10. スキル発動
私が公爵家のボンクラ息子を追い払うと、なぜかクラスのみんなは不安そうな目をしている。そんな様子に戸惑っているとオリビアが心配そうに言ってくる。
「イデアさん……どうするの!?もしマークス様に負けたらこのクラスなくなっちゃうんだよ!?」
「そうだぞ!」
「今すぐ謝れよ!」
どうするのと言われても、あんなの相手にしてられないから無視するしかないよね。と思ったけど、クラスメートの誰もが私のことを見ている。中にはオリビアのように泣きそうな顔の子までいる始末。教室の空気はまるで重い鉛のように私を押し潰そうとしていた。
……いや待てよ。ここで私の力を示せばクラスのみんなも認めてくれるんじゃないかしら?そしたらこの後の学園生活も楽になる。そして実力が認められた私は卒業後の進路がほぼ王国騎士団で確定。あのマークスをここでのしておけば、フレデリカ姫様の婚約者候補を1人けずることが出来て、まだ見ぬ勇者の邪魔者もいなくなる。
これだわ。これはチャンスね。私は意気揚々と立ち上がりみんなの前で宣言する。
「安心して!私があの公爵家のボンクラ息子を倒すから!余裕よ余裕!私を信じて!」
決まった……これでもう大丈夫。私なら勝てるわ。すると不満はあるのだろうが、私の言葉を聞いて、口々にクラスメートは私を応援する言葉を投げかけてくれた。おそらくだけど私の『統率力』『カリスマ』のスキルが発動しているんだろう。
「まぁ……巻き込まれたのは気に入らないけど、負けたら許さないからな!」
「なんかイデアさんがそう言うならそうなのかも。とにかくイデアさん頑張って!」
「頼むぜ!オレらの未来は君にかかってるんだ!」
よしよし。いい感じじゃない。これでもう大丈夫。私の輝かしい未来の為、ここは勝ってみせましょう!
そして午前の授業を終え、私は自分の席で昼食を食べているとオリビアをはじめとするクラスメートが、あの公爵家のボンクラ息子マークスについて教えてくれる。
「噂によると、マークス様はレベル24らしいです。イデアさんより6つも上ですし、学年の中でもレベル20を越えているものは少ないので、かなり強い方だとは思うんです。しかも剣術が得意」
……私は本当はレベル118だけどね。しかも剣術レベルMAXだし。でもそんなこと知らないクラスメートは、真剣に私の身を案じてくれている。
「あと、魔法は火と風の2属性持ち、でも初級魔法しか使えないって聞いたことがあるよ!」
「でもマークス様は魔法は苦手だって言ってた!」
もしマークスが魔法が得意だとしても、私には『全属性耐性』と『精霊の加護』のスキルがある。初級の魔法くらいじゃ問題にならない。
そのあとも色々教えてくれたけど、結局。私は負ける要素が見つからなかった。まあ、せいぜい頑張りますかね。
午後になり、王立学園の闘技場に向かうことにする。今日の実技の授業内容は1対1での模擬戦らしい。あーだからマークスのやつ、騒いでたのね。どうでもいいけど2度と関わって来ないように軽くボコッておきますか。