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11. これ落としましたわよ?

11. これ落としましたわよ?




 学年全員合同での初めての授業。もちろん人数的に全員が模擬戦をするわけじゃない。自主的に能力に自信があるものが挙手し、その中から選抜された者が試合を行うらしい。まぁ先生へのアピールもできるから、積極的に参加しようとする人は結構多いみたい。闘技場は、ざわめきと熱気に包まれていた。


「あらご機嫌よう。あなたも参加しますの?水属性の平民さん?」


「フレデリカ姫様?まぁ……そうみたいですね。どこかの公爵家のボンクラ息子が『姫様に楯突くやつは許さない』とか言ってますからね?仕方ないので適当にボコってきますよ。まったく躾くらいしておいてくださいよ?」


 私は横から声をかけてきたフレデリカ姫様に、嫌味ったらしく答える。


「誰のこと?私にはそんな猿みたいに騒ぎ立てる恥ずかしいやつは知りませんけど?それよりずいぶん強気なのね?聞きましたわよ?あなたが負けたらこのクラスはなくなると。本当にいい度胸をしているわね。でも、あまり無理しない方がいいのではなくて?私の軽いファイアボールも防げないのですし、怪我をしてしまっては大変だわ?」


 その猿みたいに騒ぎ立てる恥ずかしいやつが言ってるんだけどね。相変わらずムカつく女だこと。でも、今の私はそんなことで腹を立てたりなんかしない。


「あぁ~!すいません!姫様!つい足が滑ってしまいましたぁ~!キャッ!」


 私はわざと大声で言いながら、姫様に向かって転ぶフリをしながら思いっきり体当たりした。すると姫様の体は勢いよく吹っ飛び、地面に尻餅をつく。


 私はというとそのまま素早く起き上がり、何事もなかったかのようにスタスタと歩いて距離を取った。


「いった~い!うぅ~お尻が痛いですわ~。ちょっとあなた!いきなりなんてことをするのよ!危ないではありませんか!」


「あ~あ~聞こえませ~ん。ごめんなさ~い」


 私は涙目で抗議してくるフレデリカに耳を塞ぎ、両手をブンブン振りながら謝る。


「な!?……ふ、ふん!どうせあなたのことだから何か卑怯な手を考えているのでしょうけど、そうはいかな……」


「あっ!!また足が滑ってしまったわ!!きゃ!!」


「ちょ!?な!?うぷ!?」


 私はまたしてもワザとらしく叫び、今度はさっきよりも激しくフレデリカ姫様にぶつかった。そして再びフレデリカ姫様を弾き飛ばし、今度こそ距離を取ろうとしたが、姫様は私の制服の裾を掴み、一緒に倒れこんでしまう。


「い、いたたた……。まったくなんなのですか一体?私を誰だと思っているのです?姫ですよ?姫!姫に対してこんな仕打ち許されるはずがないではないですか!」


「そこ何をしている!」


 そこに先生がやってくる。また私とフレデリカ姫様は入学式と同じように怒られる。確かに今回は少し楽しくてやりすぎたような気もするけど……


「まったく……本当に迷惑。」


「こっちのセリフですわ。あら?ふむ。あなたの名前イデアって言うんですのね?……これ落としましたわよ?」


 そう言ってフレデリカ姫様は私にステータスカードを渡してきた。そこにはしっかりと私のレベル118の文字が書かれている。ヤバい!!


「あ!ありがとうございます!あはは。」


「え?な、なに?どうかしましたの?」


「いえ別に?なんでもありませんよ?」


 私は慌てて笑顔を作り、カードを受け取り急いで立ち上がった。まずい……バレてないかな?私は内心ドキドキしながら、その場を取り繕った。


「もしマークスに負けてしまったら土下座して懇願すれば助けてあげてもよろしくてよ?まぁせいぜい頑張るといいわ。」


 そう言ってフレデリカ姫様は自分のクラスのほうに歩いていく。なんだったの?なぜ私に絡んできたのかしら。もしかして私気にいられてるとか?そんなことを考えていると模擬戦が始まる。


「ではこれより模擬戦を開始する。ルールは相手に参ったと言わせるか、戦闘不能にさせるかで勝敗を決める。さぁ自信のあるやつは挙手を」


「先生!オレはあの金髪赤リボンの平民の問題児と手合わせしますがよろしいですか?」


「分かった。なら1戦目はマークス=ロックレード対イデア=ライオットだな。イデアそれでいいか?」


「あっはい」


 誰が金髪赤リボンの平民の問題児よ!間違ってないけど。というか先生もそう思ってそう……私だと認識してたし。まぁいいわ。軽くボコしてあげるから。私は、そのまま闘技場の中央へと歩みを進めた。

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