6. 最悪の出会い
私はそのまま大きな門を潜り抜け、近くにいた人に話しかけることにした。この学園での生活が、一体どんなものになるのか。期待と不安が入り混じった、複雑な感情を抱えながら。
「すみません。本日からこの学園に入学するのですが」
「ん?新入生か?よし、ついてこい」
そう言われ、私はあとについて中に入った。広いホールを通り抜け、受付と書かれた場所を見つけた。学園の広さにただただ圧倒される。前世ではこんな場所とは全く縁がなかったしね。
「そこに座って待っていろ」
言われた通りに座り、待つこと数分。先ほどの人物が戻ってきた。
「待たせたな。こちらが書類になる。記入したらオレに渡してくれ」
渡された紙を見る。名前と性別を書けば良いみたいね。私は、慣れない手つきでペンを走らせ、必要事項を記入していく。
「名前はイデア。Aクラスのようだから、そのまままっすぐ進んでいけ」
「はい」
そうして指示された通りに進む。すると前方に巨大な扉が見えてきた。ここが会場となる講堂の入り口だろう。私は、深呼吸をして心を落ち着かせた。
「失礼します」
そう言って中に足を踏み入れる。するとそこには大勢の生徒がいた。皆制服を着ており、中には私と同じ新入生もいるようだ。私は空いている席に座る。周りにいるのは全員同年代の子たちばかりだ。これから始まる学園生活に、胸が高鳴る。
私はふと横の女の子を見る。あれ?この子どこかで見たことがあるような……?じっと見つめているとその視線に気付いたのか目が合ってしまった。慌てて逸らす。
「…………」
うーん、やっぱり見覚えがある気がするんだけどなぁ~。どこだったかなぁ~。思い出せない。まぁそのうち思いだすでしょう。それよりも早く始まらないかしら。それからしばらくして、壇上に誰かが現れた。
「皆さんこんにちは。私がこの学園の学園長を務めています。アルフォード=リレイです。まず初めに、今年でこの学園も50周年を迎えることができました。これはひとえに、皆さんが日々努力した結果だと思います。これからもこの学園でたくさんの事を学び、そして多くの経験を積んでください。以上で挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございます」
パチパチと拍手が鳴る。それから学園の説明や注意事項について説明を受ける。特にこれといって気に留めることではないので聞き流しておく。
「最後に1つだけ。この学園に入学したからと言って、必ずしも卒業できるとは限りません。そのことを理解した上で勉学に励むように。それでは解散」
そう締めくくり、説明会は終わった。この後は各クラスで自己紹介をしたり、今後の予定などについて話すらしい。
この王立学園には様々な施設が併設されている。それは授業を行う教室はもちろんのこと、訓練場や図書館などもある。しかし一番大きいのはこの学園の敷地内にある闘技場だ。ここは主に試合を行ったり、イベントごとの際に使われるらしい。
私がそのまま教室に歩き出そうとすると、さっきの女の子に呼び止められる。
「ちょっとあなた。さっきはよくも睨んでくれたわね?なんなの?」
「いや、睨んでないわよ」
「あなた、私が誰か分かっているんでしょうね?私はこのローゼリア王国の第一皇女よ!その私に対して無礼だと思わないの!?」
え?ローゼリア第一皇女……ってフレデリカ姫様!?ああ、だから見たことがあったんだ。一応、前世では国王が魔王を討伐した暁に私の妻にしてくれる予定だった人よね。つまり婚約者。
でもこんな偉そうな人だったっけ?もっとおしとやかなイメージがあったけど……。まぁ15歳なんてこんなものか。と言うよりここでまたフラグが立ちそうなんだけど……何とかしないと。