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4. 今度は魔法を使いたい

4. 今度は魔法を使いたい




 『剣術』というものから無縁の生活を送ることが出来ている私は、確実に前回とは違う人生を歩んでいる。これならきっと幸せな人生を送ることが出来るはずだ。そう信じて疑わなかった。


 そして10年の歳月が流れた。15歳になった私は今日から王立学園に通うことになっている。それは、私が魔法使いとしての道を本格的に歩み始める新たな章の始まりだった。


 制服に身を包む。ブレザーのような服で、スカートは膝下くらいの長さだ。とても動きやすい。髪も後ろで纏めてポニーテールにしている。鏡の前でくるりと回る。なかなか似合っているんじゃないかしら。前世では考えられなかった、可愛らしい制服姿に少しばかりのときめきを覚える。


 朝食を食べるためにリビングに向かう。そこには既に父が座っていた。テーブルの上にはパンやスープが置かれている。私は父と母の対面になるように椅子に腰かける。


「イデア。今日からお前も王立学園の生徒だな。しっかりやるんだぞ?」


「あなたならきっと立派な魔法使いになれるわ」


 2人とも笑顔で私を見つめてくる。本当に私のことを愛してくれている。この両親の子供に生まれてきて幸せ者だと改めて実感した。前世では味わうことのなかった、温かい家族の絆。


 王立学園。そこは15歳から18歳までの生徒が通う学校であり、この国の最高教育機関でもある。ここで優秀な成績を修めれば出世の道が開けてくる。


 大概の者はこの国を守る騎士や宮廷魔法士を目指すため、卒業後は騎士団に入団する者がほとんどだ。しかし中には冒険者や商人といった職に就く者もいる。


 しかし前世の人生では、この歳の頃にはギルドで依頼をこなしていたのに今回は一度も依頼を受けていない。その代わりに独学で魔法の勉強に専念できた。


 だからこの10年間はひたすら魔法の練習をしていた。その結果、私は様々な魔法を習得することができた。私の属性加護は『水』らしく、途中からは水属性魔法に特化して学んできた。今では初級中級魔法は全て使えるようになっている。


 また上級以上の魔法はまだ使えないのが現状であるけど。あとは魔導書を読んで、新たな知識を得たりもしていた。おかげで前世よりも詳しくなっていると思う。


「わかっているわよ。心配しないでお父様」


「ははは。それならば安心だな。将来は我が騎士団に魔法士として入団してほしいものだ」


 騎士団か……ギルド冒険者とはほぼ対軸といってもいい存在。確かに悪くはない。本当は魔物との戦いとは無縁の生活をしたいのが本音なんだけど、父が騎士という職業上どうしても私を騎士団に入れたいようだ。ここは妥協するしかないかもしれない。


 まぁ……せっかく魔法が使えるようになったんだし、騎士団に入ってみるのもいいかも。ギルド冒険者ではないし、直接魔王と戦うことなんてないだろうし。まだ先の話だけどさ。


 そんなことを考えながら食事を済ませ、準備をして家を出る。玄関前には馬車が停まっている。どうやらこれで向かうようだ。


 初めて1人で乗るので少しワクワクしている自分がいた。乗り込むと、すぐにドアが閉まり走り出す。窓から外を見ると、見送りに来てくれた両親が見えた。手を振ると、2人も手を振り返してくれた。


 しばらく馬車を走らせると、目の前には大きな建物があった。これがこの国の最高機関である。前世ではこんなところとは無縁の生活だったからなぁ……正直緊張している。私は大きく深呼吸をして一歩ずつ歩き始める。


 こうして私は、この第2の人生をまったく違う選択肢で歩んでいるのだった。

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