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13. 伝承

13. 伝承




 模擬戦を終えた後、私はずっとクラスメートからの質問攻めにあって大変だった。まぁ……とりあえず誤魔化すのは難しかったので父親から剣術を学んでいたことにした。でもあれはまずかったかも……いずれボロが出るかもしれない。


 そして次の日の昼休み、私はオリビアとともに食堂で昼食を食べていた。食堂は、学生たちのざわめきと美味しそうな料理の匂いで満たされていた。


 あら?今日のサラダ、ローアの葉が入ってるわね。私はオリビアに自分の皿をだす。


「えっとイデアさん?」


「オリビア。ローアの葉、苦手でしょ?食べてあげるわ」


「……あれ?私がローアの葉、苦手って話しましたっけ?」


 はっ!しまった……オリビアがローアの葉が苦手なのは前世の記憶からだ。でもここは適当に……


「いえ。見てればわかるわよ。私とオリビアは親友じゃない?」


「あ。はい。それじゃお願いします。苦くて私食べられなくて……」


「任せなさい」


 私はそう言いながらオリビアのお皿を受け取り、フォークでローアの葉の部分を刺して口に入れる。


「うん、美味しい!」


 私はニッコリ笑って答える。よし!うまくいった!ちょっと最近ボロが出そうだから気を付けないと……。そんな時、私とオリビアのテーブルにフレデリカ姫様がやってくる。


「こんにちは。お食事中ごめんなさい。イデアに話があるんですけど?よろしいかしら?」


「はい?」


「少し付き合ってもらえませんこと?」


 なんでこのお姫様は私に用があるのか……。またなんか嫌味でも言うつもり?はぁ面倒だな。


「ここで話したら?わざわざどこかに行く必要は……」


「そうですの?あなたのステータスカードのことなんですけど?」


 その言葉を聞いて私は勢いよくフレデリカ姫様の顔を見る。その顔は至って冷静だ。


「ふふっ。ここではなんですから、ついてきて下さるかしら?」


「……分かったわ。先に戻っていてオリビア」


 くっ……やっぱりステータスカードを見られてたか。どうする?私がレベル118なんて事がみんなにバラされたら……せっかくここまで築き上げてきたものが全部無くなってしまう。それだけは避けたい!私は席を立ち、そのままフレデリカ姫様に着いていく。


「ここなら大丈夫でしょう。さて。あなたのステータスカードのことなんですけど?」


「何かおかしかった?レベルが高すぎるとか?」


「え?あなたのレベルは18でしたわよね?何もおかしくありませんわよ?」


 へっ?どういうこと?私は自分のステータスカードを確認する。


【名前】イデア=ライオット

【年齢】15

【種族】人間

【性別】女性

【属性】水

【クラス】転生勇者

【レベル】119

【スキル】『剣術LV.MAX』『水属性魔法LV.5』『全属性耐性』『精霊の加護』『状態異常耐性』『気配察知』『威圧感』『統率力』『カリスマ』


 あれレベルが1つ上がってるし。でもやっぱりレベルは119とか言う異常な数字になっているけど……?もしかして前世の時の情報は見えてないのかも?


「私が言っているのは、そのカードの色ですわ。」


「色?」


「私のカードは『赤』と『白』。これは炎と光の属性の加護があるということですわ」


 そう言えば確かにオリビアのステータスカードは『白』だった。


「……っで。あなたのステータスカードを見てごらんなさいな。なぜ水属性の加護の『青』ではなく、『金』なのか。それが問題なのですわ」


 私は言われた通り、自分のステータスカードを再度確認する。確かに金色だよ……しかも凄く輝いているし。そして真面目な顔でフレデリカ姫様は話し出す。


「我が王家に伝わる伝承ならば、『金』のステータスカードを持つ者は精霊の加護を持つ者。すなわち『勇者』であると」

 フラグきたぁ!?『勇者』確定演出はヤバすぎる!どどどどうしたら……。私は、まるで崖っぷちに立たされたかのように、焦りを感じていた。


「あとは昨日の模擬戦。あなたが放った剣術。あれは風の魔力がありましたし、あの威力……初めて剣を振るったにしては異常ですわ」


「……。」


「とは言っても。あなたはどう見ても『勇者』ではないし、スキルに剣術レベルなんて記載はありませんでしたわ」


 ダメだ何も考えられないし、答えることができない……。『勇者』にはなりたくないのに……。


「ねぇイデア。単刀直入に言うわ」


「はい……」


「あなた。私の側近になってくれないかしら?私にはあなたが必要なの」


「はい……えっ?はい?」


 側近って……お姫様の?ええええええ!!私は、まるで予想外の提案に驚きを隠せなかった。だっていきなりファイアーボールをぶちかまして来るくせに今度は私が必要って……


「ステータスカードが『金』である以上、王家の人間としては見過ごすことは出来ませんわ。私にはあなたが必要。だから私の側近になりなさい!」


「いやいや。私にはそんな大それた事は……」


「決めたのです。あなたが断ったとしても私は諦めません。話しはそれだけですわ」


 そう言ってフレデリカ姫様はそのまま行ってしまう。ステータスカードの色なんて初めて知ったわよ……私は、まるで嵐の中に放り出された小舟のように、途方に暮れていた。


 まぁ私には『精霊の加護』があるし、元勇者だし、間違ってはいないんだけど、その道に進めば間違いなく『魔王討伐』をすることになってしまう。


「はぁ……どうしよう……」


 私は深いため息をつき、教室へと戻るのであった。

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