人間の感情や行動は、永遠の時間を過ごす中で数少ない刺激だった。


「さてさて。どうやらフレデリカに気にいられたみたいですね?2人の出会いはあんなに最悪だったのに。何が起きるかわからない、これだから人間は面白い。そしてオリビアとは友情を深め、マークスにはここで引導を渡した。……これがどうなっていくのか。楽しみね。」


 そう微笑みを浮かべ、また水晶玉を見つめ始めるのだった。水晶玉の中には、イデアの姿が映し出されていた。彼女の表情、言葉、行動。それらすべてが、リディアにとっての娯楽だった。

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