51. 予感
私たち『妖精の隠れ家』は無事に北にあるロデンブルグの魔物討伐依頼を成功させた。崖っぷちだったクラン『妖精の隠れ家』も少しずつギルドから認めらるようになり、王都の街や冒険者ギルドでも声をかけられるようになった。
まぁ相変わらず酒場のほうはまだ閑古鳥が鳴いている状況だけどね。それでも私たちは確実に一歩ずつ前に進んでいると思う。
そして今日はルシルと一緒にギルドの依頼の薬草の採取をして、時間が余ったので一緒にカフェで休むことにした。注文したアイスクリームを目の前にしてルシルは目を輝かせている。
「美味しそう……」
「ルシルはアイスクリームが好きなの?」
「うん。すごく甘くて好き」
ルシルはスプーンを手に持ち一口すくって口に運ぶと、目を大きく見開き幸せそうな表情を浮かべた。その様子に私も自然と笑顔になる。本当に美味しそうに食べるわね……可愛い。一応男の子なんだけど。
「やっぱり美味しい!」
「ふふっ、良かったね」
私はアイスを食べながら、改めて周りを見渡してみた。ここは喫茶店というより、おしゃれなバーに近い雰囲気のお店だ。カウンター席があり、奥にはテーブル席もある。今はお客さんがいないけど、夕方になると仕事帰りの冒険者や街の人がよく飲みに来るらしい。
「ところでルシル。ミルフィとは仲良くなれた?」
「えっ!?」
「ん?一緒に依頼をしてたんじゃないの?」
「仲良くって……その……」
ルシルは顔を真っ赤にして俯いた。どうやらまだそっちのほうはそこまで進展していないみたいね……。
「……別に急ぐ必要はないわよ。ゆっくり二人のペースで進んでいけばいいんだから」
とか無責任なことを言ってみる。正直ミルフィはルシルことどう思っているかわからないし、でも私はパーティーとして、2人が仲良くなることは必要だと思っているから。
「う、うん……ありがとう」
ルシルは恥ずかしそうに微笑み、またアイスを口に運んだ。
「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」
「はい!また一緒に来ましょうねエステルさん!」
ルシルは笑顔でそう私に言う。本当に可愛いな。どこからどうみても女の子だよ……ん?待てよ?ふとあることを思ったので意地悪くルシルに言ってみる。
「あら?デートのお誘いかしら?ルシルったら。ミルフィの次は私なの?」
「ちっ違いますよ!ボクはただ、エステルさんとも仲良くなりたいだけです!」
「ふーん。そうですかぁ~」
私がニヤリと笑うと、ルシルは頬を膨らませて怒ったような顔になった。
「もう!なんなんですか!」
「ごめんごめん。冗談だってば」
「全くもう!」
ルシルはプリプリ怒りながらも可愛い顔をしている。なんか、ついからかいたくなるんだよね……弟ができたみたいで。それから私たちは会計を済まし、『妖精の隠れ家』に戻ることにする。
その道中に人だかりができているのが見える。何かしら?少し気になって近付いてみると、そこには見知った顔があった。あれは確か、この前ロデンブルグで会った……。
「女神様は見ています。我々に祝福を!!」
教会前で祈りを捧げている。そしてその中心にいるのがあの時、ロデンブルグで出会った女性だった。美しい純白の長い髪が風に靡き、透き通った白い肌に大きな青い瞳をしている。
「あら?あなたは確かロデンブルグで……」
「はい。聖女フローラ様」
「えっと……んーと……」
「……エステルです」
「あ!そうエステルさん!お気を悪くされたら申し訳ございません。私。人の名前を覚えるのが苦手でして……。」
聖女フローラは苦笑いをしながら頭を掻く。
「いえ、気にしないでください。」
「この前のロデンブルグの魔物討伐の活躍をお聞きしていますよ!素晴らしいです。エレンさん」
「エステルです……」
「あっ!申し訳ございません」
今の今だよ?4文字と3文字だし、「エ」しかあってないし……どんだけ覚えるの苦手なんだよ!!私は心の中でツッコミを入れた。まぁいいけどさ。
「それで、今日はなぜ街に?」
「今日は巡礼の日なんです。こうして人々の悩み、困りごとを聞いて回るのですよ?」
「そうなんですね。お疲れさまです」
「いいえ、これも私たちの仕事なので」
聖女フローラはニッコリ微笑む。すると、周りにいた人たちが次々と話し始めた。
「フローラ様!どうか我らに加護を!」
「女神様に祈ればどんな願いも叶うんですよね!?」
「オレの子供が病気なんだ。お願いします!助けてください!」
「最近魔物の動きが活発になっている。どうにかならないのか?」
「この国の未来を救ってくれるのはやはり、フローラ様しかいない!」
「女神様!!」
人々は聖女フローラに詰め寄る。すごい人気ね……。こんなに人が集まるなんて。私は驚きながらその様子を見ていた。
「落ち着いてください皆さん。順番にお話を伺いますから。ではまたお会いしましょう。今度はゆっくりお話したいですねエストさん?」
「エステルです。その時はぜひ」
「楽しみにしています。あなたとは何か不思議な縁を感じますから」
そう言って微笑み、聖女フローラはその場の対応をし始める。結局最後まで私の名前は覚えてくれなかったけど、聖女フローラの最後の言葉に私は不思議とそうなるような予感がしたのだった。